/// 10.高額査定いやっほー!

ギルドに戻った二人は、受付のお姉さん、エルフィンさんに連れられて裏の倉庫までやってきた。


「ほ、本当に岩竜の素材を採ってきたんですか?」


エルフィンさんは見た目が幼く見えるが、エルフという種族性をみるかぎり年上のようであった。知らんけど。

詳細鑑定であっても年齢は空欄になっていたので、何らかの阻害するようなスキルや魔道具があるのかもしれない。

なんとか鑑定しようとエルフィンさんを見ていたら、後ろからサフィさんの蹴りが飛んできた。


「まあ、そうですね」


そういうと、僕は【次元収納】から道すがらサフィさんが屠(ほふ)った魔物と共に、岩竜を吐き出した。

そして悲鳴が上がる・・・


「どういうことですか!が、岩竜がががが・・・」

「お、落ち着いてください!」

「あ、失礼しました!というか全然落ち着けません!岩竜がぁ!!!なんで本体が4体も!しかもほとんど傷がない!どうやったんですかわわわわ!」


だめだ。目を回しそうになっている。そんなにすごい事なのだろうかと逆に驚いてしまう。

そしてその声に引き寄せられるように、解体担当であろうガタイの良い男たちがワラワラと集まって、全体をざわつかせていた。


「と、とにかくすぐには査定ができません!依頼主も想定していないことなので、どこまで買い取れるかわかりません!ですがしっかりがっちりすべて当ギルドで買い取らせていただきます!絶対高く買い取って見せます!いいですよね!決定ですよね!カルドニー先輩の言ってたことが理解できました!やります!私に任せてください!」


なんかめっちゃ早口に言ってくるエルフィンさんを見て、僕としては首を何度も縦に揺らすしかなかった。


「おい!こいつなんか面白いな!もっとすごいのいっぱい狩ってきてどんな反応するか見ようぜ!」

「サ、サフィさん・・・」


子供のような笑顔を見せるサフィさんを見て少し呆れる僕だった。


その後カウンターに戻った僕達は、やや正常に戻ったエルフィンさんにギルドカードを更新すると言われ、近くのベンチに腰掛け、時間をつぶしていた。

あの驚きようだとどれだけ高額査定になるかわかんないな。と期待を胸に少し微睡(まどろ)みながらも時間をつぶす。


「おい!また来たのか!どぶさらいの依頼は見つかったか?」

「匂いでわかる、その存在感!クッサー!」


なんだその微妙なボキャブラリーはと思いながら振り返ると、やはり前川と稲賀の元クラスメートコンビであった。


「仲いいね。付き合ってるの?あっ・・・」

「そんな訳ないだろ!」「ま、まあそんなこともある・・・」

「おい直人!何いってんだ!」


思わず口に出てしまった心の声に反応する二人を、ただただ眺めていた。

ってか稲賀はまんざらじゃなさそうだったよ。前川もそんな怒るなよ。

淡々と頭に思い浮かぶつっこみを、どうやらまた口に出してしまうこともなかったようで、前川は目を血走らせてこちらを睨んでいた。


「タケル様!準備ができました!」


そのタイミングでエルフィンさんから声がかかった。

僕はにらみを利かせている二人を無視して、カウンターへ向かうと、前川がいきなり僕の肩目掛けて殴りつけてきた。

そしてその拳を抑えてうずくまるまでがテンプレであった。


(前川・・・おまえ攻撃力の数値、力はCだろ。レベルの割には高いようだけど・・・悪いが俺は防御力も示す体力はAだ・・・辞めといたほうがいいぜ!)


もちろん口には出していない。そうやって脳内で思うくらいはいいよね?過去の恨みがこれでスッキリした気がした。

カウンターへ到着すると、エルフィンさんは心配そうな顔をこちらに向けていた。


「あ、あの・・・大丈夫ですか?まあ、全然大丈夫そうですけどね・・・」

「まあ、まったくといって良いほど無事ですね」

「まあ、そうでしょうね・・・それよりこれが新しいギルドカードとなります。お二方とも今後はAランクとなりますので、どの国でもすべての任務が請け負えます。ギルド長の許可はいただいています」

「な、なるほど・・・」


いきなりのランクアップである。もともとがAランクの依頼だったし、あの驚きようだと素材少し採って逃げても良かった程度の依頼だったのかも、と思っていた。

順当ではあるのだけど、こんなにあっさり認められるものなのかと驚きもあった。


「え、Aランクとか嘘だろ!第一試験とかしてないだろ!俺だって聞いてないぞ!認めねーよ!」


後ろまで来ていた前川が騒ぎ立てた。そしてその矛先はカウンターのエルフィンさんに向かっていった。


「前川さん!所詮訓練所の担当員でしかないあなたにそんな権限はないわ!分をわきまえなさい!そしてタケル様に転生者お得意の土下座でもしてその足りないおでこで床でも掃除してなさい!」

「ぐっ・・・」


どうやら助け舟は不要であったようだ。というかあんなロリフェイスしてるのに怖っ!

僕はそのギャップに恐怖しながら、捨て台詞を残しながら奥へと走って逃げていく前川と、その後を追う稲賀を見送っていた。


「なんだあいつら?」

「あ、サフィさん。昔のクラスメートですよ」

「そうか。今度あったら殺しとくか?」

「い、いいよ別に・・・」


サフィさんの発言にまた少しだけ嬉しくなってしまう僕は、すっかりサフィさんの魅力に取りつかれてるのかな、と思っていた。


「まあ、気を取り直して、報酬についてはとりあえずの一時金として、一千万エルザを、残りは1週間ほど待っていただければありがたいです」


そう言って初めて見る白金貨10枚がトレーに乗せられたので、少しだけ震えながら収納へ納めていった。


「だ、大丈夫です。ありがとうございます。じゃあ何かあったら声かけてください。定期的に依頼は受けさせていただくので・・・ではまた」

「はい。お待ちしております」


とりあえずは今日はこの報酬で何か買おう。そう思ってギルドを出ると、勇者御用達の魔道具店へ急ぐのであった。


「次は何狩るんだ?もっと下層行くか?」

「それもいいけど、僕も何か防具買わないと、普段着しかなくなっちゃったしね」

「ぶふっ!そうだな!いこう!」


どうやらまた何やら思い出してしまった様子のサフィさんの手を引き、魔道具店へ歩き出す。

せめてスライムにも溶かされない魔法耐性とかがある防具が手に入ればいいな・・・もう二度と同じ轍は踏まない!そう決めた僕だった。

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