ありきたりな夕焼け

祈りは

祈りは

かぎりなく無力

力は作用点を持つ

勢いのあるそれは願いだ

力は方向性を持つ

誰かに向けたそれは望みだ

力は生まれる場所を持つ

誰かの匂いがするのは欲だ

祈りではない

祈りは

力を持たない

力を持たない

風に吹かれることもない

一介の埃でありつづける限り

それは

祈りでありつづける

祈りは

常夜灯

闇夜を蹴散らすことはない

常夜灯にできるのは

闇夜を

闇夜の輪郭のまま

ほぐすだけ

音のしない部屋で

目を開ける

米粒ほどの橙に

上気する闇を

見つめている

波を起こさずに

細い息を吐く

いずれ来る

迎えの時まで

祈る