第4話

 俺が家に帰ると、母も父もすでに家にいた。

 何だ。俺だけが外にいたのかよと思った。


 母はすでに警察に連絡をしていたから、警察の人が家に来ていた。

 明日は警察犬が来るらしい。


 俺は嬉しかった。

 テレビドラマで見たみたいに、警察犬が行方不明者を捜索するシーンを思い浮かべて興奮した。


 しかし、妹が見つかって欲しくなかった。

 この楽しいゲームを終わらせたくない。

 俺はもう少し遊びたい。


 雨が降りますように。

 妹の痕跡を洗い流して欲しい。

 俺は心の中で祈った。


 俺が風呂に入ってから布団に入った頃、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。

 俺は歓喜した。希望通り雨が降り始めた。


 両親は号泣していたけど、俺は涙が出なかった。

 心の中で狂喜していたからだ。笑みを押し殺すのが難しいくらいだった。お前は早く寝ろ。明日はちゃんと学校行けよと言われて、俺はすぐ布団に入った。しかし、興奮して、なかなか寝付けなかった。


 退屈な田舎に住んでいたから、事件があって面白がっているだけでなく、俺自身、妹に対する愛情などは欠片もなかった。妹が嫌いだった。


 その後も、妹はずっと見つからなかった。

 本当に帰って来なかった。


 そのうち、テレビニュースでも公開された。


「江田栄子ちゃん。小学校三年生。身長130センチ。体重30キロ。学校からの下校途中、行方が分からなくなっています」


 そのうち、放課後に妹の遺体を探すのが学校で流行り出した。誰が一番最初に見つけるかという話で盛り上がり、男子が何人かでグループになり自転車で村の中を走り回っていた。


 終いにはどぶ板を外したり、マンホールのふたを開けたりするやつも出始めた。まるで、ツチノコを探すように必死になって探し始めた。懸賞金なんか出ないけど、ただの興味本位だと思う。


 もちろん、そんなブームが起きる前に警察や消防団の人たちも探してくれて、それこそ畑も川もどこもかしこも虱潰しにつつきまわっていたと思う。

 しかし、見つからなかった。最後は両親までもが疑われて、警察がうちの敷地や家の中を探し回っていた。


 誰も俺を誘ってくれなかった。

 被害者の親族だから、誘いづらかったのかもしれない。

 学校でも孤立し始めていた。


 俺はこの事件に決着をつけなくてはいけない気がしていた。

 そこで、みんなと全然違う場所に検討を付けた。


 ちょっと離れた山の上にお寺があったのだけど、そこを探してみようと思ったのだ。なぜそう思ったかはわからない。ただ、直感でそう感じたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る