前兆

鈴虫が

そのほそい触覚に秋を触れたとき

彼は知るだろう


野に風が荒れ

北極のように星のけむる日

彼は発つだろう


双片ふたひらうたを落して


いつか

細い人間の背に夜が迫り

たそがれが手を黒く照し出す日

人は去るであろう


そして

その少しまえ


我々もまた知るだろう

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