Wonder Rand Queen

藍瀬なゆる

序章 WondeRland編

一章 不思議の国の案内人

一章 不思議の国の案内人

 フィアール大陸の西部に位置するアルディア王国。海に面した広大な国土は様々な気候を有し、各地での収穫祭や、土地ごとに特徴となる文化・産業が発展している。

 そして、毎年、夏の始まりを感じられるこの時期には、アルディア王国の王都にて行われる灯篭祭りがある。


 

 アルディア王国の王城リステルの中にある執務室にて。第一王女アリシアは呟く。


「人の手を借りたいくらいの忙しさね」


 アリシアは自身の仕事机の上に山のように置かれている今週中に目を通さなければならない書類や報告書に目を向けて、ため息をつく。

 時折、開いた窓から入ってくる初夏の風で、白色のカーテンが揺れるのと一緒にアリシアの腰まである金色の髪もさらさらと揺れる。

 

「飼い猫のルタが居なくなってから、もう1ヶ月経つのね」


 アリシアが飼っていた猫のルタは、一昨年、のアリシアが17を迎える誕生日の日に、父親であり、現国王のオーランドから貰った白猫である。

 1ヶ月前に唐突にルタが姿をくらましてから、私は懸命にルタのことを探したのだが、心当たりの場所を当たっても見つけることは出来なかった。


「ほんと、何処に行ったのかしら……」



 7月19日。今日は灯篭祭りの当日。

 王都はいつにも増して人で溢れ、賑やかな声や音で溢れていた。

 灯篭祭りは、他国でも知られている祭りである為、他国からの観光客も今日は一段と多く見られる。


「良い天気ね、晴れてよかったわ」


 アリシアは青く澄み渡る青白い空を見上げてそう声にすれば、お忍びでの王都の祭りを一緒に護衛として付き添い、回ってくれるであろうアランが口を開く。


「ですね。それにしても殿下の今日の服、とても似合っています。何かいつもと違って新鮮で良いです」


 アリシアの今日の服装は白色のワンピースに、麦わら帽子といった夏らしい服装である。

 いつもはドレスを着込んでいる為、私服を着るのは久しぶりだ。

 しかし、今日はお忍びということもあり、アランには王都で普段使っている偽名で呼ぶようにと伝えていたのだが、普段の慣れからか早々に殿下と呼んでいたことに対してアリシアは指摘する。


「そうなのね、ありがとう。けど、アラン、今日はお忍びで王都に来ているのだから、私のことはさっきも伝えた通り、今日はアーリーと呼んでちょうだい」 

「あ、すいません。そうでしたね。わかりました」


 アランは名前のことをアリシアに指摘され、謝罪し、アリシアを見て頷く。  

 そんなアランも今日は、騎士の証である制服を着ていない為、新鮮だなとアリシアは心の中て密かに思っていた。

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