1―38 ただならぬ気配
街並みへ夕闇が広がりつつある午後5時。
果たして、霊感探偵は電話に出なかった。
――郁野という子供がお前に会いに来た。明日も来る。
――秋江さんが棚のお菓子を買い足したから、出してもよし。
送信相手である
対して、この事務所のIT担当である
今日も計画通りタスクを終えた。事務所の戸締まりは
自身の名札を裏返そうと手をのばした時、ふと記憶が呼び起こされた。
手の行き先を顎に変更し、しばし白面を見詰める。
名札は1人1枚ずつ、所長と従業員4名分の計5枚あるが、色は白と赤の2種類ある。札には両面に従業員の名字が書いてあり、表裏で色が異なっているのだ。色の使い分けは、白が在室、赤が不在である。
すなわち、
しかし
当てずっぽうで2分の1を引き当てた――いいや、違う、正確に推理したのだ。
彼女にとってのヒントは、
名札も
そんな洞察を、あの一瞬でやってのけたのか。
そして、危惧する。
もしも、頭の切れる少女が
万が一、無邪気に霊感の正体を探ろうとしたら――?
このありふれた茜色も、時間が経てば黒に染まる。
光が浸食を拒もうと、闇の勢いを止められはしないのだ。
警戒が必要かも知れない。
ただならぬ気配が、探偵の秘部へと忍び寄っていた。
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