9・マネー
今度の自由研究旅行に限らず、4人のすることについて、キカイがどの程度安全を確認・確保しているのか、つまり見守っているのか、は、はっきり、といえる程度にはわかっている。
誰かが転倒して大怪我をしたり、とか、派手な喧嘩をして殺し合ったり、とか(たぶんそれはない)、緊急連絡をつければキカイは数分もかからず現場にかけつけてくるはずである
コハルはドクターヘリのようなものがマチの頭上を飛んでいるのをなんとか見た。
ネット上の地図で見ると、ヘリが行ったり来たりする方向の、どちらにもかなり大きな病院があった。
病院にちゃんとヒトがいるのか、そしてキカイがヒトを搬送しているのか、それはわからなかった。
けれどああいうものは定期的に整備したり試運転してないといけないからなんだろうなとコハルは思った。
前にナツミは、公園にいたずらでSOSって書いてみようぜ、と言ったこともあった。
近くの公園の、倉庫的な建物の隅に積み上げてあった軽めの、ベニヤ板的な廃材を使ったんだけど、「SO」まで書いた段階で、ドクターヘリは気がついたらしく、コハルたちのいたかなり下のほうまで高度を下げてきたので、ナツミはあわてて消したこともあったのだった。
そこから推定するに、4人がどこにいて、どんな目に会っても、命に危険があるという判断が出れば、数分でキカイがやってくることは間違いないことである。
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コハルたちの携帯端末の中にある電子マネーの残高の数字は19999。
ポイントか円だかあいまいだけれども、朝起きてみると前日にいくら使ってもその数字に戻っている。
つまりそのポイントで、1日に買えるものは決まっている。
だけどたとえば自転車のように、その額を越えるようななにかを買うことも、毎日1万ポイントみたいな感じで、2〜3週間くらいの分割支払い指定で手に入れることもできる
レンタルで毎月いくらというサブスク形式の自転車もあるんだけれど、そういう未練が残らない形でのレンタルは好きではないというのがみんなの意見だった。
多分あきらはとても毎日大量のポイントを使ってその自転車を買ったにちがいない。
それに専用のシェードも、1日のポイント額では買えるか買えないかぐらいの値段のような気がする。
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コハルたちが昼食後、広いほうの公園にふたたび集まったときは午後で、とても暑かったけれども、ナツミによればそれでもいちばん暑い時間じゃないと言う。
アキラは今ごろから出発しないと、日が沈むまでには先生なところにたどり着けないかもしれない、と言う。
コハルは特に意見は持たなかったけれども、後部座席のチャイルドシートの上に、工夫して置いたアイスボックスの中身をみんなに見せた。
飲み物とタオル、それにネッククーラーはかちかちに冷えていた。
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