6・ハタ
4人で野球をやるときはだいたいナツミがピッチャーかキャッチャー、コハルがキャッチャーかピッチャーで、ほかの2人は外野か内野だった。
バッターは3人が交代でやって、一塁ベースも形だけは置いてあるんだけど、そこまで走っていくことはめったにない。
要するに投げられた球を打ち返せればいいのである。
しばらく遊んでいるとヒト型のキカイが複数、ゆっくりとゾンビのように何体かやってきて、遠くの方まで飛んでいったボールを回収してきてくれるし、そして公園はとても広いので、バットを思いっきり振れる。
だいたい遊びは午前中で終わって、それからは各人が自分の家でお昼を食べたあと、だれかの家に集まって夏休みの宿題をせっせと片付けるのがいつもの日課だった。
だけどその日は自由研究の日と決めてあったし、うまいこと天気はぴかぴかの夏空で、すみのほうには入道雲がちらほらと、ところどころで大きくなっているけども、旅立ちにはちょうどいいような日だった。
気象予報はもう何日も、大気の状態が不安定とは言っていて、それが確かなことは、豪雨レーダーの画像を見ると、ところどころ、コハルが名前と場所だけは知っている、たぶん自動車だったら行けそうなところに赤いかたまり、つまりゲリラ豪雨が生まれて、流れていることでわかる。
*
コハルは家に帰ると家事用キカイが用意してくれていたお昼ご飯を食べた。
家庭用キカイはヒトに近い形をしていてヒトのオヤができるようなことはだいたいできることになっている。
コハルはこの最近は、きのうの夕飯の残り物か、そうめんか、パスタを食べることにしていた。
食後はダイニングリビングのソファーの上でに横になって、携帯端末でしか通知をし合ったことがないフレンドと近況をについて話し合い、気がついたらうとうとと寝てしまった。
それでも集合予定の時間より少し早めで、急いで旅行の前に用意しておいた旗印と、長距離の自転車旅行に欠かせなさそうなものを確認して、自転車に立て、載せた。
コハルがみんなと相談して作った旗印は、縦50cm横30cmほどの大きさの布でできていて、上のところが横棒で止まるような、ありふれたものだった。
それはうまいこと、コハルの自転車のチャイルドシートの後ろにかけられるようになっていた。
旗に描かれた色はひし形というか正方形の直角部分を上下左右にした四角。
◇←こんな感じ。
その四角の中は「田」の字型の(ななめ)縦横4等分に分割されて色がつけられている。
上が白、下が黒、向かって右が黄色、左が緑というひし形の下にひらがなで「へ」と書いてある。
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