第21話 魔獣使い




「ガウ!」


【マナロックヴォルフを仲間に加えました】


 調教完了の表示がされたのを確認して、俺は一息つく。腕の中で、泉の水をピチャピチャ叩いて遊んでいるヴォル……


「遊び盛りだな、お前」


「ガウ!」


「はは、確かにこんなに綺麗な泉は珍しいか」


『ヴォルちゃんの言っている事がわかるんですか?』


 確かに「ガウ」としか言ってないのにヴォルの伝えたい事がわかる。これも調教スキルによるものなのかな。それかヴォルを仲間にした時に獲得した【魔獣使い】っていう称号のおかげか……


「なんとなくだけど、意思みたいなのが伝わってくるよ」


『凄いですね。何はともあれ、ヴォルちゃんが仲間に加わってくれて良かったです』


「だな」


 フェアリーたちが心配そうに周りを飛んでいるので、もう大丈夫だと言う事をアピールするために泉から出る。


 スイが近づいてきたので、ヴォルの事を伝え、他のフェアリーにも説明してもらうよう頼んだ。女王様なのにこきつかってごめんな。


「フィ!」


 スイは小さな指でOKマークを作ると、説明のため、フェアリーを集めてくれる。フェアリーが集まっている景色は、昼間に煌めく星々が地上に降りてきたようだった。


「スクショってどうやるんだっけ」


『設定から撮影ですね。撮影しておいたので後で送ります』


「ありがと」


 説明が終わったのか、フェアリーたちが各々散らばり始める。スイがヴォルの頭に座ると、鼻をぐりぐりと撫でているが、ヴォルも嬉しそうだ。


「スイ、ありがとうな。今度何かお土産を持ってくるよ」


「フィ!」


「じゃあ師匠のところに戻ろうか。ヴォル、歩けるか?」


「ガウ!」


 ヴォルはもちろんと言うように俺の腕から飛び出し、ピョンピョンと跳ね回る。

 灰色の体毛にピコピコ動く耳。まだ産まれたばかりの子犬なのか。いや体内のマナによって体の大きさは自由自在なんだっけ。


「いくぞ、ヴォル!」


「ガウ!」


 妖精の園から出ると、すぐに師匠と合流できた。全ての罠を回収し切ったのか、木に寄りかかって俺を待っていた。


 手にはナイフを持っており、足元には解体したモンスターの肉や皮などか入った袋が置かれている。


「遅いぞ」


「すいません、えっとマナロックヴォルフをテイムしてました」


「……そうか、名前は?」


「ヴォルです」


「ガウ!」


「ヴォル、ドーンはまだまだ未熟だが支えてやってくれ」


「ガウ!」


 師匠はヴォルの頭を撫でながらそう言ってくれた。


「罠には全てウィップパンサーがかかっていた。成功と言って良いだろうな」


「ありがとうございます」


「ウィップパンサーから取れた諸々はおぬしにやる。今日は以上だ」


 そう言って師匠は小屋へと戻っていった。ウィップパンサーの素材で何か作れるかもしれないし、俺もセーフゾーンに戻ろうか。


「家、と言うかボロボロの小屋に住んでるんだけど、そこに帰ろう」


「ガウ!」


 ヴォルと並びながら森を歩き、セーフゾーンに移動する。これを機にヴォルにもセーフゾーンの場所を覚えてもらいたい。


『ウィップパンサーの素材、色々使い道があると良いですね』


「だね。あ、今何時?」


『もう5時になります。そろそろ部室に戻りましょう』


「うん。セーフゾーンで寝て、今日は終わりかな」


 ウィップパンサーの素材を確認するのはまた明日にして、ヴォルも加わったし、あのオンボロ小屋もリフォームさせたい。


 師匠との修行と並行して色々とやりたい事も増えてきたな〜。


…………

………

……


「いや……」


 ログアウトするとキラさんはすでにバーチャル部室に戻っていた。クマちゃん先生と今日投稿した動画を確認してるみたいだ。


「「戻りました」」


「おー、おかえり! さて、今日はどんなやらかしをしてくれたんだ?」


 《やらかし》て、そんな心当たりないけど、ホタルがリスト化してくれてるらしいし、任せよう。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る