第22話 年齢詐欺

 立って話すのも疲れたのでと、私は土魔法で机と長椅子を出し、グランたちの分もお茶を入れる。一応、客人?にもいるか聞くと、男性陣は欲しいってことなので私特性ハーブティーを振舞った。


「うめぇな」

「それはどうも。まぁ、お互いそんな時間もないですし、サクサク話し進めましょうか」

「そうよ。普通、こんな峡谷で休憩取ろうって方がどうかしてるんだから」


 お茶でもと言ったときに一番猛反対をしたアリアさんは、狐のお耳を立てて周囲を警戒しながらも、結界を張ったことで、少しならと譲歩して席についた。どの道、ほぼ2桁まで切ってるHP/MPじゃ全員回復が必要は必要だ。


「生きてるジャイアントキルには止めを刺したが、他の魔物が戻ってくるのもそう間をおかぬだろうからな」

「ですね。それでも、恩人の申し出をむげにはできませんし。リーダーの決定ですから」


 他のメンバーも不承不承そうではあっても、一応納得してお茶に付き合ってくれるあたり、害はなさそうだ。そこで、改めてディオルグさんに向き直る私に、先に切り出したのは向こうだった。


「一応、これだけは確認させといてくれ。犯罪者じゃねぇよな」

「私とウォルフは。グランは、それなりに年食ってますから、人生色々ヤンチャやって来ててもおかしくない茨の道を歩いてきた男ですからね」

「・・・あ~。誘拐されてるとかねぇよな?」

「私かウォルフがってことですか?違いますね。だから、犯罪目的でルアーク入ろうって訳でもないですよ。此処に来た目的は、お買い物ですから」

「お買い物」

「そうですね。獣人がいますから、隣のお国じゃ過ごし難くて。旅の途中で必要なものを買いそろえようと思って。何で国境を通関しなかったのかは聞かないでください」


 私は機先を制し、質問されそうなことを先に断った。


「そっちの彼は、獣人か?」


 フード越しにも分かる膨らみに、隠し立てしても仕方がないと首を小さく縦に振る。


「子供だけの旅は難しいので、護衛兼保護者です」

「だがよ、態々危険を冒すには、峡谷を通るのは死にに来るようなもんだぞ」

「峡谷を通ることは、そう危険ではないと判断したから此処に居るんです。このことに関しても、これ以上の問答は無しとしましょう。無意味です」

「そんな言い方ないんじゃない?こっちはアンタたちを心配して」

「アリアさん。貴女方は、その力の一端を目撃している。心配無用なことを心配してもらっても、時間の無駄です。そして今、無駄に時間を潰していい場所じゃないんですよ、ここは」

「そりゃ」

「アリア、嬢ちゃんの言う通りだ。で?何が聞きたい?」

「ルアークは、密入国したらどうなります?」

「クリス、何か知ってるか?」


 法律系の情報を知ってそうなインテリ担当クリスさんは、話を振らると少し考え答えてくれた。


「いえ。密入国者に何か罰則を与えるって規則はないですよ。国境の関所を強行突破するんじゃなければ。それをした場合、両国の国境警備隊が黙ってませんから。でも、それ以外ってなるとヴァルタに来るには峡谷を通るか、山脈を超えるかのルートしかなくなります。そんな高レベルの力を持った亜人は極めて少ないですし、冒険者パーティーでもS級以上ないと何泊も山脈内で過ごすのは無理ですから取締条項にはなかったかと。でも確か、聞いた話で過去に一度だけ生きて辿り着いた亜人がいたとありましたが、それだけの力があってのルアーク入りですからね。処刑されたとかはなかったはずです」

「じゃぁ、このままルアークに入れそうか」


 私の呟きに、クリスは待ったをかける。


「ですが、犯罪チェックを受けずに門を通るつもりなんですよね?」


 チラリとグランを見て、そう当たりをつけるクリスさんは、やっぱ鋭い。少し返事を考えつつも、ここで隠し立てしても仕方がないと小さく肩を竦めて返す。


「その場合、入門税も高くなりますし、滞在制限が短いですよ」

「滞在制限?」


 それは初耳でグランを見ると、グランも知らなかったらしい。


「ルアークでは身分証を持たずに犯罪者確認も受けない外部の人間は、3日しか滞在期間が認められてません」

「ルアークにってことですよね?ヴァルタにって意味じゃなく」

「そうですね」

「ふーん」

「どうする、カエデ?」

「ん~。3日あれば欲しいもの買えるし、いんじゃない?」

「お前さんたち、冒険者に登録する気はないのか?未登録なら、門を通った後にギルド登録して滞在制限をなくすって方法もとれるぜ」

「冒険者登録。異世界トリップあるあるですよねぇ」

「イセかい・・・何だって?」

「あ、何でもないです。気にしないでください。それも考えておきますよ」


 グランたちと違って私の謎発言に慣れないディオルグさんのつっこみに、話を流しながら最後にもう一つ尋ねる。


「ルアークのダンジョンは、その滞在期間にカウントされますか?」

「いや。ダンジョンは門内ではなく壁の外にあるからな。行くのか?」

「ルアークのダンジョンって、冒険者じゃなくても入れるんですか?」

「一応自己責任で、誰でも入れる。ただ、明らかに力不足なヤツは出入り口にいる門衛に止められるがな。それも、止まるかは自己責任だ。あ、だが入場料はかかるぜ」

「あの~。さっきからすっごく不思議なんですけど、貴女って長命種のエルフか何かですか?見た目より、大分お歳を召されてる…あ、ごめんなさい失礼でしたね」


 フィーネさんの疑問は最もだ。最もだから、他のメンバーも目が「そうなんだろ」と私の答えを分かってるというような視線をしていた。だから、私も「分かってくれ」と言う雰囲気を乗せて微笑した。


「人間ですよ。生まれてこの方、ずっと」

「あ、そ、そう…なんですね。ごめんなさい」


 何故か、さっきより心の籠った謝罪を返され、アリアさんがおずおずと尚も尋ねてきた。


「あの、さ。そもそも、アンタ幾つなの?」

「……………………………………………6歳?」


 改めて聞かれて思った。私はここで、このなりで、19歳と答えるべきなのか、6歳と答えるべきなのか。長い葛藤の想いが、「…」に籠って伝わったら良いなって思った。

 これ以上、この手の話には触れてくれるなと、契約を盾に終わらせたのだった。


■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.7 女 ヒューマン

 HP 70/70  MP ∞  SPEED 7

 ジョブ:チャイルド

魔法属性:全属性 『初級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』『付与魔法 Lv.10』『特級火魔法 Lv.1』『古代闇魔法 Lv.I』

 スキル:『探索(サーチ) Lv34』『審眼(ジャッジアイ)Lv.27』『隠密 Lv.3』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『万能保管庫(マルチアーカイブ)Lv.1』『ユニーク:絶対防御』

 状態:『若返り』『闘神の加護』

 称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』

 アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]

      所持金 56,780,450ユール


■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人

 HP 1,590/1,690  MP 1,700/2,690  SPEED 299

 ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕

 魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』

 スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.80』

 称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』


■ウォルフ:(9)Lv.13 男 獣人(狼属)

HP 125/125 MP 30/39 SPEED 194

ジョブ:孤児

魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv7』

スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv5』『掻爬 Lv7』

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