第34話

 画面表示されている映像は、白装束装備をした武装警備隊員が

 荒寺の入り口を目指して歩いていく様子が映し出されていた

 画面が少々見づらいが、6人が一列になって大声で『クックロビン音頭』を

 唄っている

 だが、楽しんでいる様にはとても見えない

 おそらくこれから向かう荒寺から妖怪の襲撃やキョンシー達からの

 襲撃を怖れ、緊張の極致にあるのだろう

 そんな貌色の悪い6人の武装警備隊員は遂に入り口に辿り着き、

 躊躇いなく草むらに分け入り侵入していった



 少し間をおいて、彼と同じく画面を見ていた嵩原が口を開いた

「荒寺内部は妖怪の数に対して、派遣した武装警備隊員は6名。

 妖怪達を全て討伐することは出来ん」

 嵩原はパソコンを操作し画面を地図に変え、指を滑らせる

 荒寺内とその周辺は、長らく手入れされていないためか

 荒れ放題の様で、かなり複雑な立体地図が作成されている

 モニター画面にも、荒れ放題の荒寺周辺が映し出されている

 更にパソコンの画面操作で、周辺道路を荒寺内部まで入れた

 立体地図を表示させていた

 まるで実際の現場にいる様な臨場感を出す

 しかも平面画像だと思ったら動画であり、ズームアップや旋回が可能になっていた



『―――こちら捕獲班、指令室。

 これよりキョンシー捕獲に向かう。出没地点まで誘導を頼みたい』

 武装警備隊員の声が無線から届く

 モニター画面の 映像では6人の武装警備隊員が大声で

『クックロビン音頭』を唄いながら移動が行われ、地図と共に

 リアルタイムの隊員の位置情報もされ始めた

 江崎の見ているモニター映像も、6人の武装警備隊員の移動と共に

 移動している事が解る

「指令室より捕獲班

 これより誘導ルートを随時表示する 前進を停止せずに、そのまま

 移動を続行せよ」

 オペレーターはそう応えつつ、パソコンに軽く触れ、

 素早く操作をする

 するとモニター画面の映像に映し出されている6人の隊員の前方に、

 複数の光の玉が出現した

(防衛シュミレーションでもやっている気分になってきた・・・

 あの見た事もない映像についてはスルーしていこう)

 彼はそんなどうでもいい事が頭に浮かんでくるのを、どうにか

 頭から追い払った

 オペレーターがパソコンを操作したことで現れた

 光の玉は全部で6つ。

 まるで隊員達を守る様に配置されている

「必要経費で揃えるだけ一級品一式装備でも、妖怪との

 遭遇戦は想像以上に烈しいぞ?

 何せ、向こうは未知の戦闘手段を用いてくるからな」

 嵩原がモニター画面を眺めながら言う



「あの一式装備には状態異常を防ぐ機能が備わってます。

 例えば毒を持った妖怪や神経を麻痺させてくる様な曲者な妖怪がいたとしても、

 隊員達は瞬時に 身体機能を一時的に強化し無効化する結界を自身を

 覆う様に発生させることも可能です」

 オペレーターの1人が簡潔にそう言った

「その分かなりの金額だ。一着ざっと日本円で9千万」

 嵩原が肩を竦めつつ、手に持っている情報表示端末を操作しながら応える

(どうみても丑の刻参り服装に何そのチート・・・・

 というか、9千万って、どんな高級品だよ!)

 彼は内心ツッコミを入れながらも、なるべく表情を変えずに

 現在映像に映っている6人の武装警備隊隊員を黙って視る

「これが従来ならば、予算などで決して一級品一式装備は

 揃える事は不可能です」

 再びオペレーターの1人が簡潔にそう言った

「その前に要望を出しても、門前払いが普通だ」

 嵩原はそう言いながら手に持っている情報表示端末を操作し、モニター画面から

 口を挟まず沈黙している彼に視線をやる

 オペレーター達は、彼に視線を向ける事無く眼の前の端末を

 真剣な面持ちで視ている

 映し出されている画像を見つつも内心で、彼がツッコミまくっている事には

 気づいていない

(これ以上何も聞かないでくれぇぇぇ!)

 彼は何とかポーカーフェイスを維持しつつ心の中で叫び声を上げたい

 気持ちになる

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