第25話

「おお、かっけぇ!・・・じゃなくてやはり強制戦闘ですか!?」

 そんな思考は脇において、すぐさま腰に差してある短剣に手を添えて

 臨戦態勢に入る

 鍔部分には紅い宝石のようなものが埋め込まれており妖しく煌めき、

 柄の部分にも鞘部分も白銀で輝いている

 まるで闇夜と炎のような輝きだ

「こ、こんにちは~?(ま・・まずは会話になるかコミュニケーション?)」

 武装した女性はこちらをじっと見つめたまま沈黙する

 そもそも会話は出来るのか? )

 そう考えつつも内心で冷や汗を流すと、無言で女性は地を蹴って一足で

 間合いをつめ、槍を横なぎに振るう



(ヤバい! 全然会話にならねぇ!!)

 そんな事を考えつつ、彼は鞘から短剣を抜き放ち攻撃をいなし躱しつつ、

 すぐさま後方へと飛び退いた彼はゼーゼーと息を吐きだした

(マズイマズイマズイぃ!! 会話以前にコミュニケーションも取れないし、

 攻撃がやべぇぇぇぇ!!)

 短剣を構えながら彼は思考を巡らすが、その間に女性は間合いを詰めるように

 にじり寄ってくる

(一矢報いる処か、生き残る事も無理――― いや、待てよ?

 いちかばちか『召喚契約』したのを使ってみるしかねぇぇぇ)

 彼はそう思うと、左手の人差し指に嵌めている指輪を前に伸ばす

「何か中二病的で言いたくないんだが!!

『我、契約者なり。朽ち果てし死骸森の気高き騎士よ。我が武具となりて、

 魔を断ちし刃を此処に現せ』英霊アレス!」


 指輪をかざしてそう唱えると、指輪が淡く輝いた

 同時に光り輝く魔法陣が地面に出来上がると、そこから西洋風の意匠が

 施してある漆黒の全身鎧に両手持ち用の剣と盾という出で立ちの騎士がゆらりと

 立っていた

 光輝く魔法陣から現れたそれは、以前に闘った漆黒の全身鎧騎士だったため、

 彼は少し呆然とした

 だが、すぐにその思考を切り替えることになる



 鎧と仮面を身に纏い、八芒星の意匠がある槍と盾で武装している

 女性が飛び掛かるように漆黒の全身鎧騎士へ攻撃を仕掛けたからだ

 漆黒の全身鎧騎士は、左手の盾で攻撃を受け流しつつ右手の剣を振るい、

 胴を薙ぎ払う

 振るったその一閃は、暴風の様な一撃だが彼女は寸での所で反応して

 後方に飛び退くことで躱す

 間合いを取るためなのか、女性は一度後ろに飛び退いた事で漆黒の全身鎧騎士と

 距離を取りつつ槍を構える



 すると、今度は漆黒の全身鎧騎士から仕掛けた

 それはとても人間の膂力では到底不可能な斬撃を繰り出した

 一閃、二閃と神速とも言える一撃は大気を切り裂き地面を抉る

 女性も負けじと漆黒の全身鎧騎士の猛攻を掻い潜り、盾で剣撃を弾き躱しては

 高速で槍を突き出す

 西洋の騎士甲冑とフルフェイスの全身鎧がぶつかり合い、金属同士の

 衝突音が鳴り響く

 そのたびに空気が震え、衝撃が周囲にも伝播していく

 漆黒の全身鎧騎士は身軽な動きで女性から放たれる槍を躱し

 剣撃と盾の一撃を浴びせかける

 両者は一歩も引かない攻防で牽制しつつ、隙を伺っている様子だ

 両者の間合いはさらに狭まり、息がかかるほどの距離にまで近づいていく

(何だこれ。嘘だろ?)

 そんな思考を浮かべている間にも戦闘は激しさを増していく

 跳躍し、今度は頭上から槍の一撃が振り下ろされる

 漆黒の全身鎧騎士は盾で弾きつつも追撃とばかりに剣撃を叩き込むが、

 女性は後方に飛び退いて躱す

 両者の間に距離ができると、漆黒の全身鎧騎士は地を這うような

 動きで駆け出す

 女性に肉薄し、勢いをそのままに剣を振る

 女性は槍で剣撃を受け流していくが、完全には捌ききれず後方へと

 吹き飛ばされる

(攻撃動作が速すぎてついていけないんだが!? 

 何のRPGゲームの1シーンだよこれは!くそっ。これだと介入も難しい)

 彼はそんな事を思いつつ、目の前で戦闘を繰り広げている漆黒の全身鎧騎士と

 女性を傍観する

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