第9話

 関連付けられた記事には、8月13日から8月15日のお盆期間内では日本国内『ダンジョン』内部で希少モンスター遭遇率が

 高くなるらしく、それも春から夏期間限定で海外『ダンジョン』では出没もしない

 モンスターが出没し『百鬼夜行』と呼ばれる現象が発生すると書かれていた



 もう1つは、秋期間内のハロウィンのような10月31日近辺では、秋から

 冬期間でしか出没しないモンスター種類でも特に希少モンスター遭遇率が

 高く『逢う魔時』と呼ばれる現象が発生すると書かれていた

『百鬼夜行』期間と『逢う魔時』期間は、この『世界線』の

 訪日観光探索者に取っては人気の季節で入国者が急増しているらしく、

 海外探索者向けの高級一式装備品などの売り上げが上がっていると

 書かれている

 この2つの関連性も、この『世界線』特有のものだ

 これらの記事から読み取る限りは、すでに今年度の上半期売上高が

 同期比5・8%増という過去最高をたたき出している

 他にもこの『世界線』では、流行り病の感染拡大を防ぐため

 発着回数が制限されていた東京と米国西海岸なら往復で四時間を切る

『マッハライトニング』という超音速旅客機が就航している記事があった



「 ・・・これ『百鬼夜行』期間と『逢う魔時』期間になれば訪日観光探索者が押しかけるんじゃ・・・? 」

 発着回数が元に戻りつつあるという記事を読んで、彼はそう呟き思わず

 身震いした

 この『世界線』と元居た『世界線』では微妙に違う事が多いが、共通している所と

 言えば流行り病の感染拡大防止による規制が約二年ほど

 続いていたという事だ

「人気観光地のオーバーツーリズム問題は、こっちの『世界線』でも懸念すべき

 問題なんだろうが・・・『ダンジョン』に関してのオーバーツーリズムなどは

 無いのか?」

 彼は業務用pcで検索するが、『ダンジョン』関連にするオーバーツーリズム

 記事は見つからなかった



「ひょっとして、『ダンジョン』関連の話題は閲覧規制されているのか?」

 彼は思わずそう呟くと検索を続けるが、そういう訳でもなさそうだった

 頸を捻りつつ、日本国内『ダンジョン』について調べてゆく

 まず日本国内『ダンジョン』は、『耕作放棄地』から『ダンジョン』へと

 成長するとネット記事などを見た

 日本国内『ダンジョン』は 市町村や県の農業関連課から委託された

 地元農家の人達で管理している

 また国土交通省からも管理委託されていたりもしていたらしいが、現在は

 休止しているらしい

『耕作放棄地』から未開拓『ダンジョン』に成長させるといっても、ほとんど

 放置状態に近く所有者不明のまま数年間放置されてた土地も多いらしく

 その土地利用についても問題が指摘される



 日本国内企業で『ダンジョン』を運営しているのは彼が勤務している

『手野グループ』1社のみで、その原因も民間企業が利益を求めようとも

 管理や設備投資にかなりの費用が掛かる為の様だ

「うちの『ダンジョン』は、他の大手企業からも一目置かれているのか」

 彼はそう呟く

 そこで目を引いた記事は、『手野グループ』の『第一群手野百貨店』と

『第二群手野百貨店』の本部及び関連会社が 海外支店まで含めると

 計二十店舗程度しかないというもので、その半分近くはコンビニや

 各種飲食店など小規模店が中心らしい



 その為、全国規模で展開している企業とは店舗数や従業員数が圧倒的に

 違う為にグループ内で連携を取り合う必要があるというものだった

 また大手企業の場合、『ダンジョン』に関する施設を建築するだけでも

 莫大な費用が掛かる上、維持費だけでも相当な負担となる

 そのため『ダンジョン』経営は敬遠されがちと記載されていた

 それゆえに海外企業に比べて『ダンジョン』の稼働率や売上に圧倒的な

 差があったらしい

 しかし世界規模の流行り病の発生で企業業績が悪化すると、日本国内の

 大手企業は遅まきながら『手野グループ』と連携を取り、

『ダンジョン』へ力を尽すようになったらしい

「『手野グループ』だけでも日本国内『ダンジョン』運営に難があったから、

 他の企業との連携を取り入れたのか・・・

 言っちゃなんだが『手野グループ』の図体はかなり大きいんだぞ?

 それでも難がある『ダンジョン』ってどんだけヤバい所なんだよ

 この『世界線』って・・・」

 彼はその記事を読み終えると、呆れながら呟いた


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