第2話  篝火(かがりび)

 鳥の鳴き声が聞こえた。

 目を開けると薄明るくなってきていた。

 身体が動く。

 昨夜の重さはなくなっていた。

 ヘッドランプを消す。


「先行者に気づいてもらえなかったか」


 おにぎりを食べてもう少し明るくなるのを待つことにした。


 徐々に明るくなり、鳥の声も賑やかになってくる。

 日が出て山頂から山を、世界を照らしていく。


「生きているな」


 一応スマホを確認すると起動した。


「はあ。

 結果無事で、騒ぎを起こさなくて良かったかな」


 降りようと立つと気づいた。


「ここは」


 スマホのGPSで確認する。


「あいつのとこだ」


 いつの間にか登山道から数十メーター外れてしまっていたようだ。

 そしてここはあいつの居た場所。

 いつも一緒にトレーニングをしていたパートナーが倒れていた場所。


「昨日は盆だったな」


 あの日、俺は体調不良でトレーニングをパスしたのだが、あいつは一人で走りに行った。

 ちょうどこの時季この時間だ。

 朝、あいつに連絡をしたのだが応答がない。

 共有している位置情報を確認すると伊吹山だった。

 最初はまだ走っているのかと思ったが位置が動かない。

 スマホを落としたのかと思ったが、登山道から外れているし、万が一を思って俺はすぐに家を出た。


 登山者を追い抜いてその場所へ行くと動かないあいつがいた。

 心臓麻痺とのことだった。

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