板裏昇降

 ドン……ドン……ドン……ドン……

 ゆっくりと足音が聞こえた。僕も誘拐されてしまうのか?

 僕は勇気を振り絞って足音の聞こえる方へと向かった。

 そこにいたのは……


「誰だ?」

「俺だよ。あんな心配させるようなこと言ってきてなんもしないと思うのか?」

 先ほど連絡した友達だった。

「思わない」

「だろ。で、結局行くのか?」

「うん。僕は森の中の板の下へ向かうよ」

「そうか。無事に戻って来いよ」

「戻ってきてみせるさ。」


 友達の声を聴いて、僕は少しだけ安心した。僕は取り残されたりはしていない、と。

 あっ、言い忘れたことがあったな。

「おい、こんな連絡が来たら僕はもう……そうだと思ってくれ」

 僕はスマホの画面を突き付けた。

「分かった。この内容、ガチでやばいな」

「だろ。僕は今から行ってくる」

「ガチで帰って来いよ」

「大丈夫。じゃあね」

 僕は別れの言葉を言い、友達と別れた。




 ただいまの時間は夕方の四時だ。

 僕は板の前てたたずんでいた。つい先ほど到着したところだ。家族の連絡を再確認し、こうならないようにと誓い、心を落ち着かせた。ついにこの時が来たんだ。これは僕が決断したことだ。引き返すなんてことはしない。


 僕は恐る恐る板をめくった。

 現れたのは異様な空気を放つ階段だ。地下へと続く階段は、まるで地獄の入り口のようだった。

 さあ、入るか。

 僕は足を踏み入れた。一歩一歩、音を響かせて歩いた。

 しかしある時から異変に気付いた。階段が終わらないのはそうなんだけど、違うリズムの足音が聞こえてくるのだ。

 家族のかと思ったが違うと気づいた。あんな早く歩けるような人はいない。

 僕は急いで階段を駆け上がった。

 振り返ると誰もいなかった。

「やっぱり気のせいだよな」

 僕はつぶやいていた。

 僕はもう一度降りることにした。

「ねえ」

 僕は後ろから聞こえてきた声にびっくりした。

「誰です……か?」

「……」

 黙ってしまった。

 僕は気にせず進むことにした。いや気になるし、犯人かもしれないけど、黙っていたらどうしようもない。


 少し経った後、後ろを見るといなくなっていることに気づいた。

「怯えろよ」

「は?」

 前を見ると先ほどの人がいた。

「俺は今お前に憑いてるんだぞ」

「誰だよ」

「……」

 また黙ってしまった。

 それから彼は僕の周りを回り始めた。

 ああ、僕はうすうす気づいていたのかもしれない。予感はずっとしてた。

 僕の周りには若い者が憑いているんだ。

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