エピローグ

あの日の私へ

 良く削った鉛筆を持つ。最近シャープペンばかり使っていたから、この鉛の匂いが懐かしく思えた。


 さて、何から書こうか。

 気持ちは晴れ晴れとしていて、試し書きした言葉たちは踊り出すよう。


 深く息を吸い込んだ。

 これまで閉じ込めていた気持ちに、ごめんねと謝る。

 見ないふりをしていたよね、暗くて狭いところに閉じ込めていたね。

 でも、大丈夫。


 一つずつ、丁寧に。

 気持ちをのせた葉っぱには、命が宿るから。


 えんぴつが柔らかく白地の紙の上にこころの種をまいていく。

 そこから若い芽がでて、私の秘めていた気持ちが花咲く。


「静葉、そろそろ出るよ」

「うん、今行く」


 書き終えた手紙に封をして、最後にこの気持ちが届くように、と祈りを込める。

 大切にしまうと、私は部屋を出た。

 

 私や、大切な人や、たくさんの人に。

 言葉の祝福が降り注ぎますように。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私のこころの綴り方 ミズキ @Iolite_g

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ