第2話 ドラゴン、同居人になる
俺は今、周辺の男たちに恐ろしいほど睨まれている。何せ、ただ薄いボロ布を纏っただけのリーヴァ(周りの人はこの美少女がリーヴァだと知らないから彼女だと思ってる)にお姫様抱っこされているからだ。
「確か、そこの建物の3階に団長さんの普段仕事してる部屋があるんですよね?」
「ああ、そこまで頼む」
「それにしても周りの男たち、ルークさんに嫉妬してますよ♪」
「何で嬉しそうなんだ。とりあえず、今回は飛んで移動しなきゃだったからいいとして、怪我でもしてなけてば普通に歩くから俺を抱かなくてもいいぞ」
「でも、私的にはこの方がいいんですが。こうしてるとルークさんの吐息が私の胸に当たりますし、いつでも顔を見ていられるので…」
「さっきから尾行してきてる奴らの殺気がヤバいぞ」
「私とルークさんの間を引き裂こうとする愚か者は私が八つ裂きにしますよ」
「そんな物騒なことはしなくていい」
「ほら、団長さんの部屋のところに着いたので降ろしますね」
「あ、うん」
俺はリーヴァに降ろしてもらい、そしてそのドアを3回ノックした。
「失礼します」
「やぁ、ルーク君。リーヴァの様子はどうだったかい?」
団長、リリア・デコラはこの竜騎士団の中でも1・2位を争う美少女で、見た目の割に俺と同い年の16歳らしい。俺とリリアは呑み友くらいの関係で、互いに恋愛感情がないことも認知済みだ。しかし、リーヴァはリリアが俺に少しでも気があると思ったらしい。
「ルーク“君”って何ですか!?馴れ馴れしいですね!ルークさんは渡しませんよ!」
「君は…?」
「私はリーヴァです。ルークさんの相棒兼家族兼親友兼片思い兼彼女候補兼妻兼セフレ兼護衛兼下部兼…」
「もういいよ。…っていうかルーク君ってセフレいたんだ。あーあ、真面目だと思ってたけどやっぱり男に変わりはなかった、か」
「知らないですよ!?俺はまだ童貞だし、まだ彼女だっていないし、告白は全部断ってきたし」
「冗談冗談。からかって悪かったね。えっと、その人がリーヴァってことは、人間になっちゃったってこと?」
「人間になった、というよりは人間になれるようになった、ですね。ドラゴンにも戻れるのでこれからも現役でルークさんの相棒です」
「そっか。それと、さっき言ってたことからしてルーク君のことが好きなの?」
「はい!大好きです。危害を加える愚か者は皆殺しです!」
「ドラゴン特有の血の気の多いところは変わらないのね…。それで、ルーク君はリーヴァのことをどう思ってるの?」
「えっ…。きゅ、急にそんなこと言われても…」
正直言うと一目ぼれではあった。しかし、もしも俺にナイショにしているだけで本当はリリアが俺を好きだった場合、気まずくなるんじゃないのか?いや、リリアが俺を好きとか自惚れもいいところか。
「まあ、好きです、ね。出会ったきっかけのことで相棒としては信頼もしてたし友情すら感じていたほどだったんですが、その、人間の状態のリーヴァの顔って、すっごい好みの顔なんです。それに、私が守るって言ってくれたことで改めて惚れちゃったりはしてます」
「へぇ~、ルーク君ってこんな感じの女性がタイプだったんだ。てっきり淑女がタイプだと思ってたけど」
「俺は可愛い顔の方がいいです。あれ?リーヴァ?」
リーヴァを息を荒くしながら顔を真っ赤にしていた。
「ルークさんに好きとか可愛いとか言ってもらえて興奮が止まりません…。ああっ…、もっと、もっと言ってください…」
「そのうち禁断症状が出るかもしれないし止めとく」
「まあ、もう少し話したいし今夜はいつもの場所で呑もうか」
*
「それで、今日から私はルークさんの部屋で寝泊まりすればいいんですね」
「まあ、そうだな。それと、今日は有給使って休んだからリーヴァの服とか買いにいくぞ」
「それって、ルークさんとデートってことですか!?」
「まあ、そうだな」
「ルークさんってお金どれくらい持ってます?まだ私にはお金をどれくらい持ってるのがすごいのかよく解からないんですが」
「まあ、貯金も含めて2000万ヅロ、大富豪ほどとはいかないけど、それなりに持ってる方だな」
「それじゃあ、早速行きましょう!!」
「おい、その恰好で行くと色々マズいぞ!」
「えっ?」
偶然なのかその瞬間、リーヴァの纏っていたボロ布がサッと音を立ててその肌から落ちた。
「ルークさんになら何回裸を見られても構いませんよ?」
「そういう問題じゃないだろ!いいから早く新しい服貰ってこい!」
*
「どうですか?この服」
「こっちもどうですか?」
さっきから色々な服を試着しているが、殆ど目のやり場に困るものばかり選んでくるのはわざとだろうか?
「うう…、目のやり場に困る」
「それってどういう意味ですか?」
「エロいのと、か、可愛いからだよ」
「そうですか~?じゃあ、もうどれも買っていきましょうか」
「えっ!?ちょ待て」
「店員さーん、ここからここまでお願いしまーす」
*
「この量どこに収納するんだよ」
「部屋のクローゼットを異空間と繋げれば問題ないですよ」
「それ大丈夫なのか?相変わらず物騒だな」
「えへ、そうですか?」
「褒めてねえよ」
続く
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