ドラゴン、竜騎士の妻になる~訓練中のいちゃらぶも合法です~

クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ

第1話 ドラゴン、美少女になる。

その世界では、国同士戦争はごく僅かなものの、モンスターが街を攻撃したり、住民の生活を妨げるようなことが日常茶飯事だった。

そこで人々は、冒険者たちと区別して街を守る存在を作ろうと考え、ドラゴンを手懐け、竜騎士団——ドラゴンギルドを結成し、今では世界中どの国にもあるほどだった。

そこはパージャル王国といい、世界トップクラスの大国だった。

そこのドラゴンギルドには入団2年で中堅に成り上がった少年がいた。

その少年、ルーク・リテルアの相棒のドラゴン、リーヴァは翡翠色の鱗、深く澄んだ青い目を持ち、上司や部下からも羨ましがられていた。

しかし、ルークは更に羨ましがられることになる。

俺——ルークはリーヴァの住処すみかである国の壁の外にある洞窟に急いでいた。本部からの報告によると、昨日の夜、あの洞窟で謎の発光があったらしい。

もしもリーヴァに何かあるんじゃないのかと思うと気が気でなかった。俺が本部から与えられたドラゴンをうまく乗りこなせず、見捨てられて自暴自棄になって脱走した時に見も知りもしいない俺に何かを訴えるかのように寄り添ってくれて、俺を背中に乗せて空を飛んでくれた。

それから相棒として2年一緒に訓練を積んできたが、今までこんなことはなかったのに、一体何があったのだろうか。

もしかするとリーヴァの綺麗さと俺との相性の良さを妬んだ誰かが魔法か爆弾で殺しに来たのかも…いや、悪い方向に考えちゃダメだ。

頼む、無事であってくれ…。


俺が洞窟の奥地、リーヴァが寝ているはずの藁の山に到着した時、既にリーヴァの姿はそこになかった。

クソ…。守り切れなかったのか?

ただ、その藁の山の上にはリーヴァの鱗の色によく似た翡翠色の何かがあった。

俺が必死になって登ると、そこには全裸の美少女が寝ていた。少女の髪は腰くらいまでの長さがあり、その色はまさにリーヴァの鱗の色だった。

…それにしても、可愛いな。もしかすると国から抜け出してきてここで寝ているなのかもしれない。でも、こんな綺麗で可愛い娘は見たことがない。

身体を丸めて寝ているからよく確認できないが、胸はそこそこの大きさがあるように見える。

おっと、つい少女に目が行(逝)ってリーヴァを探すことを忘れるところだった。


…諸君、俺だって16歳、思春期真っ只中だぞ?ニヤニヤしないでもらいたい。


「…ん…」


ヤバい!?起きたかもしれない。もしも裸を見られたと思われたら嫌われるかもしれない。…そもそも見たのは事実だし、嫌われる嫌われない以前に初対面だし。

少女はあくびをしながら起き上がると、裸を恥じらうでもなく眠そうな目で俺の方を見てきた。そして俺の目を2秒見つめた後、嬉しそうにニヤニヤし始めた。


「ルークさん!!私ですよ、私。解りますか?」

「解るも何も、初対面だろ?っていうか何で俺の名前知ってるんだよ」

「解んないんですか!?この綺麗な髪!澄んだ目!そしてこの大きい胸!これだけヒントが揃ってれば解るはずです」

「だから初対面だって言ってんじゃん」

「じゃあこうすれば解りますか?」

「え?」


俺は少女に抱き着かれ、胸に顔をうずめさせられた。


「あなたは強い。私が一緒に戦ってあげるから大丈夫ですよ」

「…見知らぬ美少女にこんなことされて俺としてはとても嬉しいんだが、これは何かの罠じゃないよな?」

「罠、ですか?多分、ルークさんが私を好きになる罠ですね。ルークさんこそ、美少女だなんて言って私を好きにさせようとしていませんか?まあ、もう2年前から好きですが」

「なあ、もしかしてリーヴァか?」

「正解です!!ご褒美に、もうちょっとだけ顔をうずめたままでいいですよ」


…。この美少女がリーヴァ。昨日、9時間くらい前まで綺麗でカッコいいドラゴンだったのに?これは夢だな。


「何で人間になったんだ?」

「人間になった、と言うよりは人間になれるようになった、ですね。ドラゴンに戻った方がいいですか?」

「…いや、今の方が可愛いからそのままでいい」

「…ル、ルークさんにそう言ってもらえるなら嬉しいです」

「それで、どうして人間に?」

「何か、急に心臓が痛くなって、血を吐いた時には気づいたら人間になっていました。でも、すぐにドラゴンに戻る方法を見つけられたのでこれからも私は竜騎士ルーク・リテルアの相棒、ですよ」

「それと、さっき俺のことを2年前から好きだって言ってたけど、あれってlike?love?」

「LOVE♡、です」


リーヴァはわざわざ手でハートを作ってそう言った。つまりガチのヤツだ。

小悪魔のような悪戯っぽい笑みを浮かべたリーヴァに、俺はついドキドキしてしまう。


「実は、俺もリーヴァのことを…」


好きかもしれない、そう言いたかったのに…。


「ルークさん、鼻から殴られたかのように血が溢れてますよ?」

「え?ああ、ゴメン」

「興奮、しちゃいました?私に」

「…服、着ろって」

「照れちゃってるんですか~?ルークさんも男の子ですね~」

「とりあえず、団長のところに報告しに行こう。服着たらここ出るぞ」

「はいっ!」


こうして、俺のドラゴンは美少女になったのであった。


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る