第2話 SUGOラリー ドライバー谷口の視線

 SUGOラリーが始まって4年目。ドライバーとして4年続けて参加しているのは自分だけとなった。もっとも1年目にSUGOから「ラリーもどきのイベントをしたい」という相談を受け、アドバイスをしたのがきっかけだった。それが国際ラリーストが参加するイベントにまで成長したのである。感無量であった。

 使用するマシンはスィフトスポーツのラリー仕様。JN-4クラスに参戦している。クラスの台数は8台。いずれもスイフトスポーツだ。1日目の第1ステージ。地元の利でクラス2位で抜けた。折り返しの第2ステージは守りに入った走りをしてしまいクラス4位。総合クラス3位となった。スキー場の第3ステージ。人工雪がばらまかれた駐車場はアイスリンクなみだ。スタッド(スパイク)のついたタイヤでも滑りまくる。そしてスキー場のコースといっても道路がまだ見える。これから雪が積もってくるのだが、ところどころに人工雪が積もっている。登りはまだいいのだが、下りは結構恐怖だ。雪というよりも泥んこに突っ込んでいく感じだ。他のマシンも結構苦しんでいる。無難な走りに徹し、クラス3位を確保した。馬力のないクルマはハンドリング勝負だ。

 サービスステーションのモトクロスコースのパーキングにもどる途中、蔵王や村田の商店街を抜ける時は多くの人の歓迎を受けた。ふだんレースに興味のない人たちにもラリーが認知されるようになった。今までそういうことが少なかったので、レースの勝ち負けより嬉しく感じた。

 

 2日目。モトクロスコースのパーキングに停めていたキャンピングカーで目を覚ました。他にもキャンピングカーで寝泊まりをしているドライバーが結構いる。最近、SUGOインター近くにビジネスホテルができたので、レース関係者の多くがそこに泊まっている。ここから車で10分ほどの近さだ。

 9時にスタート地点に移動。今年から第4ステージと第5ステージの順番が交代した。最初はモトクロスコースのパーキングからSUGOカフェのパーキングへ向かうコースだ。

 JN-1クラスから出走だ。JAPANラリーで走った8台が先行する。さすが国際ラリースト。コーナーをドリフトさせながらたくみに抜けていく。JN-4クラスとは倍以上の馬力があるので、立ち上がりのスピードがまるで違う。我々とはまさに別次元の走りを見せられた。

 10時半にスタート。コ・ドライバーがレッキでメモったペースノートを読み上げる。でも、ここは地元。何度も走ったコースだ。コーナーの角度は身についている。特に登りが中心の第5ステージは得意のコースなのでクラストップタイムを出した。サービスステーションに入ると、知り合いから

「さすが谷口さん。SUGOの主だね」

と言われてしまった。クラス2位に上がった。

 モトクロスコースを使った第6ステージは、ダートラ経験者が強い。ジャンプする箇所も多く、スピードを出し過ぎると着地でマシンを壊しかねない。慎重な運転に終始してしまった。クラス3位に後退する。

 その夜は、サービスステーションのいたるところでBBQが行われていた。12月の初めだというのに、皆外で食べて飲んで盛り上がっている。私も相伴したが、早々にキャンピングカーにもどってきた。明日のレースに備えたかったのだ。


 3日目、SUGOのレーシングコースとパドックを使ったラリークロスコースだ。人気のコースで、2日目にはアマのレースがこのコースで行われている。今年も100台以上のエントリーがあったそうだ。

 最初は、インコーススタート。相手は同じJN-4クラスの今野選手。いつも争っているライバルだ。第1コーナーはインなので先行、だが第2コーナーではフルブレーキングをしいられる。360度に近いターンでピットレーンに入り逆走する。そして4Gといわれるパドックへの入り口から入り、特設ジムカーナコースへ。右に左に曲がり、スピンターンをする箇所もある。ピット上の観客は大盛り上がりだ。そして1Gといわれる出入り口からレーシングコースのアウトコースへ。メインスタンド前を全力で走る。ここでも観客の声援が聞こえる。第1・第2コーナーはアウトコースライン。ここでスピードがのらないとタイムは伸びない。第3ポストの出入り口からCパドックに入り、ここで特設ジムカーナコースがある。ここでは逆回りのスピンターンがある。これが結構難しい。どうしても大回りになる。ポストに接触すると5秒プラスとなるので慎重にならざるを得ない。それが終わると、周回路コースに入り、西コースへ下る。西コースからレーシングコースへの特設ゲートを通って、SUGO名物の10%勾配の登りだ。JN-4クラスでは馬力が足りない。加速が今ひとつだ。ダンロップブリッジの下でインコースにもどってきた今野選手が見えた。向こうが前だが向こうはこれから加速。こっちは最高速度にのる。フィニッシュラインではこちらが先だった。

 後半は、アウトコーススタート。二つのジムカーナコースを抜けて、レーシングコースにでると、アウトコースから今野選手が追い上げてくる。フィニッシュラインでは、ほぼ同時だった。タイム合計では勝つことができたが、クラス3位のままだった。

 午後は最終ステージ。

 西コースから、周回路に出て、トンネルを抜ける。出入り口は90度ターンがしいられる。トンネルは1.5車線しかない。バス1台がやっと通れる幅なのだ。結構シビアだ。そして、登りの周回路コース。側溝が曲者で、毎年ここで脱輪するクルマがある。でも、そこはSUGOの主と言われる自分。コ・ドライバーが読み上げるペースノートの前に自然に体が反応しており、遅れはない。エネオススタンドの裏を過ぎると、下りになる。ここには落ち葉やコケがある。滑りやすいので要注意だ。旧くぬぎ山荘の駐車場から右折し、林道を登る。わだちがあるので、それにはまるとこすってしまい、タイムが伸びない。凸の部分にタイヤを乗せて走らないといけない。わずか100mほどの道だが、ここでタイム差がでる。第8ポスト脇からレーシングコースに出る。

 裏ストレートの半分の距離を最高速で走る。そして馬の背コーナー。通常は90度の右ターンだが、SUGOラリーでは、まっすぐ抜けてグラベル突入。クルマ一車線分の草地を走る。ちょっとでも外れると、砂利道となりタイムロスになる。第10ポスト前で右にターンし、ジャンプ台に向かう。高さ50cmほどのジャンプ台なのだが、クルマ1台分ぐらいはとぶことができる。コース脇にあるトライアル広場からは観客が一斉にカメラを構えてシャッターを押している。正面のSPスタンドの満員の観客からは歓声がでている。SUGOラリーの一番の盛り上がりだ。SPコーナーを抜けるとフィニッシュ。観客が大きな拍手で迎えてくれる。これがSUGOラリーのいいところ。多くの観客がフィニッシュラインにいるのはサーキットを舞台にしているメリットだと思う。ここで順位を上げ、クラス2位に上がった。優勝はできなかったが、多くの観客の声援を受けて走ることができて満足だった。

 来年も出られたら、走りたいと思う。

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