今でも私は、あなたを待っている

晶の華

今でも私は、あなたを待っている

今でも私はあなたを待っている


 当たり前って何だろう。生きるって何だろう。男らしい、女らしいって何。助けるってどこからどこまで?

―私って意味あるのかな。

 3、2、1、0。5時ぴったりにスマホのアラームがなる。私の起床スイッチが押される。目が覚め、顔を洗い、一番最初に行うこと、それは勉強。朝は一番記憶が定着しやすい時間帯だ。まさに、勉強のゴールデンタイム。

 6時。もうそんな時間か。きりのいい所で、終わらせる。ご飯を食べ、少し走る。帰ってきたら、お母さんが居る。

「ただいま。」

返事のない挨拶。こんな生活いつまで続くんだろ。お父さんは、違う女の所に行った。お母さんは、その日からずっと植物状態。精神状態が不安定なのだろう。が、このままではだめだと思い、前に思い切って声をかけたことがある。その日は、どんよりとした雨雲が広がり、家の中にいても雨音が聞こえるぐらい黒く暗い雨の日だった。


 また椅子に座ってる。これが一週間も続いてる。お父さんが、出て行ってからお母さんは、以前のように笑わなくなった。それどころか全てが変わった。前のような明るく輝いていたひまわりのような目は消え、今では死んだ魚のような目をしているし、キラキラと楽しそうに何事もやっていたお母さんは、どこにもいなかった。

 お母さん、ずっと何も食べてないし、昼間はひっそりと静かにただただ泣いてる。また笑ってほしい。私に何か出来ることないのかな。このまま時間だけ過ぎるのは嫌だな。

「お母さん。お母さんには私がいるよ。」

私が発した声は、リビング中に響き渡った。お母さんには、届かなかったのかな。そう思った時、何かが動いた気がした。真っ直ぐ前を向くと、お母さんはこっちを向いていた。でも、いつもと違った。目が、狂気に満ち溢れていた。全身鳥肌がたった。逃げたかったけど、怖くて動けなかった。

「お母さん、、?」

「あなたは、何が分かるの?何ができるの?あなたがいて何になるの!」 

、、、!!痛い。殴られた?痛いよぉ。お母さんの息が荒い。目が怖い。私はどうしたらいいの。何をしたらいい?何ができればいいの?私がいるからよくないの?私が悪いの?お母さんは、何を望んでるの?もう全部嫌だ。お母さんも、お父さんも、生きることも全部。全部。私が得意だと思ってた、人を笑わせることは自分が勘違いしてただけ?私は何もできない。私は、生きてて意味があるの?私は、周りの人に何もあげられてない。もらってばかり。何も何も何もできない。もうこんな自分嫌だ。

―死にたい。

 

 今の私は、完璧でつまらない。生きている感覚がない。楽しくない。だけど、これでいいんだ。お母さんにまた笑ってもらうため。全部。だから、仕方ない。私は、こう生きるのが正しい、正しいから。

 もう嫌だ。全部。いつまでお母さんのために頑張らなきゃいけないの?もう死ねばいいのに。それが楽なのに。私の馬鹿!弱虫!なんで意味がないことを続けるんだろ。誰かに話したい。褒められたい。愛されたい。誰かに気づいてもらいたい。私は、何もできない。口だけ、、、


「ただい、、!」

「ギァァァァァァァァァァァァァゥウァァァァァァァ!!!!」

家に入った瞬間、お母さんがこっちに向かって走ってきた。包丁を持ってる。避けなきゃ。とりあえず避けられたけど、お母さんが変。家から飛び出しちゃった。

「ウァァァァァァァァァ。はぁはぁ」

あの時とは、違った目だった。狂ってる、獣みたいだった。ふと、視界に色々なものが映った。なにこれ。何が起きた?何が起こっている?ちぎれている服、ハンガー、ペン、カーテン、ガラスの破片、すべてが散らばっている。これ全部、お母さんがやったの、、?ゆっくりと家に入る。壁には、切り跡。テーブルの上には、書類が散らばっている。お母さんの足元には、適当に切られた髪の毛が落ちている。これは、お母さんの髪の毛?私は、何をしたらいい?このまま勝手にさせておけばいい?止めたほうがいい?怖い、動けない。どうしよう、どうしよう、どうしよう、、、もうやめたいよ。その時、

「大丈夫?」

声をかけられた。私より少し背が高い。高校生ぐらいの女の人。しっかりしてそうな人。優しく、明るい声。なんか、助けを求めたいと思った。でも、この人も用事あるよね。

「えっと、、大丈夫です。あ、あの、30代ぐらいの女性をみませんでしたか?その人、私のお母さんなんです。さっき、走っていってしまって、追いかけなきゃいけないんです。」

やっと出せた声が震えていることが自分でも分かった。

「それのことなんだけど、君のお母さん捕まえたから、返しに来たんだ!」

捕まえた?返しにきた?そんな悪いことしたの?それにあなたにあげたつもりはないんだけどな。でも、探す手間が省けたからまぁいいか。

「じゃあ少し待ってね。」

なんか不思議な人だな。明るくて、頭がよさそうで、憎めない人。

「さっき、眠らせたから、2日は起きないと思うんだけど、なんかごめんね。」

「2日!?」

驚いたあまり、思わず声に出てしまった。2日、、?何をしたんだろう。そんな方法があるなら教えてほしい。

「あの、何をしたんですか?」

「、、う〜ん。この人がすごく暴れてたから、少し強めに首を叩いて気絶させたんだ。」

「それ、、私にもできますか。」

「できないかな。」

即答!そんなにも難しいのか。

「何か月ぐらい必要なんですか。どうしても、ほしいんです!」

「なんでほしいの?」

「お母さんが暴れたとき、眠らせて、1人の時間を増やすためです。」

「それは、気絶じゃなくていいんじゃないかな?本当に君がほしいのは何か考えてみて。」

ほしいもの?何言ってるんだろこの人。私がほしいもの、、、

「自分に聞いて。自分からひきだして。裏返った靴下をもとに戻す感じ。」

裏返った靴下を元に戻す感じ、、、また変な表現方法。私がほしいもの、ほしいもの。愛、褒めてくれる人、助けてくれる人、優しい人。そんな人がほしい。

「えっと、愛を与えてくれてて、助けてくれる、優しい人がほしいです。」

「難しいね。それ。でも、君らしい。じゃあそれを目標にがんばろ!あ! 名前は?」

「筒井那美(つついなみ)です。」

「じゃあ、なっちゃん!私は、加賀谷輝羽(かがやこうは)!好きなように呼んで。」

「よろしくお願いします。輝羽さん。」

「じゃあ、明日から特訓ね。なっちゃんがなっちゃんの目標をクリアできるように修行!」

「はい。よろしくお願いします。頑張ります!」


次の日。

「なっちゃ〜ん!来たよー」

外から声がする。輝羽さんだ。

「ちょっと待ってください!もう少しで片付けが終わりますから。」

昨日、お母さんが暴れた後片付けがなかなか終わらない。

「じゃあ、一緒にやって一瞬で終わらそ!」

え。足音がしなかった。早い、、さすが輝羽さんだ。

「じゃあ、あそことあっちをお願いしま、、」


「やっと、終わったね!」

「はい、、お母さんのどういう思いがこんなことをさせたんでしょう。不思議でたまりません。」

「、、、」

「、、、」

「あの、今日の特訓はなんですか?」

「えっと、今日は自分のことを師匠に話すこと!はい、じゃあ話してくださーい!」

「えっと、私は、死にたいです。誰にも褒めてもらえなくて、自分の見た目も自分の中身も嫌いです。私は学校では、ある程度の信頼があって、みんな優しいんです。でも、家では地獄。だから、逆に学校のみんなが嘘をついていて、私をからかっているのではないかと思うときもありました。でも、最近学校に通ううちに、みんな純粋に応援してくれているということにきづいて、、でも、自分は「いい子」になりきっているだけで、決まった人しか好きじゃないし、それ以外の人は消えてもいいと思ってるんです。その人やその人の家族には申し訳ないけど。それに、人間の価値なんて最初からないんです。でも、生まれたから、「世界」があることを知って、世界にはルールも上下関係もたくさんある。だから、それを守ってるんです。そうすると、一人一人に社会的価値が生まれる。学校内での、恋人関係、友人関係、頭のよさもその一つで、すべてが誰かが作ったものによって成り立っている。だから、全員が一斉にこの世からいなくなったら、すべての価値がなくなるんです。面白そうでしょう?」

「そうだね。あなたの考え方、すごく面白い、新しいことが知れた。他には?」

「他は、言葉の意味についてなんですけど、嫌いな言葉が4つあって、当たり前と普通と女子力と女らしさ。当たり前と普通っていうのは、何が基準なの?っていう話で、基準もなく多くの人がやっているからという理由で当たり前や普通にしないでほしいなと思ったからです。女子力は、男子が男子なのに女子力が高いことに違和感を抱いていることを知って色々考えてたら、嫌いになりました。女子力というのは、女子が化粧をしている、ファッションに気を遣っているという古い考えからきているのでは?と思ったんです。そう考えると、女子=化粧、ファッションなどの女子らしさというものが「女子力」という言葉に秘められていることが分かります。考えただけで嫌気がさします。が、私も女子だから、男子だからと恋愛対象を分けていた時期があり、自分がそういう時期があったことに対しても嫌になります。全女子と男子に謝りたいです。申し訳ないです。」

「君、責任すごいね。さすが、私が見込んだ子だ!他には?」

「他には、自傷したことです。これは、自傷してる友達が周りにいなくてずっと相談できなくて、でもずっとずっと話したかったんです。えっと、自分はリスカは刃物で自分を切るのが怖くて出来なかったんですけど、痣を作ることはなんだか好きで、痣を作りました。自傷は、元々憧れから始めたので今はすごく辛くなった時しかやってませんが、自傷が悪いとは思いません。自分の体を傷つけることがいけないと思うなら、心の方がもっと辛いし、自傷することでつらさを軽く出来るからです。でも、その人が自傷をしなきゃいけないほど思い詰めているのならば、私はいつでもその人の力になりたいと思っています。でも、その人を自傷しなきゃいけにないほど追い詰めたのは人間だから同じ人間としてやるせない気持ちになります。」

「そっか。でも、君が自傷してる子に対してそんなに深く考えなくてもいいと思うけどな。」

「いや、でも自分が動いたら少しでも救われたかもしれない人が苦しんでいる姿を見るとそう思ってしまうんです。」

「でも、救いようがなくない?だって、手の届きようがないでしょ?」

「そうですけど、、」

「他には?もうない?」

「これで全部です。」

「なっちゃんはさ、考えすぎっていうぐらい考えてる。全てを自分がなんとかしなきゃって考えてる。それが、バネになるときとおもりになってるときがあって、ごちゃごちゃになってる。でも、なっちゃんはそれに気づかず生きてるから、行き詰まって苦しくなって「死にたくなる」。死にたくなることで、全てが敵に見える。闇に見える。信じたくなくなる。そんなことを考えている自分も嫌いだ、怖いって思うようになって、でも周りだけはただただ優しくて、、、っていうことだよね?」

「はい。」

「でもさ、なっちゃんが今ここでものを見れたり、触れたり、私と話すことが出来たり、呼吸することが出来るのは、元気な体をなっちゃんにお母さんが産んでくれたからだよね。」

彼女の目は、夕日に照らされギラギラと輝きながら、真っ直ぐとこちらを見ていた。

「、、、」

「私ね、つい最近ペットが死んだんだ。」

「、、!!」

「猫のもちっていうんだけど、本当に可愛くて唯一の相談相手で、私にとっても家族にとっても大事な存在になっていた。でも、ある日学校から帰ってきたら、ママとパパがリビングで泣いてて、何か抱いてるのが見えたから、近く寄ったら、冷たくなったもちだった。その瞬間、全部が嫌になった。毎日一緒に話してたのに、撫でてたのに、それができなくなると思ったら、悲しくてたまらなくなった。生きていけない気がした。1週間ぐらい外にも出れなかった。外に出るときは、もちを追いかけて外を散歩してたから、それができないことを突きつけられたくなくて外に出たくなかった。もちがいない生活なんて私には重すぎた。こんなことがあってね、外に出ない生活が2週間目になりそうな日にママが私の部屋に来て、一緒に話そうって言ってくれたんだ。最初は、乗り気じゃなかったんだけど、ママがもちをどう思ってたか、なんで死んだかを知って、少し楽になれて、私もママに思ってたことを話したんだ。そうしたら、辛かったねってママが私の頭を撫でてくれたんだ。その瞬間、とても心があったかくなった。生きててよかったって思えたよ。それで、次の日思い切って外に出てみたんだ。もちと歩いた場所を一人で歩きながら、これも悪くはないなって思った。それが、春の暖かさなのか、もちのことを考えてたからかはわからないけどすごく心と体が暖かかったんだ。もちが死んだのは今も悲しいけど、いなくなっちゃったことで、家族の大切さ、人の暖かさが分かった気がする。もちのおかげで、少し成長できて、一つ一つのことを大切にしながら生きることができるようになったんだ。だから、なっちゃんが死んだら、いろんな人が悲しむよ。」

「私なんて役に立たないって言ってたお母さんも?」

「うん。自分のお腹の中から産んで、13年育ててきた子供が死んだらすごく辛いと思うよ。」

「!、、、、、もうやめてよ、そんなきれい事、輝羽さんが思ってるだけでしょ。私のお母さんがどんな人か知ってる?私の気持ちどれだけ分かるの!?」

「、、ごめんね。私は、なっちゃんの気持ちが全部は分かるわけではない。だけど、今のまま時間が過ぎてなっちゃんやなっちゃんのお母さんが死んだとき、絶対悲しむ人がいる。それは、断言できる。」

輝羽さんの目は、いつもより硬くて黒くて真剣だった。

「でも、私が死んで悲しむ人なんていない。」

「一人はいるよ。必ず。」

「誰?」

その時、一気に世界の裏側から強く暖かい風が吹いた。

「私。」

「え。でも、輝羽さん昨日会ったばっかりじゃないですか。」

「それは、悲しまない理由にならないよ。私は、君を助けたい。笑ってほしい。そう思ったから、今君の隣にいる。それなのに、本人のなっちゃんがいなくなったら、私立ち直れないよ?」

笑わせたい。私がずっとお母さんに対して思っていたこと。私と同じ気持ちだったんだ、輝羽さん、、でも、

「助けるってどこからどこまでですか。」

挑発的な口調で聞いた。助ける。そう言ってる人こそ何も考えられてなかったりする。そんな人に助けてもらいたくない。

「え、全部。」

彼女は、当たり前のように呟いた。明るい茶色い肩に当たるぐらいの長さの外はねボブが太陽の光に反射してギラギラと輝いている。

「当たり前のことを聞いてくるから、こっちがびっくりしたよぉ。私は、なっちゃんの力になりたい。死ぬまでお供します!」

死ぬまでお供します!だなんて、軽々しく言うからこっちがびっくりした。なぜか、てへへと照れながら言っている輝羽さんがすごく可愛く見えた。そのせいで、思わずにやけてしまった。

「え?笑ってる?」

「笑って、、、なんかいません!輝羽さんが悪いんです!」

「あはっ可愛いなぁ。なっちゃんは~」

「からかうの、やめてください!!」

「でも、笑ってくれて嬉しい。今、どんな気持ち?」

「暖かくて、素敵な気持ちです。ずっとこんな気持ちで居たいです。」

「そういうことだよ!私にとって、助けるっていうのは。そういう小さな「新しい」と「暖かい」を大切にできるように、見つけられるようにしてみせる!だから、毎日を私と過ごそうよ。」

「はい!よろしくお願いします!」


次の日。

 私の隣には、お母さんが眠っている。暴れていたのが嘘のように、静かに眠っている。でも、お母さんの寝顔を見ると不思議と怒りがこみあげてくる。私は、あなたを赦さない。輝羽さんが赦してあげてと言ったとしても、これだけは絶対に赦さない。あんたなんか、消えちゃえばいいんだ。そう言っている自分がいる。そんな自分も憎い。この気持ちは、どうやったら消えるのだろう。私は、お母さんの寝顔を見ながら、暗く深い顔をした。

「夫?、、ちゃん。なっちゃん?」

「え?」

「ずっと外から呼んでたんだけど、返事が来ないから来ちゃった!あと、鍵あいてたよ?」

「あ、すみません、、少し、考え事してて、、、」

「あと、「憎しみ」はためないほうがいいよ?いつか壊れるかもだから。」

この時、少しゾッとした。輝羽さんが発する憎しみの言葉はすごく重みがあったから。

「、、どうしたら、適度に吐き出せるのでしょうか?」

「う〜ん。人それぞれだけど、なっちゃんは私に言うのがいいんじゃないかな。」

「じゃあ、さっき考えてたこと言ってもいいですか。」

「いいよ。」

「私、お母さんの寝顔を見てたんです。そしたら、なぜか怒りがこみあげてきて、お母さんのせいで私は悩んで、苦しんでたと思うと、お母さんが何をやったとしても赦したくない、赦さないって思っちゃったんです。それで、そんなことを考える自分も嫌になってきて、でも死にたくもないし、殺したくもないからどうしたらいいんだろうな。って思って、、、」

「やっぱりすごいね、なっちゃん。あの、10分間ぐらいでそんなに考え込んでたんだ。私にはできないことだ。でも、それがなっちゃんの足枷になってるんだね。辛いね。」

そう言って、輝羽さんは、私の頭を撫でてくれた。私の手より小さい輝羽さんの手は、私の頭を丁寧に触り、暖かく包み込んだ。輝羽さんが言っていたのは、こんな感じだったのかもしれない。「ママが頭を撫でてくれた」というのは。

「じゃあ、私、もう行くね、じゃあね!」

「また、待ってます!」


次の日

 朝起きたら、なぜかいつもの朝ごはんの匂いがした。お母さんが起きて、キッチンに立っていた。

「お母さん、、?」

「おはよう、那美。」

以前のようなキラキラとした笑顔で、話しかけてくれた。これは、夢なのかな。

「那美、ごめんね。お母さん、那美のこと嫌いじゃないよ、大好きだよ。なのに、「いらない」なんて言っちゃって本当にごめんね。お母さんのせいで、辛い思いをしたよね。本当にごめんね。赦さないって思うのもすごくわかる。だから、これからは、お母さんとして頑張るからまた那美を愛させてほしい。お願い。」

心変わり?いつものお母さんだ。いつも通りの目だ。暖かい。いつもの、いつものお母さんだ、、、

「私、ずっとずっと辛かったよぅ。お母さんが「いらない」なんていうから。死にたいって思っちゃったよぅ。お母さん、、、」

窓から届く春の暖かい日差しに見守られながら、お母さんに包まれた。お母さんなんて赦さないって心に誓っていたのに、なんでこんなにも、、こんなにも心が暖かいんだろう。生きててよかった。希望を捨てずに生きててよかった。そう心から思った。


2週間後

 お母さんがもとに戻ったのは、本人もよく分からないらしい。でも、眠りからさめる少し前から、ちょっとずつ体が軽くなる感覚があったそう。それで、邪悪な気持ちが消えた状態で目覚めたらしい。これがなぜなのかは不思議なままだが、私は輝羽さんのおかげだと思う。輝羽さんの気絶術が私のお母さんに影響を与えたんだと私は思う。お母さんが、目覚めてから輝羽さんには会えてないけど、いつかまた会えたらこう言いたい。

         *

 私の役目は、誰かを助けること。「暖かい」と「新しい」を届けること。だから、私の役目は終わった。なっちゃんは、もう私がいなくても「暖かい」と「新しい」を感じることができる。そして、なっちゃんは誰かに「暖かい」と「新しい」を届けることができると私は信じている。絶対、なっちゃんならできる。私から会いに行くことはもうないけど、また会えるかな。


また会えたらこう言いたいな。


「一緒に話さない?」

「一緒に話しませんか?」



――あとがき――


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