第5話 作者は高校らへんから始めた方が良かったと後悔している様です。

「夜人きゅん・・・本当に行っちゃうの・・・?」


「母さん・・・俺、行くよ。この世界は狭すぎる。」


「夜人きゅん・・・」


「此処は確かに安全かもしれない・・・でも俺は此処ではない何処かへ行ってみたいんだっ!!」


「夜人きゅーーーーーーーーーん!!!」


ピコッ


ピコッ


「お母さんも夜人もそこまでよ。そろそろお姉ちゃんが迎えに来る。」


月姉さんが俺と母さんに対しピコピコハンマーで頭を叩きながらそう呆れたかの様に告げて来る

うん、確かにちょっとふざけ過ぎたかもね


時は流れて俺は3歳になった

それにより俺も保育園に行くことが出来る齢になったのだ


この世界でも保育園はある

俺が1歳児だった時には月姉さんは既に保育園に行っていた

だからこそ俺も保育園に行きたいと3歳になったタイミングで母さんと姉さん、麗さんに告げたのだが・・・その時は3人から猛反対を食らった


本来男の子は小学校までは保育園や幼稚園に行く事は無いらしい

理由は非常に単純、世間から狙われるリスクが非常に跳ね上がるのだ


その時に知ったのだが、俺はどうやら世間一般では居ない事になっているらしい

戸籍は勿論ある

だが姉さんも母さんも弟、息子が居るという事を周囲に伝えていないそうだ

その理由も先程に言ったリスクを跳ね上げない為だ


俺は3歳児で無力だ

悪意を持った人が近づいてきた場合、為す術なく悪意に晒されてしまうだろう

それに母さんや姉さんの努力を無に帰すのは忍びない

だから保育園に行くのを諦める・・・とはならなかった


俺はこの3年間、1度も外に出ていなかったのだ

世の男がどうかは知らないが、大人の人格のまま違う世界に転生された俺からすればこの3年間は窮屈でもあったのだ


寝て、起きて、テレビ見て、本読んで、麗さんと話して、姉さんと母さんと話して、ご飯を食べて、風呂に入って、そして寝る・・・

そんな毎日を過ごしていくと流石に飽きが来てしまう


だからこそ俺は3人を各個撃破する事にした

月姉さんには『保育園だともっと一杯遊べるよ』と、麗さんには『女性に対する免疫を上げる事が出来るし、外で遊んだほうが身体能力の向上も見込める』と、母さんには『行かせてくれないならお母さん嫌いになる』と・・・


すると効果は覿面だった様で月姉さんは『ウェヘヘヘヘ・・・』と天使がしていけない表情をしていたし、麗さんは暫し思案した後、何処かに電話を掛けて強引に許可をもぎ取ってくれたし、母さんは『嫌いにならないでぇぇぇーーーーーーー!!』とガチ泣きしながら許可してくれた


3人を説き伏せて撃破したのは良いけれど、そこからまた大変だった

男子が通うのだからと近隣保育園を市長さんとか県知事さんとかが視察して回ったらしい

そしてそこから教育委員会が確認し1つの保育園が無事に基準に達していたとの事だ。

ただ100点満点とはいかず、指摘された部分に防犯機能を新たに設置したとの事で申し訳ない気持ちが湧き出て来るが・・・それでも俺は保育園に行きたかったのだっ!!


そして今日から念願の保育園

姉さんも元居た保育園から俺と同じ保育園に転園する事になった




ーーピンポーンーー




「夜人様、月様、お待たせしました。」


そんな事を考えていると、インターホンが鳴り麗さんが入ってきた

普段の麗さんはメイド服っぽい服装だったのに今日の麗さんはビシッとした黒いスーツ姿で登場してきた


「麗お姉ちゃん、今日はいつもと違うね。」


「はい月様、今日から夜人様の送迎というミッションが付与されます為、いつでも戦闘できる恰好に変更しました。」


月姉さんの質問にそう答えて、俺の方をやたらチラチラと期待を込めた眼差しで見て来る


「う、うん。すごく似合っててカッコいいよ。」


そう言うと表情がパッと明るくなり、頭に音符マークが出てきた

いや、間違いなく麗さんはカッコいい

カッコいいのだが・・・3歳児にその言葉を強請って来る所はカッコ悪いと思う


そんな事を考えながら、家を出て麗さんの運転する車に乗り込んでいった・・・

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