3-3.当たり前ができるというのは凄いこと
煉瓦造りの洋館に
(凄いわ)
馬車を操る
もちろんツキミのように、人の形をしたものもいた。尻尾と足がキツネのままで歩く遊女。それを取り囲むのは
「
「他の
「ここでもお金を使えるのですか? 特別な
「神社や寺にある
「そんなことまでできるなんて……大変なお仕事をなさっているのですね」
「いや、
「それでもご立派だと思います。当たり前ができるというのは、凄いことです」
歩を進める
当然に力を扱えることは、どこか羨ましい。
(視線を感じる……)
「
「問題ない。君には……着物もかんざしも、よく似合っている」
「ありがとうございます。その、皆さんに見られている、と思ったものですから」
「人が珍しいのだろう。気にすることはない」
「そう、でしょうか。てっきり服がおかしいとばかり」
「安心してくれ、そんなことはない。……服と言えば、君は正礼装を持っているか?」
「
なるほど、と呟いて、
それから
「寄りたい場所ができた。ついてきてくれるだろうか」
「はい。お供します」
あちこちに点在する店の場所を、
しばらく繁華街を散策していたとき、不意に
「中に入ろう」
「いらっしゃい……おやおや、これは
「急に押しかけてすまない」
「こんにちは」
「おやおや。はい、こんにちは。
「まあ、そうだ。猫又、彼女に
「え? わたしに、でしょうか」
「持っていて損はないだろう。
「そうなのですか?」
「ああ。金のことは気にしなくて構わない。俺が支払う」
「ですが……」
淡々とした口調で言われ、店の中をそっと見てみた。色とりどりの
猫又が、にゃあと一つ高笑いした。
「
「は、はあ」
「猫又、お前の見立てならいいものができるだろう。一式頼んだ」
「はいよ、任せて下さいな。ささ、お嬢さん、こっちにどうぞ」
「あの、あの」
とくり、とまた
(息切れをしたのかしら)
慌てておもてを下に向け、柔らかい視線から逃げた。鼓動は収まらず、無表情のまま胸に手をやる。脈はやはり、早い。
「それじゃあこっちで選びましょうか。ね、お嬢さん」
「……わかりました」
「おぉい! 誰か、
結局、
途中で加賀男が柄の確認をする。あれこれとしているうちに、大体、真鶴は
必要なこととはいえ、彼にここまでしてもらうのが申し訳ない。お飾りの妻という立場だから、余計にそう感じる。
それでもなぜか顔はほてり、動悸はやむことを知らなかった。
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