掌編エッセイ・『#夏季休暇といえば?』

夢美瑠瑠

(これは、#夏季休暇と言えば? というアメブロのブログネタに今日投稿したものです)


 長いこと定職についていなくて、NEET生活、~Non in education and for employment training ~なので、夏季休暇という言葉と無縁な生活が人生の半分に及んできている。まあ片輪物の生活を余儀なくされていて、ほぼないないづくしである。般若心経は、無眼耳鼻舌身意、とか「無」をやたら強調するお経だが、断捨離とかミニマリストとか、最近はモノやカネにこだわらない精神的な部分を重視するという?新しい風潮もあって、ないないづくしのよさとか新しさもある気もする。全人類がほぼないないづくしになれば確かに自然環境や生態系、温暖化などの問題は劇的に改善するという気もする。産業革命というものがなければ生活はかなり原始的なままだろうが、その他のもろもろの現代社会の懸案問題は生じていないのだろう。文明は諸刃の剣、そのことは原子力とかに限ったことではない。人類にはしかし叡智があって、時間の逆戻りはできなくても、過ちに気づいて事態を改善していくことはできるはずだ。「君子は豹変す」、「改めるに如くあらず」。昔からある金言である。




「夏季休暇」と言えば学生時代の夏休みというのは途方もなく長くて楽しい感じのものだった。こういう夏のバカンスが楽しいというイメージは万国共通らしくて、ヘッセの「車輪の下」にも、隣の町の神学校に優秀な成績で入学した主人公の少年の最初の夏休みの描写があって、その最初が「これでこそ夏休みだ!」という文句だった。中学校の頃の夏休みに借りて読んだのでよく覚えている。この主人公はわりと田舎で、孤独な感じの生活をしていて、 そういうところが自分と重なったりして、自分自身にも一種青春期の記念碑的な思い出深い小説です。井上靖という作家も育った境遇が似ていたりして親近感を持ちました。僕はこの作家から名前の字もいただいたらしい。「しろばんば」、「夏草冬濤」、「北の海」、「あすなろ物語」などの自伝的な作品は愛読しました。どれも瑞々しくて素晴らしい青春文学と思う。


 こういう教養小説?ビルドゥンクスロマン?の利点は、主人公に完全に感情移入して、主観の視点を共有するのが、なんというのか自己形成とか自我の確立とかそういうことの手助けになるのではないか?こうやってこのえらい作家もいろんなことを考えて経験して、そうして大人になっていったのか。そういうことを実地に追体験できる。人生の先輩からのかけがえのない金言、贈り物、アドバイスを口移しで?受け取ることができる。


 すべからく文学とか芸術というものにはこういうなんというか人間の本質的な部分のもっとも肝心でそうして人類を人類たらしめる所以の秘密、真実?そういう何か簡単に言い表せない不思議なエッセンスに迫っているもので、それゆえに尊ばれて、尊ばれるべきものとみなされるのではないか?トートロジーめくが、時代が変わってもそういう何か不朽のもの?を追求するのが例えば文学という営為の本然だと思う…



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掌編エッセイ・『#夏季休暇といえば?』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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