Ⅰ グッバイ、マイ・ディア・リベンジャー

<台本概要>

【台本名】

 フラグメント・ストーリーズ:アンドラスタ×ファンタジア 第1弾

 『グッバイ、マイ・ディア・リベンジャー』


【作品情報】

 ジャンル:異世界ファンタジー、戦争モノ、百合

 男女比 男:女:不問=2:2:0(総勢:4名)

 上演時間 40~45分


<アンドラアスタ×ファンタジアについて>

下記リンク先を参照ください

https://kakuyomu.jp/my/works/16817330661664200401/episodes/16817330661664224459


<登場人物>

ジェーン・ドゥ Jane Do

 性別:女性、年齢:17歳(士官学校在籍時代)→26歳(少佐時代)、

 台本表記:ジェーン

  今回の物語の主人公しゅじんこう

  【機鋼きこう国家】エリミネンス=グローリア帝国の士官学校しかんがっこう魔導機体まどうアーマー操縦士

  課程に在籍している。

  両親に捨てられ、スラム街で生活していた際に魔力を持っていた事で

  帝国軍に徴兵ちょうへいされた。

  ささやかな幸せを何よりも大事にしている。


 アラン・スミシー Alan Smithee

  性別:男性、年齢:30歳、台本表記:アラン

   なぞの組織【亡国機関ぼうこくきかん】に所属する元帝国軍人。

   『戦争屋せんそうや』を自称じしょうし、「戦いの中で生きる意味を知る」を信条しんじょうとする。

   飄々ひょうひょうとした雰囲気ふんいきから軽薄けいはくな印象を受けるが、頭の回転が早く、

   多くの修羅場しゅらばを潜り抜けている。


 メアリー・スゥ Mary Sue

  性別:女性、年齢:17歳、台本表記:メアリー

   ジェーンの唯一ゆいいつの親友で、同じ士官学校しかんがっこう在籍ざいせきしている。

   明るくて親しみやすい性格をしているが、根はかなりの臆病おくびょうである。


 スコット・J・クロフォード Scott Johnson Crawford

  性別:男性、年齢:17歳、台本表記:スコット

   ジェーンと同じ士官学校しかんがっこう在籍ざいせきしている名門貴族家の長男。

   彼女のせいで成績が万年2位のため、彼女をライバル視している。

   後にジェーンの部下かつ右腕的存在となる。


<用語説明>

アンドラスタ大陸

 地母神じぼしん・アンドラスタと子たる5柱の神によって創られた大陸。

 【魔導まどう国家】ロゼッタ大公国たいこうこく、【機鋼きこう国家】エリミネンス=グローリア

 帝国、【龍神りゅうじん国家】龍櫻國りゅうおうこく、【獣人じゅうじん国家】ユグドラシル誓約者同盟国せいやくしゃどうめいこく

 【天仕てんし国家】グラディス聖教国せいきょうこくの5つの大国と小さな国で形成されている。


五大国(ごたいこく)

 アンドラスタ大陸にある5つの大国を指し、他の国々と異なり大陸を創った

 地母神じぼしんの子たる神たちの恩恵おんけいを強く受けている。

 【魔導まどう国家】ロゼッタ大公国たいこうこく、【機鋼きこう国家】エリミネンス=グローリア

 帝国、【龍神りゅうじん国家】龍櫻國りゅうおうこく、【獣人じゅうじん国家】ユグドラシル誓約者同盟国せいやくしゃどうめいこく

 【天仕てんし国家】グラディス聖教国せいきょうこく五大国ごたいこくかぞえられている。


エリミネンス=グローリア帝国

 【機神きしん】エリミネンスとグローリア王家と共に創生そうせいされた『機械』と

 『軍事』の国で、通称【機鋼きこう国家】。

 軍事力については大陸で1,2位を争い、他の国と異なり魔法を使える者

 は存在せず、また厳しい気候から資源確保が難しいが科学技術などの文明が

 他国よりも進んでいる。

 しかし、資源確保が困難であることから慢性的まんせいてき貧困ひんこんが問題となっている。


魔導機体(まどうアーマー)

 エリミネンス=グローリア帝国で開発された機械兵器であり、操縦者そうじゅうしゃ

 魔力まりょくが動力源となっている。

 本来であれば帝国民は魔力を持たないが、時稀ときまれに魔力を持つ者が存在し、

 機体の背中に附属ふぞくされた魔力増幅器まりょくブースターによって、操縦者の魔力まりょく増幅ぞうふくし、

 機体に安定とした魔力を供給きょうきゅうすることを可能にした。


<配役表テンプレート>

台本名:『グッバイ、マイ・ディア・リベンジャー』

URL https://kakuyomu.jp/works/16817330661664200401/episodes/16817330661664595520


 ジェーン・ドゥ:

 アラン・スミシー:

 メアリー・スゥ/女性教官/傭兵A:

 スコット・クロフォード/男性教官/傭兵B:


----------------キリトリ線----------------


※台詞検索にお役立てください。

☆:ジェーン(♀)

〇:アラン(♂)

△:メアリー、女性教官、傭兵A(♀)

□:スコット、男性教官、傭兵B(♂)



<台本本編>

【アバンタイトル】


□男性教官:我々が生きる世界では魔法まほうは存在し、使うことが出来るのは

      【魔導まどう国家】ロゼッタ大公国たいこうこくの者たちが多くをめる。

      また、公国こうこくにはおとるが他の国でも使用できる者が一定数いっていすう

      存在する。

      だが……我々、エリミネンス=グローリア帝国民は違う!!

      大いなる【機神きしん】エリミネンスの加護かごを受けた我々は、

      高度の文明ぶんめい代償だいしょうとして、魔法まほうを使用する事が出来ない!


〇アランN:徐々じょじょ興奮こうふんした口調くちょう声高こわだかになる教官きょうかん

      ひとりの士官候補生しかんこうほせい苦虫にがむしつぶした様な表情ひょうじょうかべていた。

      ――その候補生こうほせいの名前は、ジェーン・ドゥ。


☆ジェーンM:相変あいかわらず、この教官きょうかん長々ながながとつまらない話をするもんだ。


□男性教官:公国こうこくの魔法開発はいちじるしい発展をげ、その脅威きょうい

      拡大かくだいしつつある……だが、我々もおくれをとるわけにはいかない!

      そこで対抗たいこうするために産み出された機甲兵器きこうへいき

      ――その名は、【魔導機体まどうアーマー】!!

      これは帝国民には本来持ち合わせていない魔力を動力源どうりょくげん

      としている。


☆ジェーンM:本当にこの教官きょうかん講義こうぎは苦手だ……お国自慢じまんが始まると、

       耳障みみざわりな大声を出す。

       むかし、スラム街できた下品げひん大人おとなたちの怒鳴どなり声と一緒いっしょ

       ……だから、苦手だ。


□男性教官:技術開発局ぎじゅつかいはつきょくあらたに開発した機体の背中にそなえ付けられた

      魔力増幅器まりょくブースター貴官きかんらの微弱びじゃく魔力まりょく増幅ぞうふくさせ、安定した

      魔力まりょく供給きょうきゅうを可能にした!!

      ……悲しきかな、おろか者はどこにでも一定数いっていすうは存在する。

      そして、奴らは貴官きかんらを『異端いたん』と呼ぶ。

      そんなのは戯言ざれごとだ! 好き勝手に言わせておけ!!

      なぜなら――


☆ジェーンM:――「貴官きかんらは選ばれたのだ!!」

       本当に……ウンザリだ……


〇アランN:此処ここはアンドラスタ大陸の東に位置する『機械』と『軍事』の国。

     【機鋼きこう国家】エリミネンス=グローリア帝国士官学校しかんがっこう魔導機体まどうアーマー

      操縦士養成課程――通称つうしょう、『アズラエル飛行隊』。


☆ジェーン:『グッバイ、マイ・ディア・リベンジャー』

      (※タイトルコール)



【シーン01】


〇アランN:士官候補生しかんこうほせい専用訓練魔導機体まどうアーマー【アークエンジェル】

      のコクピット内。

      操縦席に座っていたのは、ジェーン・ドゥ士官候補生しかんこうほせい


△女性教官:ジェーン・ドゥ候補生こうほせい準備じゅんびはいいか?


☆ジェーン:はい! いつでもいけます!


△女性教官:よろしい、それでは始めろ。


☆ジェーン:了解しました!


〇アランN:ジェーンは目を閉じ、深呼吸を1回する。


☆ジェーン:セット・オン!

      魔力同期まりょくどうきを開始――シンクロ率、12、29、55、78、89

      ……100%、コンプリート!

      魔力増幅器まりょくブースターを起動、供給きょうきゅうフェーズへと移行する。

      接続せつぞくを開始……うっ!


△女性教官:どうした?


☆ジェーン:大丈夫です、何でもありません!


☆ジェーンM:やっぱり、いつまでたっても慣れないな……

       自分の身体から何かがられていく感覚が気持ち悪い……


☆ジェーン:――魔力供給完了、起動します!

      士官候補生しかんこうほせい、ジェーン・ドゥ!

      訓練型魔導機体まどうアーマー【アークエンジェル】、発進!!


(間)


☆ジェーン:ふぅ……今日も無事に終わったぁ~

      さて、自由時間はまだあるし……宿舎しゅくしゃもどる前にマーケット

      でもろうかな?


△メアリー:おーい!


☆ジェーン:んっ?


△メアリー:ここにいたのね、ジェーン! お疲れ様!


☆ジェーン:うん、お疲れ。

      そっちのはん訓練くんれんは終わったの?


△メアリー:ちょうどさっきね。

      そういえば聞いたよ~

      またスコアを更新こうしんしたんだって?


☆ジェーン:たまたまだよ、運が良かっただけ。


△メアリー:相変わらず謙遜けんそんぶるなぁ~


☆ジェーン:別にそんなんじゃないよ……


△メアリー:てか、たまたまと言うけどさ。

      士官学校しかんがっこう創設そうせつされて以来いらいの最高記録だよ?

      その時点じてんすごすぎでしょ! たまには調子ちょうしに乗っちゃいなよ!

      なんていうか……「私、優秀ゆうしゅうですから当然」、みたいなさ!!


☆ジェーン:嫌だよ。

      それに調子ちょうしに乗ると、万年まんねん2位の貴族様がイチャもんつけてくるでしょ?


△メアリー:万年まんねん2位の貴族様……?

      あぁ! スコットのことね! あの天然パーマ!!


□スコット:天然パーマで悪かったな。


△メアリー:うひゃう! あれれ……いつから、いらっしゃったのですか?


□スコット:ついさっきだよ。


△メアリー:失礼しつれいいたしました!!


☆ジェーン:って、ちょっと……後ろに隠れるのやめてよ。


△メアリー:だって、一応、貴族様だし……私、一般庶民しょみんだし……


☆ジェーン:そういう時にそれを使う?


□スコット:そのわりには色々と俺の事をバカにしていたな、お前。


△メアリー:えーっと、なんのことでしょうか?


□スコット:「あの天然パーマ!!」というのは、一体どういう真意しんい

      で言ったんだ?


△メアリー:さあ、どういうことなんでしょうね~


□スコット:全くとぼけてやがって……


☆ジェーン:それで貴族様が庶民しょみんの私たちに一体何の用ですか?

      どうやら、いつもの取り巻き達がいないようだけど……

      私たち、マーケットに行きたいんだけど。


□スコット:ふんっ……相変わらず、生意気なまいきなヤツだ。


☆ジェーン:すいませんね、私は貴方あなたと違って貧民窟ひんみんくつの出身なもんですから。

      貴族様への礼儀作法れいぎさほうは知らないので、ね!


〇アランN:そう言って、ジェーンは立ちはだかった士官候補生しかんこうほせいの青年、

      スコットの股間こかんに思いっきりりを入れた。


□スコット:があっ!!


☆ジェーン:行くよ、メアリー!


△メアリー:えっ……う、うん!


□スコット:おっ……おい……! 覚えてろよ!! ジェーン!!


〇アランN:ジェーンがメアリーの手を引いて一目散いちもくさんへとその場から去る。

      スコットは何かをさけんでいたが、二人は無視し続けて走る。

      そして――


☆ジェーン:ふぅ……ここまで逃げたら十分でしょ。


△メアリー:もう……ジェーンったら……全力で、走らないでよ……

      訓練くんれん、終わったばかりで……疲れているんだから……


☆ジェーン:あっ、ごめん。


△メアリー:そう言って、息一つ上がっていないのは流石さすがの体力オバケね。

      てか、大丈夫なの? あんなことをしちゃって……


☆ジェーン:大丈夫だよ。

      アイツはプライドの塊だから、情けなくて今回の事を教官

      にチクらないでしょ。

      それに、事あるごとに「孤児こじくせ生意気なまいきだ!」って言ってくる

      からめんどい。

      極力きょくりょく面倒めんどうごとには関わりたくないの。


△メアリー:その気持ちはわかるけどさぁ……

      でも、スコットだけじゃなくて他のみんなにも壁を

      作りすぎだよ。

      そのせいで、みんな、ジェーンのことを誤解ごかいしている!


☆ジェーン:別にいいよ、そんなこと。

      好きなように言わせておけばいい。


△メアリー:でも!


☆ジェーン:(※1回溜息をついた後に)あのね、メアリー。


△メアリー:な、なに?


☆ジェーン:私は十分幸せだよ。

      親に捨てられた孤児こじの私が、今ではこの国を守る軍人

      になっている。

      血がにじむようなつら訓練くんれんが多いけど、明日あす衣食住いしょくじゅう

      心配する必要もない。

      それにさ――


△メアリー:それに?


☆ジェーン:ひとりのかけがえのない親友がいるしね。

      目の前にいる、ひとりの世話焼きさんが、ね。


△メアリー:それって……もう! うれしい事を言ってくれるじゃん!!

      このこの~!


☆ジェーン:いてて……痛いって。


△メアリー:あっ、ごめんごめん。


☆ジェーン:ガサツなところも相変わらずだ。


△メアリー:うるせいやい!


☆ジェーンN:そうして私たちは笑い合う。

       これはいつもと変わらない毎日。


△メアリー:ねぇ、ジェーン。


☆ジェーン:なに?


△メアリー:一緒に、この国を守っていこうね。


☆ジェーン:うん。


△メアリー:そして、ちゃんと寿命じゅみょうまっとうするの!

      よぼよぼのおばあちゃんになるまで!!


☆ジェーン:うん……そうだね。


☆ジェーンN:私にとってこの国を守ることは〝おまけ〟でしかない。

       大事なのは、目の前にいる太陽の様な笑顔を浮かべている彼女

       と過ごす何気なにげない日々。

       ……だからこそ信じていた、これがずっと続くことが。

       ――けど、終わりは突然とつぜんやってきた。


△メアリー:あれ?


☆ジェーン:どうしたの?


△メアリー:どうして、魔導機体まどうアーマーがいるんだろう。


☆ジェーン:本当だ……あの機体、見たことない……どこの部隊だろ――


□男性教官:おまえたち、何をしている!!


△メアリー:えっ?


☆ジェーン:教官きょうかん


□男性教官:何を突っ立っているんだ! 早く逃げ――


〇アランN:それは一瞬の出来事だった。

      じゅう連射音れんしゃおんが聴こえたのと同時に、彼女たちに駆け寄る男

      の身体があなだらけになる。

      士官候補生しかんこうほせいあかしであるネイビーブルーの彼女たち軍服ぐんぷくに、

      彼の返り血で黒いシミが出来た。


△メアリー:なに、これ?


☆ジェーン:これは……敵襲てきしゅうのサイレン! メアリー!!


△メアリー:あっ……あっ……い、いやああああああああああ!


☆ジェーン:っつ! 逃げよう……逃げよう!!


〇アランN:泣きさけぶメアリーの手を引き、ジェーンたちは逃げ出した。

      市街地しがいちはサイレンの音、爆発音ばくはつおん、そして人々の怒号どごうさけ

      がこだまする。

      所属不明の魔導機体まどうアーマーは4体に増え、轟音ごうおんと共に縦横無尽じゅうおうむじん

      旋回せんかいする。

      機体に備え付けられた機関銃きかんじゅうから無数むすうの小さな銃弾じゅうだんが放たれ、

      老若男女ろうにゃくなんにょ問わず虐殺ぎゃくさつが行われていた。

      破壊と虐殺ぎゃくさつり返され、街を警備けいびしていた帝国兵が応戦おうせんするも

      圧倒的あっとうてきな力を前に、すべも無く次々と殺されていく。


△メアリー:いやだよぉ……こんなの、こわいよぉ……


☆ジェーン:大丈夫! 大丈夫だから!!


☆ジェーンM:とにかく、どこか安全な場所に……!


△メアリー:ううっ……っつ! ジェーン!!


☆ジェーン:どうしたの、メア……えっ?


〇アランN:ジェーンが振り向こうとした矢先やさき、メアリーは彼女を

      突き飛ばした。


☆ジェーン:いったぁ……メアリー、一体、何のつもり――


△メアリー:ごめんね……ジェーン……


☆ジェーン:えっ?


〇アランN:先程さきほどまで赤子あかごのように泣いていたメアリーの顔は、

      どこか申し訳なさそうな笑顔だった。


△メアリー:私……約束、破っちゃった……


〇アランN:その刹那せつな――巨大きょだい閃光せんこうがジェーンの目の前をよぎる。

      〝メアリーがいたはず〟の場所には、ちりひとつ無かった。


☆ジェーン:メアリー? えっ、どこに……行ったの……?

      うそ、うそだ……あっ、あっ……


□スコット:おい! なにをしている!!


☆ジェーン:スコット……


□スコット:なに座りんでいるんだ?!

      って、おい、アイツは?


☆ジェーン:メアリーが……メアリーが……


□スコット:ちっ……状況じょうきょうはわかった。

      行くぞ!


☆ジェーン:嫌よ! メアリーが!!


□スコット:いい加減にしろ!!

      ……泣くのも、死者をとむらうのも戦いが終わった後にしろ。


☆ジェーン:あっ……あっ……


□スコット:行くぞ。


〇アランN:スコットがジェーンの手を強引ごういんに引いていく。

      ジェーンは顔をうつむいているが、足を止めなかった。

      いや、止める訳には行かなったのだ。



【シーン02】


〇アランN:士官学校しかんがっこう構内こうないにある魔導機体まどうアーマー保管庫。

      そこにはジェーンとスコットを合わせた士官候補生しかんこうほせいが4人と、

      女性教官の計5人がいた。

      士官学校しかんがっこうの生き残りは彼らしかいなかった。


△女性教官:生き残った候補生こうほせいは君たち、4人だけか……


□スコット:教官きょうかん! 一体、何が起きたんですか?!


△女性教官:それは――


☆ジェーン:魔導機体まどうアーマー仕業しわざ、ですよね?


□スコット:お前、ついに頭がいかれたのか!

      そんなバカなことが……冗談じょうだんを言うなら

      もう少しマトモなことを言えよ!!


☆ジェーン:貴族様の足りない頭だと目の前の状況じょうきょうを理解できないのかしら?


□スコット:なんだと? もう一度行ってみろよ。

      孤児こじくせ生意気なまいきな事を言っているんじゃねえ!!


☆ジェーン:もう一回、言ってあげる!

      アンタの足りない頭だと目の前の状況じょうきょうを理解できないって

      言ってるのよ!!


□スコット:こんの!

      さっきまでメアリーが死んで、ガキみたいにメソメソしていた

      ヤツの発言はつげんとは思えないな!


☆ジェーン:彼女の名前を……気安く出すなぁ!!


△女性教官:いい加減にしろ、お前たち!

      状況じょうきょうを理解できていないのは双方そうほうともにだ!

      今はケンカをしている場合じゃないだろ!!


☆ジェーン/□スコット:……申し訳ありません。


△女性教官:ただ、ジェーン・ドゥ候補生こうほせいの言う通りだ。

      今回の市街地爆撃しがいちばくげきについては、所属不明の

      魔導機体まどうアーマーによるものだ。


□スコット:所属不明って……帝国以外にも魔導機体まどうアーマー所持しょじしている

      ところが……?


△女性教官:にわかには信じがたいが……現実はその事実を示している。


☆ジェーン:くっ!


△女性教官:どこに行くつもりだ、ドゥ候補生こうほせい


☆ジェーン:出撃しゅつげきします! 私があいつらを倒します!


□スコット:待て!


☆ジェーン:離してよ!


□スコット:離せねえよ。

      いくらお前が首席しゅせきでも、それは実戦経験での評価じゃない!

      きっとてきは俺たちよりも、いや、俺たちなんかが立ち向かえる

      相手じゃない……犬死いぬじにするだけだ。


☆ジェーン:……アンタにしてはよくわかっているじゃない。


□スコット:なんだと……ぐっ!


<ジェーンがスコットの胸ぐらをつかむ>


□スコット:なにをする……


☆ジェーン:スコット、アンタ、さっきも言っていたよね?

      事あるごとに「孤児こじくせ生意気なまいきだ」って。


□スコット:それが一体、今、言う必要があることなのかよ!


☆ジェーン:だったらわかるでしょ!!

      アンタは生まれてきたことを祝福しゅくふくされ、家族に大切された!!

      それと違って、私は……私は生まれてきたことを忌避きひされ、家族

      に虐待ぎゃくたいされた挙句あげくに、最後は捨てられた。

      ……アンタみたいに元から〝持っている〟人間なんかが理解

      出来るはずもない!

      何も〝持っていない〟人間の気持ちなんか!

      大切にしたかった唯一ゆいいつの存在でさえ奪われた者の

      気持ちなんか!!


□スコット:ぐっ……


〇アランN:言い返すことが出来なくなったスコットの胸ぐらを離し、

      ジェーンはどこかへと向かう。


△女性教官:ドゥ候補生こうほせい、待ちなさい! ドゥ候補生こうほせい!!


〇アランN:女性教官はさけぶも、ジェーンの耳には入らない。

      彼女を動かしているのは、激しく燃え上がる〝復讐ふくしゅう〟の

      ほむらなのだから。



【シーン03】


☆ジェーン:はぁ……はぁ……


〇アランN:士官学校しかんがっこう内の長い廊下ろうかをジェーンはひたすらと走り続ける。

      やがて、ある場所にたどり着いた。


☆ジェーン:あった……試作機【ドミニオンズ】……。


〇アランN:彼女が見つけた魔導機体まどうアーマーは唯一の生き残り。

      他の機体は全て破壊されていた。

      急いで【ドミニオンズ】のコクピット内に入り、操縦席に座る。


☆ジェーン:うん、動きそう……(※大きな深呼吸を1回した後に)セット・オン!

      魔力同期を開始――シンクロ率、2、5,8、19、37――


☆ジェーンM:シンクロ率が悪い……ううん、今は集中するんだ、集中……!


☆ジェーン:――55、57、62


☆ジェーンM:まずい、このままじゃ……お願い! 私に力を……!!


☆ジェーン:――66、81、96、100%!

      魔力増幅器まりょくブースターを起動! 供給きょうきゅうフェーズへ移行する!!

      接続を開始!!

      ――魔力供給きょうきゅう完了!

      士官候補生しかんこうほせい、ジェーン・ドゥ、実践特務型じっせんとくむがた魔導機体まどうアーマー

     【ドミニオンズ】、発進!!



【シーン04】


<燃え盛る市街地を見下ろす様に、上空に3機の魔導機体がいた。>


〇アラン:総員そういん、報告をしろ。


△傭兵A:こちら、アルファ。

     目標地域の兵士殲滅せんめつ、完了しました。


□傭兵B:こちら、ベータ。

     市街地に設置されていた砲台ほうだいおよび警備部隊の壊滅かいめつを報告します。


〇アラン:いいねぇ、おまえら! 良くやったァ!!

     流石さすが、俺の自慢じまんの部下たちだ!!

     さあ! さあ! 続けて俺に良い報告を聞かせてくれ!!

     最後、ガンマ、報告を……どうした?

     応答しろ、おーい? おっかしいなぁ~

     おい、ガンマ、早く報告しろ~


△傭兵A:なっ……隊長!


〇アラン:どうした?


△傭兵A:魔導機体まどうアーマーが1機、近付いてきます!


〇アラン:ガンマの機体か?


△傭兵A:……いえ、ガンマの機体ではありません!!


〇アラン:へぇ……それは、それは……


□傭兵B:馬鹿な!? 帝国の機甲部隊きこうぶたいはまだ到着していないはずだ!!

     まさか、もうもどってきたのか?


〇アラン:いや、違うな。

     恐らくは〝ひよっこ部隊〟の生き残りだろうなぁ……

     こりゃあ、逸材いつざいの予感がする……いいねぇ、実にいいなァ!


□傭兵B:隊長?


〇アラン:予想外のことが当たり前のように起こる!

     これだから、戦場は大好きだァ……あぁ、楽しくなってきたァ!!



【シーン05】


☆ジェーン:ハァ……ハァ……


☆ジェーンN:身体のふるえが止まらない。

       さっき私は戦ったんだ、「命をけた」本当の闘いを……


☆ジェーン:うっ!


☆ジェーンN:不快感におそわれ、もよおす。

       戦いの結果は――私の勝利だった。

       でも、今は、勝利の喜びよりもヒトを殺したことへの動揺どうよう

       が大きかった。

       軍人となった以上、いつかは覚悟かくごしていた。

       けれど……どこか他人事たにんごとに感じていた自分がいた。

       自分の覚悟かくご中途半端ちゅうとはんぱであったのを痛感する。


☆ジェーン:それでも……やらなきゃ……あいつらを殺さなきゃ……

      私からメアリーを、全てを奪ったアイツらを!!

      ――見つけた!!


〇アラン:さあ、お手並てな拝見はいけんといこうか。

     アルファ、ベータ――撃墜げきついしろ。

     ガンマへのとむら合戦がっせんだ、手加減てかげんはいらない。


△傭兵A/□傭兵B:了解!


☆ジェーンM:敵は3機……っつ!

       前方の2機が動き始めた……!


△傭兵A:ベータ、私が迎撃げいげきします! あなたは援護要請えんごようせいするまで様子見を!


□傭兵B:おいおい、最初から全力かよ……わかった。


△傭兵A:火のエレメント、充填じゅうてん――インフェルノ・ショット!!


☆ジェーン:火炎放射! 魔導防壁まどうぼうへきシールド、展開!

      ぐっ……強い魔力……!!


△傭兵A:燃えろォ!!


☆ジェーン:防壁ぼうへきシールドにヒビが……まずい、このままじゃ……!


□傭兵B:(※口笛を1回吹いて)アルファのヤツ、容赦ようしゃなさすぎだろ。

     これなら、俺が手を出さずに済みそうだな。かわいそうに。


〇アラン:ふむ……押されているな。

     威勢いせいが良かっただけか?

    

☆ジェーン:私は……


〇アラン:んっ? 魔力計測器まりょくけいそくきが上昇している?


☆ジェーン:私はここで……


〇アラン:おいおい……こいつはビックリだ……


☆ジェーン:負けるわけには……いかないんだああああああああ!


〇アラン:……ククッ、楽しい楽しいパーティーの始まりだ。


☆ジェーン:えっ、シンクロ率の更新こうしん……?

      103、115、146――これって!


〇アラン:来るぞ、来るぞォ!!

     ベータ! 早く攻撃を!!


□傭兵B:しかし、アルファの攻撃だけでも十分か――


〇アラン:馬鹿野郎が……お前らには感じねぇのか!

     この魔力の増幅ぞうふくを!!


☆ジェーン:――178、189、200%!


〇アラン:奴は――〝臨界点りんかいてん〟を突破とっぱする!!


☆ジェーン:邪魔じゃまを……するなああああああああああ!!


△傭兵A:えっ、炎を打ち消して……きゃあああああああ!


□傭兵B:ベータの機体を魔導まどうブレードで真っ二つに……


〇アラン:ちっ!


□傭兵B:貴様あああああ! 氷のエレメント充填じゅうてん、ブリザード――


☆ジェーン:遅い。


□傭兵B:なっ……背後はいごに……! や、やめてくれ……命だけは――


☆ジェーン:そこをどけええええ!!


□傭兵B:ぎゃああああああああ!!


☆ジェーン:ハァ……ハァ……


〇アラン:(※拍手しながら)大したものだな、ひよこちゃん。

      俺の部下を3人倒すだけじゃなく、魔導機体まどうアーマー限界突破げんかいとっぱ

      ――〝臨界点りんかいてん〟に到達とうたつするとはな。

      ここで殺すにはしい人材だ。

      どうだい? 軍を辞めて、俺たちの元に来ない――


☆ジェーン:あんただけは……


〇アラン:んっ?


☆ジェーン:あんただけは絶対に許さない!!


〇アラン:あらら、交渉決裂こうしょうけつれつか。

     しょうがない……なら、そのラブコールを受け取ってやるよ!

     ひよこちゃん、いや――士官候補生しかんこうほせい、名前と機体名を言え!!

     ――学校で教えてもらっただろ?

     戦う前のお作法さほうというやつだ!


☆ジェーン:――エリミネンス=グローリア帝国軍士官学校しかんがっこう

      ジェーン・ドゥ士官候補生しかんこうほせい

      機体名は【ドミニオンズ】!!


〇アラン:いい名前だ。

     【亡国機関ぼうこくきかん】……いや、元エリミネンス=グローリア帝国軍

     機甲きこう部隊、第七独立分遣隊ぶんけんたい『ヨハンナ・アングリークス』隊長、

     アラン・スミシー!

     機体名は【スローンズ】!!

     さあ、始めよう、闘争とうそうを! さあ、見せてくれ、お前の本能ほんのうを!!


☆ジェーン:ぐっ!


〇アラン:いいねぇ、素早すばやい反応だ!

     ブレードで切りきざむつもりだったんだけどさァ!!


☆ジェーン:な、める、なあああああああああ!!


〇アラン:おっと! 伝わるよ、君のいかりがさァ!!

     俺に対するにくしみがさァ!!


☆ジェーン:だまれ! 必ず、私がお前を……ハァ!!


〇アラン:おいおい、魔導まどうブレードの扱いがなっていないぜ?

     しっかりしてくれよ、ひよこさんヨォ!

     そんなもんじゃないだろ、士官学校しかんがっこう仕込しこみの機甲剣術きこうけんじゅつはさぁ!!


☆ジェーン:しまった! バランスをくずされて――


〇アラン:高魔力装填こうまりょくそうてん! 四連発射よんれんはっしゃ、テトラ・バースト!!


☆ジェーン:魔導防壁まどうシールド、フル展開!!


☆ジェーンM:大型の高魔力弾こうまりょくだんが4発も……あぁ、きっと防げない……

       私、ここで死んじゃうのかな?



<シーン06>


<士官学校の教室、ジェーンは黄昏の表情で教室の窓から外を見ていた。>


△メアリー:ねぇ!


☆ジェーン:…………。


△メアリー:ねぇ!!


☆ジェーン:んっ?


△メアリー:何回も呼んだんですけどー!


☆ジェーン:ボーっとしていた……てか、何の用?


△メアリー:あなた、ジェーン・ドゥ候補生こうほせいでしょ?


☆ジェーン:そうだけど……だれ


△メアリー:えっ!? 数少ない同期を覚えていないってひどくない?


☆ジェーン:ごめん……他人の名前を覚えるのは昔から得意じゃないんだ。


△メアリー:もう! 筆記試験で全科目満点とる記憶力を持っているのに!!

      ……いい? ちゃんと覚えてよね?

      私の名前は、メアリー・スゥ、あなたと同じクラスメイト

      のメアリー・スゥ! リピート・アフター・ミー!!


☆ジェーン:メ、メアリー・スゥ……思い出した、ななかいに座っている……


△メアリー:もう、わすれないでね!


☆ジェーン:それで……メアリー、用ってなに?


△メアリー:あなたと友達になりたいの!


☆ジェーン:はっ?


△メアリー:聞こえなかった? それじゃあ、もう一回言うね。

      あなたとお友達になりたいの!


(間)


☆ジェーン:はっ! ゆ、夢……だったんだ……

      空が、見える……生きているんだ、私……いっつ!


〇アラン:よお、ひよこちゃん。


☆ジェーン:貴様は……ぐっ!


〇アラン:動かない方がいいぜ?

     全力ではないが、俺の高魔力弾まりょくだんをくらったんだ。

     しばらくは、まともに動くことは出来ないさ。

     お前も、機体も、な。


☆ジェーン:それでも、私は……ぐあっ!!


〇アラン:だーかーらー、やめとけって言っただろ?

     奇跡的きせきてき原型げんけいとどめているが、

     全身のほねにヒビが入っているだろうさ。

     動くだけで激痛が走るぞ?

     自分を大切にしろ、今のお前さんでは俺を殺すことは出来ない。


☆ジェーン:ど、どこに……行く……!


〇アラン:帰るんだよ、目標はすでに達成した。

     おまえさんとの戦いはいわばオマケみたいなもんさ。

     最初はどうなるかと思ったが……可能性のかたまりだ。

     とりあえず生かしておくことにする。

     早々そうそうに殺しちまったら……俺の人生が退屈たいくつになるからな。

     だから待ってるよ、強くなって俺を殺しに来てくれ

     ……あっ、そうだ!

     ひよこちゃん、君の名前をもう一度教えてくれないか?


☆ジェーン:――ジェーン・ドゥだ。

      覚えておけ、貴様を殺す人間の名を!!


〇アラン:ジェーン・ドゥ、か……なるほど、なるほど、良い名前だ。

     俺も改めて自己紹介をしよう。

     アラン・スミシーだ。

     かつてはお前と同じ帝国と【機神きしん】を愛する軍人だったが、

     今は映画を愛し、神々をにく反逆はんぎゃくだ。

     ……俺たちは似た者同士なのかもしれないな。

     〝名無し〟同士、殺し合う日を楽しみにしているよ。

     そういえば、昔見たとある映画に今の状況じょうきょうがソックリだ。

     タイトルは……なんだっけか?

     最近は、物忘れがひどくてなぁ

     ……シナリオは三文小説さんもんしょうせつ並みだったが、ラストシーンが

     格別かくべつだったのは覚えているんだけどなぁ……まあ、いいや。

     それじゃあ、本当にサヨナラだ。


☆ジェーンN:そう言って男は立ち去る。

       むき出しになった機体の操縦席から、私は天をあおいだ。

       茜色あかねいろの空がくもり空へと一変いっぺんし、降りしきる雨粒あまつぶ

       私の身体を打ちつける。


☆ジェーン:くっそ……くっそ……!!


☆ジェーンN:くやしさでなみだが止まらなかった。

       自分の無力さを実感した、軍人として舌をみ切って

       死にたいぐらいのはずかしめを受けた。

       それでも――


☆ジェーン:まだだ……死ぬのならば、あの男を――



<シーン07>


☆ジェーンN:数年の時が過ぎた――


△帝国兵:こちら、機体【プリンシパリティーズ】。

     準備が出来ました、少佐しょうさ


□スコット:こちら、機体【アルター】。

      目標地点を補足ほそく……問題ない。


☆ジェーン:そうか……総員そういんぐ!

      本作戦は、ロゼッタ大公国たいこうこく領、城塞都市じょうさいとし・アルテミシアの陥落かんらく

      総司令部からは「民間人の犠牲ぎせいいとわない」との通達だ。

      これより、10:30ヒトマル・サンマル、作戦を開始する!!


〇アランN:ジェーンの号令により複数機の魔導機体まどうアーマーが街を破壊し始める。

      現在、エリミネンス=グローリア帝国は大陸全土に宣戦布告せんせんふこく

      をし、各国に侵攻しんこう作戦を行っている。

      多くの国々は帝国派の台頭たいとうにより講和こうわは時間の問題だったが、

      【魔導まどう国家】ロゼッタ大公国たいこうこく徹底抗戦てっていこうせんの意を示した。

      戦いは苛烈かれつを極め、帝国首脳部しゅのうぶは主要都市制圧を優先すること

      で、公国こうこく早期講和そうきこうわうながすのをねらった。

      彼女の任務はその一環いっかんであった。


△帝国兵:こちら、【プリンシパリティーズ】。損壊状況そんかいじょうきょうを報告します。

     我が隊の損壊そんかい軽微けいびであり、一方の公国こうこく側はアルテミシア城塞じょうさい警備

     隊の壊滅かいめつに、公国こうこく軍の撤退てったい

     被害は甚大じんだいです。


☆ジェーン:偽情報デマを流したことがこうそうしたか。


△帝国兵:また、民間人につきましても多数の死者及び負傷あり。


☆ジェーン:……そうか。

      投降とうこうした民間人については、丁重ていちょうに扱え。

      捕虜ほりょはずかしめた者は、即時処刑そくじしょけいだ。


△帝国兵:了解しました、地上を含めた全部隊の通信兵つうしんへいを通して伝達します。


□スコット:こちら、【アルター】。

      城塞じょうさい仕掛しかけられていた魔導兵器の完全破壊を報告。


☆ジェーン:わかった、ご苦労だった。


□スコット:……皮肉ひにくなもんだな。


☆ジェーン:何がだ?


□スコット:あの時を思い出す……【亡国機関ぼうこくきかん】のやつらが俺たちの街を破壊

      して、今では「戦争」という大義名分たいぎめいぶんで、今度はおれたちが同じ

      ことをしている。

      それで今は、奴らと一緒いっしょかたを並べて戦争をしている。

      本当に笑わらえるな。


☆ジェーン:余計なことを口にするひまはないはずだぞ。


□スコット:そいつはすいませんね、少佐しょうさ殿。

      ……でも、お前だって同じ気持ちだろ、ジェーン。


☆ジェーンM:わかっている、そんなことはわかっている。

       自分でもおかしいとおもっている。

       この戦争は異常だ、大義たいぎなんていうものは存在しない。

       ただ軍人である自分たちが戦うことに疑問を感じてどうする?

       ――あぁ、あの男、アラン・スミシーと変わらない

       ……私は、何人の人間を殺してきた?

       いつから、単純作業のようにじゅう引金ひきがねを引けるようになった?

       無辜むこの人々にうらまれることに慣れた?


☆ジェーン:――本当に何をやっているんだろうな、私は……

     (※小声でつぶやくように)


△メアリー:ジェーン。


☆ジェーン:ぐっ、まただ……頭の中から声が……!


△メアリー:ジェーンったら。


☆ジェーン:どうして……どうしてなの、メアリー!

      いないはずの貴女あなたの声が聞こえるの……

      貴女あなたが死んでからずっと……!!


△メアリー:大丈夫?


☆ジェーン:大丈夫じゃない……大丈夫じゃないよ……


△メアリー:無理してない?


☆ジェーン:もうわからないよ、私は――


□スコット:応答しろ、ジェーン・ドゥ少佐しょうさ!!


☆ジェーン:わ、私は……いったい、何を――


△帝国兵:敵襲てきしゅうです! 魔導機体まどうアーマーが一機、こちらに向かっています!!


□スコット:ちっ、通信がジャミングされている……レーダーも拾えねぇ……

      こいつは最悪の事態を想定したほうがいいな……クソ!


△帝国兵:そんな……


☆ジェーン:機体名は!


△帝国兵:機体は――なっ! 【スローンズ】です!!

     操縦者は【亡国機関ぼうこくきかん】所属、アラン・スミシーです!!


□スコット:奴ら、まさか……裏切ったって言うのか?!


☆ジェーン:……スコット・クロフォード大尉たいい、彼女を連れて本部に至急もどれ。


□スコット:何を言って――


☆ジェーン:いいから急げ! 上官じょうかん命令だ!!


□スコット:こんの、野郎……孤児こじくせに、貴族の俺より先に

      昇進しょうしんしやがって……! 行くぞ!!


△帝国兵:は、はい!


□スコット:ジェーン・ドゥ!


☆ジェーン:なに?


□スコット:……死ぬんじゃねえぞ。

      一応、お前は俺たちの隊長なんだからな。


☆ジェーン:…………行ったか、相変わらずバカなヤツだ。

      「死ぬんじゃねえぞ」、か……わかっているくせ

      ……それは無理な注文ちゅうもんだよ、貴族様。


〇アラン:よう、お久しぶりだな。

     気分はどうだ?


☆ジェーン:えぇ、最悪で最高な気分だ。


〇アラン:あら、それはどうして?


☆ジェーン:お前を遠慮えんりょなく殺すことが出来るからだ。


〇アラン:アハハ、随分ずいぶん立派りっぱになったなァ!


☆ジェーン:……。


〇アラン:聞いたよ、少佐しょうさにまで昇進しょうしんしたんだって?

     おめでとう、心から喜びを覚えるよ。


☆ジェーン:高魔力装填こうまりょくそうてん! 八連射はちれんしゃ、オクタ・キャノン!!


〇アラン:おいおい、マジかよ!

     いきなり全開とか殺意がおとろえてねぇなァ!!

     最高の女だよ! ジェーン・ドゥ!!

     チェンジ、エア・フォース・モード!!


☆ジェーン:機体が変形して……なっ!

      ギリギリのところで軌道きどうらして、全てをかわしたのか……!?


〇アラン:モード・オフ……ふぅ、あやうくオシッコをちびりそうになった。

     それにしてもやるなァ!

     機甲きこう部隊でも指折ゆびおりの人数でしか出来ない、五連ごれん以上の高魔力弾こうまりょくだん

     てるとは……生かしておいて正解だったな。

     強敵きょうてきであればあるほど、死が身近に感じ、生きることをより実感

     させてくれる!


☆ジェーン:ちっ!


〇アラン:楽しませてくれたお礼だ。

     次はこっちの番! オラァ!!


☆ジェーン:させるか!


〇アラン:おーっと、危ない。

     魔導まどうブレードの扱い、良くなっているじゃない。


☆ジェーン:貴様を……


〇アラン:んっ?


☆ジェーン:貴様を殺すために、多くの闘い方を学んだ!

      そして……お前の事を調べた!!


〇アラン:俺の事をねェ……「敵を倒すには、まずは敵を知る」

     ――常套じょうとうではあるが、大切な事だ。


☆ジェーン:答えろ!

      何故、私たちの街を――いや、自らの故郷を破壊する

      馬鹿なマネをしたんだ?!


〇アラン:……俺は戦争屋だ、戦いを何よりも好んでいる。

     それだけで、俺は何だってやるさ! 悪魔あくまにもなってやる!!

     それに、わかっているんだろ?

     俺が、この国――いや、世界を、神々をにくんでいるのをサァ!!


☆ジェーン:そんな身勝手みがってな理由で、こんなことを……?


〇アラン:あぁ、そうだ! 理由に貴賤きせんがどうとか必要はねぇよォ!!


☆ジェーン:ふざけるな!

      お前のやっていることは、にくしみの連鎖れんさ

      産み出しているだけだ!


〇アラン:おいおい、おもしれぇ事を言うじゃねえかァ!

     同じあなムジナくせによォ!!


☆ジェーン:黙れ!!


〇アラン:おろかなところは変わらねぇなァ!!

     かくの違いを見せてやるよ!!


☆ジェーン:やってみろ!!


☆ジェーン/〇アラン:魔力装填まりょくそうてん一極集中いっきょくしゅうちゅう!!


☆ジェーンN:互いが持つ魔力を、全身全霊ぜんしんぜんれい、一発の魔力弾に込める。


〇アランN:そして、勝敗しょうはい一瞬いっしゅんにして決する。


☆ジェーンN:この戦いは〝復讐ふくしゅう〟をちかい、そして――


〇アランN:――戦う宿命しゅくめいを定められた者の戦いである!


☆ジェーン/〇アラン:極限弾きょくげんだん! アルティメット・バスター!!



<シーン08>


<がれきの山となった街。緊急脱出ポッドから満身創痍のアランが出てくる>


〇アラン:かはっ……クソが……緊急脱出きんきゅうだっしゅつポッドを使う、ハメに

     なるとはな……

     カハァ! アハハ……久しぶりだなァ、自分の血を見るのは……

     ガラにもない、ノスタルジーな気持ちになるのは……あれか?

     久しぶりの再会でそんな気分になっちゃったのかねぇ……

     ハハッ……


〇アランM:あいつは生きているのか?

      俺と違って魔力弾まりょくだんがコクピットに直撃ちょくげきした以上は無事で

      あるはずがない。


〇アラン:これで生きていたら……天晴あっぱれ、だよ……


☆ジェーン:ハァ……ハァ……


〇アラン:マジかよ……ハハッ、立っているのも、やっとじゃないか……

     てか、腹に、機械の部品がさってるじゃん……


☆ジェーン:ハァ……ハァ……


〇アラン:そのバタフライナイフで、俺を殺すのか……?

     来いよ……受け止めてやる……


☆ジェーン:うわあああああ!


〇アラン:ぐうっ……あぁ、やっぱりナイフにされるのは痛いなァ……

     でもさ……なってないなァ、じつになっていない……

     心臓はソコじゃないだろ……はいにも届いていない……

     そんななまくらで俺を殺せるわけないだろ……


☆ジェーン:『砂漠さばくの上につけられた、私たちの足跡あしあとはすぐに

       無くなるでしょう』


〇アラン:その言葉――


☆ジェーン:『けれども、私が存在する限りは、私の記憶きおくの中

       であり続けます』


〇アラン:あぁ……思い出した……


☆ジェーン:『そして、あなたは、うつつでもゆめでも、私と共に歩き続けるのです』


〇アラン:映画、見てくれたんだ……うれしいなぁ……


☆ジェーン:『これは、巡礼じゅんれいです』


〇アラン:『罪人ざいにんである私たちの巡礼じゅんれいです』


☆ジェーン:『そして、私はあなたに対して〝ある言葉〟を言祝ことほぎます』


〇アラン:『グッバイ、マイ・ディア・リベンジャー』


〇アランM:んっ……今、金属音が……この音は確か……

      あぁ、やっぱり……手榴弾しゅりゅうだんの安全ピンを抜いた音。

      おいおい、映画と同じように爆弾ばくだんを巻きつけちゃってさ……

      良い女のカラダをしているのに、もったいないなぁ……

      ――これは間に合わないなァ……


〇アラン:ジェーン・ドゥ……さよならだ……良き来世を。


☆ジェーン:あぁ、おやすみ……アラン・スミシー。


(END)

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