第5話 あいつ

 というわけで警官3人に囲まれて警察署まで主人公は移動した。


 それで取調室へ。死後の世界でも取調室みたいなところにいるのに、転生先でも取調室に来てしまった。


『通報によると……人の前に移動して、突然謎の儀式を行っていたらしいな』儀式じゃないんです。話しかけようとしただけなんです。『なにをしていたんだ? 悪魔でも蘇らせるつもりだったのか?』


 聞かれてもしゃべれないし……なんて思っていると、



 ◆



選択肢A ……

選択肢B ナンパだ

選択肢C 悪魔復活の儀式だ 

選択肢D ムシャクシャして……



 ◆


 選択肢が出てきた。これが天使様の言っていた選択肢か……


 これを選べば相手に伝わるらしい。

 

 というか主人公は僕そのものなのに……全然思い通りに操作できないな……


 ここはとりあえず選択肢A……黙ってごまかそう。


『……』

『だんまり、か……』目の前の警官はため息をついて、『まぁ今回は物的被害は出てないからな……厳重注意で済むだろう』


 それはありがたい。捕まるのかと思っていた。


 安堵していると、


『お前、職業はなんだ?』


 ◆



選択肢A ……

選択肢B 無職だ

選択肢C 警備員だ

選択肢D 警官になりに来た



 ◆


 警官になりに来た……悪くないアイデアかも知れない。せっかくだし就職するというのも選択肢だろう。


 だが……ここは素直に行こう。


『無職だ』

『ああ……見りゃわかる』じゃあ聞くな。『住所は?』


 ◆



選択肢A ……

選択肢B ない

選択肢C 見ればわかるだろう?



 ◆


『見ればわかるだろう?』

『なるほど。これは失礼』本当に失礼だな。『名前は?』


 名前か……これに関しては僕が自由に決めて良いんだよな。


 なんにしようか……まだ考えていなかったけれど……

  

 せっかくだしカッコイイ名前にしたい……なんて思っていると、


『まただんまりか……』どうやら制限時間をオーバーしたらしい。『名前不明、住所不定の無職か……』


 改めて言葉にされると怪しすぎる人物だな……クレジットカードの審査は通らないだろう。


『お前……旅人かなにかか?』

『……』

『答える気はないみたいだな』


 勝手に黙るな主人公。選択肢を出してくれ。


『どうしたもんか……』取り調べの警官も困ってるよ。『うーむ……さすがにこのまま帰すことはできないんだが、逮捕する理由もないんだよなぁ……』


 別に犯罪も犯していないが、かといって逮捕するほどでもない。

 スゲーめんどくさい不審者だな……自分でもそう思う。


『困ったもんだねぇ……うちの新人にも問題児が配置されて手を焼いてるってのに……』


 問題児か……どんな人なのか気になるけれど、聞き返す前に警官が続けた。


『まぁ、とりあえず変な行動はするなよ。最近はが出るから、みんな警戒してんだ』


 ……あいつ……? あいつって誰だろう……そんなことを思っていると、


『おい!』取調室の扉が空いて、血相を変えた警官が入ってきた。『が出た! 行くぞ!』

『わかった』取り調べをしていた警官が立ち上がって、『おい。ここで待ってろよ。すぐ戻る!』


 そう言って、慌ただしく警官は取調室をあとにした。


 部屋の外がバタバタしている。どうやらかなりの非常事態が起こっているようだ。


 ……


 いやいや……


 おとなしく取調室で待ってるわけがない。

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