3話

翡翠 side


「ねぇ紺くん降りてこないね」


「そうだね」


 僕がそう言うと氷雨くんは少し不安そうに瞳を揺らした。


「どうせ寝ているんじゃないか」


 だけど煉くんはさっきの眉を顰め、皮肉そうにと言った。僕は無視をして氷雨くんに話しかけた。


「体調悪そうだったし寝ているかもしれないね」


「最近食べてなさそうだから体調を崩しちゃったのかも」


「僕が4時ぐらいに起きた時に吐いていたんだよね...」


「じゃあ固形物はやめておいた方がいいね」


 氷雨くんがお粥を作ると一緒に紺くんの部屋に持っていく。コンコンと扉をノックすると紺くんはニッコリと笑顔を浮かべて扉を開けてくれた。


「あのお粥作ってきたんだけど...」


「…ごめん食べれないんだよね」


「でも、食べないと倒れちゃうから食べて欲しいんだけど」


「分かった…」


 紺くんはイヤそうな顔をしながらも承諾してくれた。僕たちはちゃんと紺くんが食べるか監視することにした。


「いただきます....」


 紺くんは少し怯えた様子で一口食べた。


「どう?」


「美味しいけど……ごめん」


 紺くんは急いでトイレに向かい、苦しそうに涙を浮かべながら吐いた。


「大丈夫⁉︎」


「ごめん氷雨…」


 紺くんは弱々しく謝る。僕と氷雨くんの焦った声が聞こえたのか、一階にいた煉くんが急いで来た。


「どうしたんだ?」


「紺くんが吐いちゃって…」


「紺くんもう気持ち悪くない?」


「もう大丈夫... ありがとう...」


「あのさぁ…紺痩せすぎじゃないか?」


 煉くんの言う通り前より痩せていた。4時に紺くんの背中を摩った時から可笑しいと思っていたが、二人も同じように思っていたらしい。


「そうかなぁ? 変わってないと思うけど?」


 紺くんはずっとニコニコして喋っている。辛いはずなのに、まるで辛いことを僕らに隠すためにしているような感じだった。


「お前何か隠しているんじゃか?」


「な、何にも隠していないけど…」


 声が震え、一瞬瞳が揺らいだ。


「我慢しなくていいんだよ」


「そうだよ!辛いことがあるなら言ってよ」


「……大丈夫、そこまで辛くないから」


「嘘つかないでよ」


「ちゃんと話して…」


「大丈夫だって!みんなが心配するようなことなんて一つもないんだから!」


紺くんが大きな声で言った、次の瞬間パチンッと煉くんが紺くんの頬を叩いた。紺くんは呆然とした表情で煉くんを見つめた。

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