2話

「どうぞ」


 氷雨が作った美味しそうなご飯が目の前に置かれる。だけど一切食欲が湧かない。


「ごめん部屋で食べていいかな?」


 さっきのせいで雰囲気は悪く、食欲は湧かないから部屋でゆっくりと一人で食べようかなと思い聞く。


「うん、いいよ」


 氷雨は快く了承してくれた。俺は自分の部屋に持っていき、一口食べる。一瞬美味しいと思ったが、また吐き気が襲ってきた。さっき吐いたせいで胃液しか出なく、喉が痛くなった。俺は氷雨に謝り、ご飯を食べなかった。










 あの悪夢を見てから3日が過ぎた。この3日間も同じような夢を見た。そして同じように起きては吐き気が襲ってくる。4時ぐらいに起きるため、みんなを起こさない様に、足音や扉の開け閉めの音に気をつけて、急いでトイレに駆け込む。これが続くためご飯は喉を通らず、水しか飲めなくなった。










 4日目


 俺はまたあの暗闇の世界にいた。今日も来たことが分かった瞬間、俺は発狂した。もう俺の精神は限界に達していた。そのせいか今回は早く化け物に喰われた。俺は起き上がりトイレに駆け込み、いつものように吐いていると


「大丈夫?」


 と誰かに声をかけられた。誰だろうと視線を後ろに向けると、そこには翡翠が立っていた。翡翠は優しく俺の背中を摩ってくれた。俺が吐き終わると


「何があったの?」


 優しい声で聞かれ悪夢のことを話そうとした瞬間


『お前はいいよな!こんな痛みも味合わずに死ねるんだからな!』


 あの時の煉に言われたことが脳裏をよぎった。


 そうだよな…


 みんなはいつも痛い思いをしているのに、俺は悪夢を見るだけ。悪夢のことを言えば、「悪夢ごときで騒いでいるんじゃねぇよ」とか言われそう。みんなも痛いのを我慢しているんだから、俺も我慢しないと…俺は痛みなんか感じないで死ぬことが出来るのだから。


「何もないよ。急に気持ち悪くなっただけだから大丈夫」


「そっか…何かあったら相談してね」


 俺は笑顔を浮かべ何もないかのように振る舞う。翡翠は一瞬疑うように俺を見たが、すぐ自分の部屋に戻っていった。自分の部屋に戻るが悪夢を見たくないからゲームして時間を過ごした。








 ゲームをしていたらいつのまにか8時になっていた。下に降りると3人が楽しそうに話している。


 俺がいない方がいいんじゃないか?


 俺は必要ないんじゃないか?


 そんな考えが俺の頭を横切る。やっぱりみんなの所に行くのは止めよう…そう思い部屋に戻りゲームをし始めた。

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