No21『虫取り少年と虫食い姉さん』 長月瓦礫

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661283534823



口裂け女によく似たお姉さんと虫取り少年が出会う話です。


今回の企画に集まった虫ガキ小説に登場するお姉さん、特にホラー作品に登場するお姉さんのイメージは「八尺様」の影響が強く見られますが、そもそも「子供の前に現れるお姉さんの姿をした怪異」の元祖といったら、やはり口裂け女となります。


明確に「口裂け女に似ている」と描写されるのが本作における「虫食い姉さん」ですが、「似ている」という言葉は「同一である」ことを意味しません。


むしろ、どれほどその要素が共通していたとしても、決定的な断絶がある――「似ている」が示すのは「異なる」ということ。

「虫食い姉さん」は「口裂け女」ではないのです。


「虫食い姉さん」。

その生態も外見も子供がふざけて話す言葉遊びの産物のようですが、その正体不明さと理屈の通らなさが、かえって資本主義経済に飲み込まれキャラクター化した「怪異」にはない怪奇性を感じます。


物語の最後の一文で、急に実話怪談調になるのにクスリとしました。

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