第2話

「なんで口裂け女が多発しとるん」

「わからへん、あっちもこっちも口裂け女のメールやて」

 特にメインで除霊しているコウは口裂け女にはあまりいい印象を持っていない。


 なぜなら以前、同じように霊視能力のある少年が口裂け女に乗っ取られてしまいそれを除霊した件があったからだ。


 一見普通の除霊になるのだが、その口裂け女は偽物だった。


 少年の通っていた小学校に彷徨っていた幽霊が誰にも相手にされないのならと有名な口裂け女に化けて口裂け女として生活をしていた似非の口裂け女、コウ曰く

「口裂け女のフランチャイズ」

 である。


 有名な幽霊やお化けになればもっと驚いてくれる、構ってくれると思ったのかここ最近増えている事案。


 もちろん口裂け女以外にもお岩さんやトイレの花子さんなどの他の有名どころになる幽霊たちもいるがなぜかここ最近コウたちの元にはエセ口裂け女の目撃情報や除霊依頼が届く。


 実際の口裂け女は背が高い。一般女性の身長よりも。だいたい170-180。中には二メートル近く。ヒールを履いているとも言われているが足元よりも目立つ特徴がある。

 名前の通り口が両耳近くまで裂けており普段はマスクをしている。


 出没はだいたい夕方から夜、下校中の小中学生が遭遇することが多く、マスクをつけた黒髪の長髪女が

「わたし綺麗?」

 と言って目の前で裂けた口を見せて驚かせるという。その際にブスなんぞ言ってしまったら追いかけられるとか。

 反対に嘘で美人と言っても付き纏われる。

 だから普通、と答えると良いとか彼女の嫌いな匂いがする整髪料のポマードの名前を唱えると良いとかいろんな言い伝えがある。


 なんとその口裂け女の出没情報は日本全体で何千件もあり、見事? メジャーなお化けの一員となった。


 しかしこのところなぜかコウたちの住む岐阜での目撃情報が増えている。

「何故や、何故や……どうせ行ったところでエセ口裂け女ばかりでそれぞれ幽霊になった経緯もちゃうから除霊方法も違うからめっちゃ体力と気力を消耗するから嫌やわ」

「一応メールでもらったところの依頼箇所和地図に落とし込んどいた」

 と由貴がスマホを見せる。

「悪いな、やってくれたん?」

「おまえがメール無視するからや。よう見てみ、ほとんどここに集中しとるわ」

 と確かに地図で記録した場所がほぼ同じ箇所だった。


「ただの目撃情報だけだったらええけども、これ以上無視したらあかんやないのか?」

「まーじーかー」

 コウはふんぞりかえる。すると奥からマスターが二人のためにアイスコーヒーを持ってきた。


「お疲れ様です」

 由貴にとってはマスターは渚の父なので義父になる。だからピシッと立ち深々と頭を下げる。マスターはそんなのを求めていないからまぁまぁと宥める。


「……この地図は?」

 マスターがスマホの地図を見た。

「依頼がこの地域に多くて」

「〇〇郡じゃないですか……まさか、口裂け女ですか?」

 えっとまだ何もマスターに伝えてないのに、とコウと由貴は驚く。


「え、その……まさしくそうなんです。口裂け女がここ最近〇〇郡に多発しておりまして」

 由貴がそう言うとマスターはふむ、と口に手を当てる。


「それはきっと口裂け女の生誕地だからじゃ無いのかい?」

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