豚と嘘
@nirinso
第1話 事務所びらき
平成25年秋ごろ。
高校生だった”ぼく”は、知り合いの社会保険労務士の先生の事務所の引越しを手伝っていた。
事務所は、先生の顧問先でもあるという英語教室の倉庫を、善意で貸してもらえるのだという。
——東京とちがって、地価が安いところは、気楽で、いいなあ。
先生のいいところは、学校とか、ほかのところのセンセイと違い、パソコンに明るいところだろう。
もともとは、DTMか何かが趣味で、そこからのめり込んだらしいが、Apple製品に精通しているのがまた良い。
この事務所も、Time Cupsuleでバックアップを完備するというから、南海トラフ地震というやつがやって来ても、ひと安心だろう。
事務員の女性も、いつもどおりの元気で、安心した。
——やっぱり、士業とか、そういう難しい資格が取れる人は、いいなあ。最近は、かなりむずかしくなっていると聞いているから、僕にはムリだろうな。
この時、”ぼく”は、この事務所に、この日から10年後に、しかも"ぼく"もまた士業のバッジを手に入れて、ふたたび訪れることになるとは、夢にも思っていなかったのである。
さらには、この小さな街で、士業に”しかなれなかった”その事務所のあるじの、人間として最も醜悪な嘘と欲望を目の当たりにすることになるとは——。
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