第4話

 俺たちは予定通りラブホにチェックインした。二人でベッドに座ったが、二人とも照れて笑ってしまった。そうやって座っていると、やっぱり十代だなと思う。大学生だったとしても、そこはかとなく伝わって来る処女感は変わらないかもしれない。俺でいいのかという気持ちが芽生えて来て、ちょっと引っかかった。そんなにタイプじゃないから付き合う気もないし、二回目はないかもしれない。こういう子よりも、顔が普通でも親しみやすい感じか、風俗にいるような接客になれた女の方が気軽に楽しめそうだった。


 俺たちはコンビニで買って来た物を食べることにした。とりあえず俺はトイレに行った。バスルームで一人になってみると、色々面倒になって来たからやっぱり帰ろと思い始めた。警察に垂れ込まれると困る。俺は一応会社員だ。タイプでもない未成年とセックスしたせいでクビになりたくない。


 カノンがネットで男漁りをしているのは、精神的な問題があるのかもしれない。男の場合は、精神よりも本能だろうけど、女の場合はそうじゃなさそうだ。せっかく会ったんだからちょっと話してみて、金八先生みたいに説教でも垂れてやろうか。はっきり言って、そんなことで考えを変えるとは思えないが。とりあえず言ってみることにする。ちょっとは刺さる言葉があるかもしれない。俺が断ったら、別の相手を探すだろうけど。


 俺が部屋に戻ると、カノンはベッドの上にお盆を置いてグラスにジュースを注いでいた。彼女が買ったのは、500mlの紙パックに入った乳酸菌飲料だ。俺は若い頃からそんな物を飲んだことはなかったが、そんな甘い飲み物を500mlも飲めるかと思って見ていた。それが半分俺の分だったとは…。家ではちゃんとしてそうだなと俺は思った。


「ありがとう」


 俺は座ってジュースを飲んだ。はっきり言ってあんまり好みじゃないし、変な味だった。

「すげー久しぶりに飲んだわ。何ていうんだっけ?」

 彼女は商品名を言った。俺はコンビニ通じゃないから知らなかった。俺はお菓子をつまんだ。袋菓子をパーティー開けしてくれている。正直言って、こういうに風に何でもやってくれるような子は好きじゃないのだけど、気が利くというのは間違いないだろう。

 正直言って早く帰りたかった。


「彼氏いないんだっけ?」

「小学校の頃はいたけど、別れちゃった」

 別れるって何だよと心の中で思いながら、今の小学生は彼氏がいる子が増えているという記事を読んだことを思い出していた。

「その子とはどこまで行ったの?」

「全然。一緒に帰ったりとか。そのくらい」

「へえ。かわいいね。もう会ってないんだ?」

「うん。連絡先知らないし。スマホ持つ前だったから」

「そうなんだ。どんな子?」

「塾で会った子だったんだけど、すごい勉強できる子だったから、〇〇に受かってた」

 そこは御三家と言われる超難関校だった。将来は東大行くようなタイプなのだろう。

「へー。もったいないね」

「うーん。またどっかで会うんじゃない?」

「家近所?」

「うん」

「じゃあ、会うかもね。きれいになってびっくりしてるんじゃね?」

「多分、雰囲気変わりすぎてわかんないと思う」

「そんなに変わったんだ?」

 俺たちは内容のない話をだらだらしていた。誰もが自分のことを話したいものだと思う。彼女はよく喋った。俺は眠くてたまらない。つまらないし、話を覚えていられなかった。


「ごめん。すっげー眠くて…」

「じゃあ、ちょっと寝れば。起こしてあげる」

 俺は頭の片隅でスマホと財布を取られないか不安だった。

 しかし、どうしても起きていられないほど眠かった。俺はそのまま横になってしまった。

 

 

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