第3話

 俺たちが会ったのは、都内某所。JRの駅とだけ書いておく。駅で待ち合わせたのだけど、カノンはかわいくて目立っていた。メイクをしていたから、とても中学生には見えなかった。ヒールのある靴を履いているし女子大生みたいだった。一方、あちらは俺に気が付かなかった。


「カノンちゃん?」俺から声を掛けた。

「うん。蓮?」

「うん…」

 年齢を二十以上サバ読んでいるくせに、どの面下げて声を掛けてるのかと我ながら情けなかった。事前に写真を送っていたけど、若く見えるように肌の色を加工していた。最近はクマがひどくて死相が出ていると言われるが、肌のムラを消しただけで随分若く見えたと自負している。しかし、実物は年齢相応だ。カノンは一瞬俺を見て「お前いくつだよ」と思っている気がした。目線が冷たかった。


「じゃあ、行こっか」

「うん」

 俺たちは並んで歩きだした。

「直接行っていいの?」普通は食事でもしたがるが、随分、話の分かる子だと感心した。

「うん。店とかだと周りが気になるし」

「じゃあ、コンビニで何か食べるもの買おっか?」

「うん」

 

 俺たちはコンビニで飲み物やお菓子を買った。支払いは俺。当然だ。随分安上がりだなと思う。相手が若いからだろう。大人だったらデパ地下で何か買いたいというだろうし、男がそれくらい払って当然だと思う。だって、付き合ってないんだし。これからもそのつもりはない。


「カノンちゃん。親には何て言ってある?」

「友達と出かけるって言ってある」

「そっか。門限あんの?」

「7時」

 まっとうな家だなと感心する。厳しい家で育っても、子どもは知らない男とラブホに行くようになるのだから、人生わからないもんだ。親が知ったら泣くだろう。ちょっと気の毒になった。


「遅れたら怒られるよね?」

「来月の小遣いなしになっちゃう」

「じゃあ、それまでに帰ろう」

「短いね」

 まるで早漏と言われているような気がしてむっとした。ちょっとの間会話が途切れた。

「親に心配かけると悪いから」


 電話で話しているうちは気が付かなかったけど、実際会ってみると、ちょっと鼻に付く感じがした。中学受験して難関校に入った子らしく、何となく偉そうだった。性格的にはあんまりタイプじゃない。見た目は確かにかわいいけど、美人顔で可愛げがない。


「帰りたくない」

「また会おうよ」

「そうだね」

 何となくもう会わない気がしていた。俺たちが何となく合わないのは、向こうも感づいていただろう。でも、カノンがホテルに行くのをやめないのは、早く経験したいからなのか。根性のある子なのかもしれない。もしくは、メンヘラなのか。しかし、メンヘラという感じはあまりしなかった。自虐的なのだろうか。自分を貶めて、生きている実感を得たいタイプなのかもしれない。そういう女が好きな人なんて世の中には存在するだろうか。俺はやる気満々で出かけて来たけど、なんとなく気が乗らなくなって来た。知性が勝つ女は苦手だ。


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