いのり

いすみ 静江

いのり

 第二次世界大戦の最中

 昭和十九年に私の両親は逞しくも命を抱いた

 父も母も戦火を潜り抜けたお陰で

 今の私がある


 戦局が危ぶまれた頃

 昭和二十年の夏

 原子爆弾が投下された


 八月六日に広島にウラン型のリトルボーイが

 追うように九日に長崎へプルトニウム型のファットマンが

 悪魔の形相を剥き出した


 人の狂いし姿が戦争であり

 戦争は人命のみならず心を腐らせる

 心は握手を忘れてより血を求めた

 原子爆弾は血も枯れる兵器だろう


 兵器は心で否定しなければ幾らでも新しくなる

 非核三原則を額に入れて飾っているだけでは

 画餅だ


 武器よりも

 人は恐ろしいものだ


 私がすべきことは

 隣人をも愛することだ


 今年もいのりを捧げたい



  令和五年八月六日

  いすみ静江

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