第8話 なんて明るい月の輝き

なんて明るい月の輝き

                   エミリー・ブロンテ作

                        額田河合訳

なんて明るい月の輝き! なんて静かな

 その光に守られて私は横になる

天と大地が私にささやく

「明日は目覚めよ、だが今夜は夢を見よ」


さあ、夢よ、おいで、私の魔法の恋人よ!

 このずきずきするこめかみにやさしいキスを

私のひとりぼっちの寝床の上にかがみこんで

 私に安らぎを、しあわせをもたらして


現実は消えていく、暗い世界よ、さらば!

 おぞましい世界よ、朝まで姿を見せぬがいい

私の心は、おまえに負けたわけではない

 さっさと消えてくれぬと、なおも戦わねばならぬ


おまえの愛など、私は少しも、ほんの少しも欲しくない

 おまえの憎しみには、ただかすかに笑うだけ

おまえの悲しみには胸も痛む――悪には心も裂けよう

 だが、おお、おまえの偽りにあざむかれることは断じてない


天上に広がる、嵐なき海の中に

 星々が燦めくのを見つめていると

望まずにはいられない 命あるものの知る

 すべての悲しみがおまえのうちにとどまるようにと


これを今夜の私の夢にしよう

 輝く星々に満ちるこの天空が

はてしない年月、限りのないしあわせの中に

 光あふれる軌道をめぐることを思おう


あの高みには、私がこらすこの目の届く限り

 こんな世界はひとつもないと思おう

かしこさなるものが、愛をあざけり笑い

 美徳が悪徳にひれ伏すようなこんな世界は


ここでは、「運命」の鉄槌にさいなまれながら

 ずたずたに傷ついた者は微笑むことを強いられた

運命の憎しみに彼は忍耐をもって応じた

 心はどんな時も屈服することはなかったが


ここでは、楽しみはきっと過ちへと通じ

 力ない理性の警告はむなしいばかり

真実は弱く、そして裏切りは強い

 喜びは何より確実に苦しみへと至る道


平和は、ただ悲しみを忘れているだけ

 希望は、魂の見るまぼろし

人生は、つかの間のからっぽの労苦

 そして死は、あらゆるものを支配する暴君

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