第2話 希望

希望

                    作 エミリー・ブロンテ

                    訳 額田河合


希望は弱くて怖がりの友にすぎなかった

彼女は私の牢獄の鉄格子の外側にすわって

私の運命のなりゆくさまを見守っていた

身勝手な人間たちとちょうど同じように


恐怖にとらわれて、彼女は残酷だった

鉄格子の向こう、あるわびしい一日

私は彼女を一目見ようと外をのぞいた

すると彼女は顔をそむけたのだった!


不実な番人のように、見守るふりだけをし

そのくせ、争いのさなか、彼女は平和をささやいた

私が泣いていると歌っているくせに

耳をすますといつも歌うのをやめるのだった


彼女はうそつきだった、血も涙もなかった

私の喜びのすべてが地面にうち捨てられたとき

まきちらされた悲しい残骸を見て

「悲しみ」でさえ哀れと思っているそのときに


希望は――ひとことでもささやいてくれたなら

あのくるおしい痛みのすべてもいやされたろうに――

翼を広げると、空へと舞い上がったのだ

去って行き―そして二度と帰らなかった!

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