第六部

 ソルシエルの料理は期待通りというか期待外れというか、なんともいえないものだった。


「結局手作りじゃないのかよ……」


 そう、ソルシエルが魔法で作り出した、料理と呼んでいいのかわからないものだった。


 味は美味しい。

 そこいらのフランス料理のコースより格段に上質。


 しかし、魔法で作り出した分、何でできていてどんな工程を踏んで完成したのか謎に包まれている。

 それゆえ不安になってしまう。


「何でできてんの、あれ」


「無だ」


「無機物ってこと?」


「いや、そのままの意味だ。無機物ではなく無から創造できることが魔法を魔法たらしめる。ナナシよ、神の御業とは思わぬか? 人間にはできぬことをやってのける魔女――神に最も近い存在だ」


「確かに。俺はお師匠様が怖いぜ。未来の旦那さんもびっくりするだろうな。手料理がここまで無機質なんてさ」


「ふん、減らず口を。味よし、見栄えよし。何が問題だというのだ」


「……お師匠様、人間とどれくらい会ってない?」


「さあ? 百年くらいか」


「……お師匠様、もしかして引きこもり?」


「……さあ?」

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