おいしい料理は幸せを呼ぶ

海陽

カレーとナン

 今日、私、Hは二人の友達、Iくん、Nくんと一緒にご飯を食べに行った。


 場所は私の住んでいる家の近く。

 家から5分ほど歩けば着くくらいの距離感で、とても美味しいので、私は何度もこの店の料理を食べている。。


 そこには、インド、ネパール料理を楽しめる店があった。

 象の置物や神様の絵、カーペットなどの店の見た目からして異国情緒が感じられる。

 インドやネパールの人たちが働いており、本場の味の料理を食べることができる。


 そんな店に私たちは三人で向かった。



 ◇◇◇


「イラッシャイマセー」


 入るや否や店員さんが片言の日本語で挨拶をしてきた。

 たったそれだけ。それだけでも気分はすごくいい。

 それは二人も同じだったらしい。二人とも笑顔だ。


 私たちは席に着き、何を頼むかを考え出す。


 少しメニュー表を見て、決める。


「私はこのBセットにしようかな。カレーはバターチキンカレーの、中辛で。あとこの……パパド?も」


 Iくんも決めたようだ。


「じゃあ俺は単品でスープカレーとターメリックライス。でもナンは俺も食べたいからね。少し分けてくれ。おかわり自由なんだろ? セットのナンは」


「いいよ 私もスープカレー食べてみたいし。」


 Nくんが何を食べるのか気になった私は彼に質問を投げかける。


「君は何を頼むの?」


「んー……僕には全部おいしそうに見えてなかなか決められないなぁ。Hは何回か来てるんでしょ? お勧めのメニューとかないの?」


 質問が帰ってきてしまった。

 私は少しだけ考えて、こう言った。


「じゃあ、このチーズナン。ちょこっと甘くておいしいよ」


「そうか。じゃ、僕はチーズナンセット。野菜カレーの辛口で。」


「ふぅん。辛口なんだ。」


 私がそういうと、Iくんも重ねて


「普段甘いもんばっか食ってんのにな」


 と言い、Nくんを茶化す。


 するとNくんは


「カレーの辛さなら平気なんだ。あと甘いものを食べるのは甘いものが好きなだけだよ。」


 と冷静に返してきた。


 私は「むぅ。つれないなぁ、この甘党は。もっとリアクションしてよ」と思ったが口には出さずに隠しておいた。


 とにかく、全員の頼むものが決まった。

 私は店員さんを呼ぶ。


「すいませーん」


「ハイ。チュウモンデスカ?」


「えと、パパドと、Bセットのバターチキンカレー。あとチーズナンセットの野菜カレー、スープカレーとターメリックライス」


「辛サハドウシマスカ?」


「バターチキンカレーが中辛、野菜カレーが辛口でお願いします」


 私がそういうと、店員さんは厨房に向かっていき、よくわかんない言葉で注文の内容を伝えた。恐らくヒンディー語かネパール語だったのだろう。


 注文が届くまでの間、私たちは雑談をし、時間を潰す。


「そう言えばNくん。ドオーの色違いは出たのかい? 私はウォーグルの色違いを出したけど」


「まだ出てないなぁ。お守りも使っているのだけれどね。君の色違いの出る量は異常じゃないか?」


「いいでしょ。日頃の行いだよ。あと君お守り手に入れたんだ」


「俺はお守りなしの30分でリングマが2体光った」


「君たちの運はなんなんだよ……僕にも分けてほしい」


「あはは。私はともかく君には無理じゃない?」


「ああ。もっともだ。」


「なんでだよ」


 Nくんは怪訝な顔をする。

 それに対し、私とIくんはニヤニヤして返事を返す。


「「日頃の行い」」


「うっわムカつく」


「ふふ。さっきと違っていいリアクションだねぇ」


 などと話していると、すぐに料理は到着した。




「オマタセシマシタ」


「おっ! きたきた。有難うございます」


 料理を運んでくれた店員さんにお礼を言い、まずはパパドに手を伸ばす。


 パパド。

 豆や米の粉から作られるとても薄くパリパリした食感の料理って書いてあった。

 おせんべいに似ているような気がする。

 塩味が効いており、同時に胡椒のような爽やかな辛みも楽しむことができる。

 インドではおやつとして食べられるが、日本では前菜や酒のつまみという扱いらしいよ。


 みんなで分けて食べよう。そう思い私はパパドを割る。

 パリッと軽快な音を立ててパパドは半分に割れた。

 割れたパパドを半分ずつ、IくんとNくんに渡す。


 もう一枚は割らずに私が食べた。

 美味しかった。


 私が頼んだものだからか、だれも文句は言わなかった。

 やったね。


 次に私の目に入った料理はナンとバターチキンカレー。

 やはりおいしそうだ。

 私はぱあっと顔を輝かせ、出来立てのナンに手を伸ばす。

 しかしその手はナンに触れ、はじかれたかのように手を放す。


「あちちちちち!」


 そう。

 出来立てのナンはとても熱かった。あつあつだった。


「ふぅ。岩ピクミンみたいな声出ちゃったよ」


「何そのマニアックな例え。僕らには全く分からない」


「う、ごめんよ。でも本当に似てるんだ。後で調べてね。これ義務ねっ」


「おいなんでだよ!」


「義務化すんなし」


 私はうざったい二人組を無視し、もう一度ナンに手を伸ばして掴む。

 今度は素早くちぎって「ふーふー」と息を吹きかけて冷ました。


「俺この年になってふーふーするやつ初めて見たんだけど」


「それぐらいはいいでしょー。私は意外とやってるよ?」


 ちぎったナンをカレーにつけ、そして口に入れる。


 スパイスによって出たコク、香り、そして程よい辛さが口に広がり、後を追うようにナンの甘味や優しい香りが口いっぱいに広がる。


「んんん~! やっぱりここのカレーは美味しーね! ほら! 皆も食べて食べて~」


 私が二人にそう伝えると、二人は同時にカレーを食べ始める。

 Iくんも、Nくんも、自分の頼んだカレーをスプーンで口に運ぶ。


「おぉ。美味い」


「結構しっかり辛さが効いてるね」


 二人が気に入ってくれたみたいでよかった。

 そう思いながらNくんが頼んだチーズナンにも手を伸ばす。


「あっ。それ僕のだよ。欲しいならタンドリーチキンとサラダ頂戴よ」


 しまった見つかってた。

 こういう時だけ勘いいなぁ。


「仕方ないねぇ」


 そう言って私はサラダを少しとタンドリーチキンをひとかけ差し出した。


「少ないと思うな」


「うぐ」


 仕方ないからサラダもタンドリーチキンももう少しあげることにした。


「まぁ、よしとする」


 Nくんがそういうのと同時に私はチーズナンをほおばった。


 おいしい。

 普通のナンよりも甘みが強く、チーズの風味と程よい塩味がより一層甘みを引き出している。お菓子みたいだ。

 カレーをつけて食べるとより美味しい。




 そこから特に会話はなく皆それぞれ思うように食べ進めた。

 私はドリンクバーで緑茶をとってきたり、勝手にチーズナンを食べたり、自分のナンとカレーを食べ進めたりした。


 Nくんは黙々と自分の頼んだものを食べ進めた。


 Iくんは私のナンを結構食べていた。

 結局私は一口もスープカレーを食べなかったんだけどね。


 ナンのおかわりもした。

 おかわりをしたら、すぐに到着した。

 1枚目より大きいのが届き、皆驚いた。


 そんなこんなで、私たち全員が満腹になるのにそこまで時間はかからなかった。


「ふぅ。私もうおなかいっぱい」


「全員食べ終わったよな? H、まとめて会計頼む」


「うん。でも割り勘だからね。後で私に払って」


「OK」


「わかってるよ」


「じゃ、払ってくる。外で待ってて」


 私はレジへ、IくんNくんは外へ向かった。


「お会計お願いします」


「ハイ。オカイケイ4350エンニナリマス」


 安い。

 ……と、思う。


 私はともかく、Nくんは身長180㎝を超えていたし、Iくんも身長165㎝はあった。

 何より私たちは、全員現役の学生だ。

 それに、私はバスケ部、Nくんは卓球部、Iくんは野球部と、全員が運動部だった。


 私?

 マネージャーではないよ。

 運動ができるわけではないと思うけどね。それでも、楽しい。

 ……話がそれちゃったね。


 ともかく、運動部で現役学生の私たちが全員満腹になるまで食べてこの値段だった。


 私は安いな、と感じている。本当に安いのかは、私にはまだ、わかんないんだけど。(苦笑)



 私はお財布の中から樋口一葉さんを一枚取り出し、お釣りをもらってお会計を済ませた。

 それから店員さんに、

「ありがとうございました。ここの料理、とても美味しかったです」

 そうお礼を言った。


 ◇◇◇


 その後、私は外で待っていてくれた二人と合流して帰路に就いた。


 そのまま少し雑談して、三人で笑いあって、信号の前でバイバイした。

 何気ない時間だったけど、私にとってはとても幸せな時間だった。



 あっ!二人料理代払ってない!今度会ったときに言おう。

 返してくれるといいんだけどね……。













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