#3日目

―恐れていたことだ。

「うあぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

ならないようにするのが私の仕事たったはず…

ガァン…ガァン!と激しく揺れる鉄の格子こうし、それを内側から揺さぶる…

20…貴様…!」


のは、つい先ほどの話だ。


今日は珍しく、昼食が洋食の日だった。

それというのも、ほぼ拘束状態にありはするが、騒ぐこともなく、脱獄しようという意思すらない(少なくとも、嘘発見器ポリグラフ検査には引っ掛かること無く、それに加え、日記と本人の態度からは贖罪しょくざいの意思が強い。)

とまあ、行動的には模範囚でしか無いため、仮釈放しても問題はない…訳でもなく、一度だけ行われた会議での結論は、『囚人番号20番は、仮釈放した瞬間に自殺を図る』ということだ。

それでは罪を償うどころではなく、社会への更正さえままならない。

だからこそ…多少の「仮釈放以外の」自由は求めることができる。

今回において、彼が日記を配られたのも、模範囚であったことが1つの理由なのかもしれない。

前置きは長くなったが、つまるところ、模範囚のためいい食事を食べられる訳だが…

職員がサンドイッチを持ってきた。

持っていた小型の折り畳みナイフで半分に切ろうとした。

その瞬間…

「うあぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

彼は発狂した。


―問題発生 7:43分25秒

問題…囚人20番、突如として発狂。

対応…看守の護身用スタンガンにより鎮圧

損害…看守の早期対応により、人的被害ゼロ

これより、問題となる原因の早期解明に移る。


―受理した。

警備を増員し、より一層の注意のもと対応する事。

問題の原因が解明されるまで、ならびに、原因は予防可能なものであると証明されるまで、警戒は解かないものとすること。


―了解致しました。

警備を増員し、警戒体制に入ります。


本日の日記


警戒体制のため、また、受刑者20番の精神状態に異変が見られるため、日記を書かせることは不可能だと判断。


そのため、受刑者20番の錯乱状態が落ち着くまでの間、呟いていたを特記致します。


(鉄格子に頭を激しく打ち付けながら)

「…あれは…あれは……」

「あれは何?、…(以下言語化不可)」

「なに?なにが?!これ?!!?」

(スタンガンにより痺れ、身体の自由を奪われる直前)

「…こわい。」


以上の発言から、囚人20番は『なにか』に恐れを抱いていた可能性が高く、その『なにか』が解明できれば、今回のような事例を防ぐことが可能と判断。

普段の様子が正常であることは、模範囚であることからも明らかであり、その信憑性しんぴょうせいは高いかと思われます。


そして、おそらくその『なにか』も、おおよそ見当はついています。



―了解した。

原因の確信を得るためにもう一度囚人20番にその『なにか』を見せる必要はない。

以降、それらが囚人20番の目に入ることがないよう注意せよ。


―了解致しました。

今後からはこのようなことが起こることのないよう、留意りゅうい致します。

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