黄昏の扇

モきゅ太郎

蠱毒

第1話 東

1922年 中国英国領上海 


 世界大戦よりはや数年。

 この地でも多くの血が流れた。

 とはいえ、人々はそれを知らない。


「やあやあ、久しぶりだね。勾陳こうちん。」

「げぇ...。何でお前が...。」


 二人の少女が対面する。

 一人は満面の笑み、もう一人は引きつった笑みを浮かべる。

 ここは上海の某所。


 ある者は酒に溺れ

 ある者は薬に溺れ

 ある者は力に溺れ


 彼らはここにたどり着く。

 彼らがいなくとも世界は回るが、がいなくては世界は崩壊する。


「げぇとはひどいな。」

「...で何の用?」

「流されたなぁ。まあ、いいんだけど。それでね、借してくんない?」

「なぜ?」

「ーーーーーーといったら?」

「その仕事は調律者とドイツ騎士団がすること。」

「だよねー。」


 少女はもう一人の少女の解答を予想していたかのように微笑む。

 その反応を見て、もう一人の少女はジト目で少女を見る。


「なら...」

「けど、そのシステムは成立していない。3本の聖剣が行方不明、6人の保有者が再起不能。調律者もまともに仕事をしていない。」

「...極東騒乱、けど陰陽寮、黄軍、公安委員会も戦力を失って...。まさか...。」

「代行者を確実に始末する。今なら僕が動くことができる。」

「...貴女、死ぬつもり?」

 

 少女はただ微笑むだけ。

 少女は理解してる。今からの自身の行動がどれだけ危険であり、一歩間違えれば世界の均衡が崩壊しかねない行動であるのかを。

 

 占星術組織の対立からはじまった世界大戦。2人の少女は巻き込まれたに過ぎない。だが、今の多数派の世界において少女の死は世界大戦を再度引き起こしかねない。


「分かっている。僕も最悪の事態には備えてる。」

「...。」

「それに、おそらくも来るさ。」

?」

「あぁ、勾陳こうちんは知らなかったね。彼女のことを。」


 少女はもう一人の少女に背を向けるとポツリとつぶやく。


。」


「?」


 もう一人の少女は首をかしげる。だが、少女がこの疑問を解消してることはなく


「また、会おう勾陳こうちん。次はでね。」

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