第3話 激レア

 それから、少しして動きがあった。

 下にいた貴族のような格好をした男女が、何かの札のようなものを持って裕也たちのいる巨大ガチャの周りに集まってきた。

 そのうちの一人、燕尾服のような黒い服に身を包んだ男が、拡声器のようなモノを持って彼らに声をかけた。

「えー、お集まりの皆様大変長らくお待たせしました。それでは、これより十年に一度の大召喚ガチャ祭を始めたいと思います!」

 彼らの言語は日本語に聞こえた。これがもし異世界召喚ならば、言語補正などが適用されているのかもしれない。

「うぉー! この日を待ってたぜ! この時のために、金を貯めていたんだ!」

「頼むからSランク出てくれ!」

「カスだけは、当たりませんように……」

 やはり藤堂の言った通りこれはガチャシステムのようだ。

 裕人はもう一度周りを見回して、生徒たちのカプセルを見た。おそらく、この色がレア度を表しているのだろう。

 最高レア度は、おそらく藤堂が入っている煌めく虹色のカプセルだろう。それと、もう一つ煌めく虹色のカプセルがあった。雪代綾葉だ。

 彼女も不安そうな顔をしているが、他の生徒たちと比べると落ち着いているように思える。

 次にレア度が高いのは金だろう。これにあたる生徒は、成績上位者や、運動能力が高い生徒が入っている。数としては十程。

 次に銀。これは、おそらくは、それぞれの分野において平均値辺りの生徒たち。その数十程。

 そして、銅。成績中の下の生徒たち。

 白は成績最下位争いの生徒たちであった。

 最後に、灰色。これは、何故か裕人だけだった。

 確かに体力はないし、虚弱体質ではある。成績も大して良くはないが、中くらいはあるはずだ。これならば、銅でも良いくらいだと思うが。

 そんなことを考えているうちに、貴族たちによるガチャが始まった。

 赤いマントを纏った高貴な身なりの威厳ありそうな中年男が、従者らしき者に巨大な袋を運ばせて、燕尾服男へと渡した。袋からは、光り輝く金貨が出てきた。

「これはこれは、王家のフレアルド様。毎度ありがとうございます」

「うむ。ここ数年、あまり良質な異世界人がおらぬでな。今回こそは、期待させて貰う」

「十年に一度の大召喚祭ですからね。良いのがいると思いますよ。金貨百枚ですね。Sランク以上確定ガチャ二回分。ありがとうございます。それでは、いってみましょう!」

 金貨五十枚で最高レア獲得らしい。ソシャゲでもそうだが、この世界でも金に言わせて最高レアを引けるようだ。

 男はガチャの前に立つとレバーを引いた。

「お、おい! 藤堂のカプセルが!」

 クラスメイトの声に藤堂を見ると、そのカプセルが一際強く光り輝いた。

 そして、その姿がカプセルごと消える。

「下見て! 藤堂君があそこに!」

 フレアルドとかいう男の前に、藤堂のカプセルが現れていた。

 同時に起こる貴族たちのどよめき。

「お、おい! あれSランクのカプセルじゃないぞ!」

「虹色カプセル! う、嘘だろう!」

「は、初めて見た!」

 そんな貴族たちの声を遮って、支配人が興奮して声高に叫んだ。

「う、うおーーーーーー! でででででで、出たぁーーーーーーー! ついに! ついに! ついに出ましたぁーーーー! 百年に一度出るかどうかと言われた幻の超超激レアランク! SSランクのカプセルだぁーーーー! 今、私たちはとんでもない奇跡に遭遇している!」

 あまりの熱狂に、藤堂も戸惑っている様子だった。

「ひゃ、百年に一度の激レアって言ったか?」

「確かにあいつのカプセル、虹色に光ってたけど……」

 支配人と、ガチャを引いた貴族が、藤堂のカプセルに近づいた。

「そ、それでは能力値を見てみましょう!」

 支配人がカプセルの一部を押した。すると、空間に巨大なスクリーンが投影され、情報が映し出された。

 それを見た二人は絶句した。

「……素晴らしい」

 その文字は、日本語ではなかったが、なぜか裕人たちにも読めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る