ぼくは妖怪配信者！

第16話 妖怪人 毛魂童子

「えええええい！　だったら、もっと大きな岩を作ってやるでありんす！」

　 目目連（もくもくれん）は、頭上に土埃（つちぼこり）を集めた。

『はぁあああああ……！！』

　それは巨大な岩になる。

　もう、僕の背の２倍以上はあるだろう。

『ぺちゃんこにしてやるでありんす！』

　そうはいかない。

　僕は向かってくる大岩を両手で受け止めた。

『こんな大きな岩。ぶつけたら痛いんだぞ』

　返してやる。

『それ！』

　 目目連（もくもくれん）は大岩の下敷きになった。

『ぎゃぁああああああッ！！』

　自分で作った大岩の下敷きになったんだ。

　こういうのを自業自得っていうんだよな。

　それじゃあ、封印帳を広げてっと。

「まいったか？」

『うう。封印されてなるものかぁああ！！』

　 目目連（もくもくれん）の体は煙になった。

　真っ黒い雲のような感じ。その中にたくさんの目が浮かんでいた。

　ゆらゆらと空をとんで大岩の下敷きから逃れる。

　ああ、しぶといな。

『優斗。あれが 目目連（もくもくれん）の正体だ』

　なるほど。正体は目だけの妖怪か。

　人の姿に化けていたんだな。

　試しにキックしてみる。

『とりゃぁああ！』

スカッ！

　あれーー！？

　当たらない！

　 目目連（もくもくれん）の目は、まるで短冊（たんざく）のようにひらりと風になびいた。

　雲の中にフワフワ浮いてるから触れないんだ。

『おほほほ。そんな攻撃は 私（あちき）には当たらないでありんすよ。それ！！』

　 目目連（もくもくれん）は僕のリュックにくっつく。

　すると、リュックは直ぐに石になった。

「あ！？」

　大事なお菓子が入ってるのに！

　仕方なしにリュックを地面に置く。

『どうやら、おまえは石にならないようでありんすな』

「妖怪人は半分妖怪だからね」

　石化が効かないんだろうな。

『フン。まぁ、いいさね。今回の勝負はおあずけでありんす』

　と、空を飛んで遠ざかる。

　あ、さては逃げる気だな。

　でも、捕まえるにはどうしたらいいんだろう？

　あの目はヒラヒラで掴もうとするとスルリと逃げちゃうんだよな。

『優斗。オイラの毛を使え！』

　僕の毛はすさまじい勢いで伸びた。

　あ、なんか自由に動くぞ。

　その毛を使って 目目連（もくもくれん）の目を捕まえる。

『くぅ！　獅子毛魂の毛か！！　絡みついて取れないでありんす！！』

　不思議な髪の毛だな。

　僕の意思で自由に伸ばしたり動かしたりできるぞ。

　この毛を使えば簡単に捕獲成功だ。

『離せ！　離すでありんす！！』

　それでももがいて逃げようとする。

　僕は毛を下に引っ張って 目目連（もくもくれん）を落下させた。

「えい！」

ドンッ！

　 目目連（もくもくれん）は地面に激突した。

『むきゅう……』

「どうだい？　まいったかい？」

　と、僕は封印帳を取り出した。

『うう……。 私（あちき）を封印するつもりかえ？』

「まずは、石化した人々を元に戻すんだ。封印はそれからだよ」

　あと、僕のリュックもね。

『うう。わかったでありんす。石にした人間を元に戻すでありんすよ』

　 目目連（もくもくれん）は毛でぐるぐる巻きにして移動させる。

「まずは、杏ちゃんを戻してもらおうか」

『わ、わかったでありんす。えい。これで戻ったでありんすよ』

　杏ちゃんの石化は解かれた。

　どうやら気を失っているようだ。

　そういえば、

「 目目連（もくもくれん）は石化した時に魂を食べちゃうんでしょ？」

『うう。魂も返してるでありんすよ』

「よし」

『これで許して欲しいでありんす』

「まだだよ。他にも石にした人がいるだろう？」

『ぜ、全部返すでありんすか？』

「当然でしょ」

『はうぅう。妖怪使いが荒い人でありんすねぇ』

　僕たちは雲外鏡の移動を使って、石化した人たちの所に行った。

　 目目連（もくもくれん）が石に変えた全ての人々を元に戻す。

　全員が眠っているのだけど、その内に目を覚ますだろう。

『全員。元に戻したでありんす。魂も返したから、なんの問題もないでありんすよ』

「よし。んじゃあ、封印するからね」

　僕は封印帳を開いた。

　降参宣言を受ければ封印が完了する。

「まいったか？」

『ひぃいい！　封印だけは許して欲しいでありんす』

「…………」

　うーーん。

　なんだか可哀想な気がするな。

『おい優斗。情けはなしだぜ。こいつは悪さをしたんだからな。封印帳に封印してしまうのが得策なんだ』

「それは……。そうかもしれないけどさ」

　 目目連（もくもくれん）は涙を流していた。

『封印帳に閉じ込められたら動くことができないでありんす。そんな息苦しい所には入りたくないでありんすよ。うぇえん』

　うーーん……。

『ダメだね！　オイラに石の攻撃を仕掛けたりよ。散々好き勝手やっておいて許せるわけないだろ！』

『許して欲しいでありんすぅ。ごめんでありんすぅ。うえええん！』

『あーー。泣いてもダメダメ。早く降参宣言しろよ。じゃないと髪の毛で痛めつけてやるぞぉお』

『ひぃいいい！　わ、わかったでありんす！！　言うでありんす！！　まい──』

　やれやれ。

「ちょっと待ってよ」

『おいおい優斗。止めることはねぇぜ』

「反省してるみたいだしさ。封印するのはやめてあげようよ」

『えええ〜〜。なんだよそれぇ』

「まぁまぁ。同じ妖怪なんだからさ。仲良くしようよ」

　 目目連（もくもくれん）はまた泣いた。

『ありがとうでありんす！』

「もう、ここに来る人間を石にしちゃダメだよ？」

『……そ、それは。で、できないでありんす』

　そんな……。

『ほらみろぉ！　こいつは悪い妖怪なんだぜ！　やっぱり封印しちまおうぜ！』

　うーーん。

　なんか、わけがありそうだな。

「なにか理由があるの？」

『 私（あちき）は……。この森を守りたかったでありんす』

　え？　守るだって？

　どういうことだろう？