第3話 親への復讐、そして怒り

俺は奏汰の家に泊まらせてもらい、朝を迎えた。




今日、俺は親と縁を切り、ばあちゃんの家に行く。




奏汰の両親には何度も「この家に住めばいいのに……」と、言ってくれたが、これまで8ヶ月しか経っていないが、ずっと続いたように感じるようないじめを経験し、少し疲れてしまった。だから静かに暮らしたいので、お断りさせていただきます。と俺はことわった。




俺と奏汰は家を出て、志桜里と合流した。




みんなで他愛のない話をしながら、家へと、向かった。




(これで……ようやく終わるんだな……)




俺は、そう、しみじみと感じながら、歩いた。




でも、少しも後悔はない。










家について俺は二人を家に入れてもいいか聞いた。




問題なく了承を得られたが、この少し話すだけでも吐き気がした。




それを二人に悟られては心配させてしまうので、気合で耐えて、二人を家に招いた。




俺は一応は親である二人の前の席に座り、俺の両隣に奏汰と志桜里が座る形で向かい合った。




「場を改めてどうした?修斗」




そう話を切り出したのは、クソ野郎……おっと間違えた、戸籍上は父である、健一だ。




「そうよ〜、ちゃんと母さんたちを頼ってね〜」




そう何を考えてるのかよくわからない喋り方のクソ野郎は一応は母になっている、茜だ。




あ、流れでクソ野郎って言っちゃった……気をつけよう。




「じゃあ早速本題から行くわ」




俺はそう言って、




「俺をばあちゃんのところに預けること、そして俺と二度と関わらないことを約束して欲しい。ただ、それだけだ」






「「……………は?」」










「いや、『は?』じゃなくて、約束してねって言ってるんだよ」




な〜にをわからないよ〜みたいな反応をしてるんだか。




「いや、まて……修斗、全く納得できないのだが……?」




「え、そんなんもわからないくらいに頭がパッパラパーになっちゃってるの?」




俺の今の説明相当わかりやすく説明したよね?




「じゃあ脳の活動が衰えてきている二人にもっっっっっと分かりやすく言うね」




俺は息を吸って、




「自分の息子の言うことを全く信用せずに、ただ周りの流れに乗って、俺を見向きもしなかったのに、俺の冤罪がを分かった瞬間にベタベタベタベタベタベタしてきたのにうんざりしたから関わるなって言ってんの。understand?」




お、めっちゃ発音良かった自信あるわ。




「……そ、それは……」




「仕方ないじゃないの!証拠がなかったとはいえあんなに周りにいた人が言ってたらそう思っちゃうのは当たり前でしょ!?」




「ヒステリックになってるぞクソ親が」




「だ、誰がクソおy……」




「話を戻すぞー、あんたらは信じもしないのに手のひら返してなにが『ずっと信じてました……!』だよ、ふざけんなよ!!!!!こっちがどれだけ苦しんできたのかわかっているような口をきいて、そんなんする余裕があるならもとからそうしてくれよ!!!」




俺はコイツラを煽りながらじわじわと攻撃しようと思っていたが段々感情的になってしまった。




そう頭では思いつつも、口からは今までで溜めてきた鬱憤がどんどん溢れていく。




「それとも何だ!?あれか!?悲劇のヒロインぶりたかったのか?よくもまあそんなことを息子を利用してしようと思えるよな!?」




「ストップ、修斗」




と、奏汰が俺を制止した。




するとそこに便乗して父さんも喋りだした。




「そ、そうだぞ修斗……父さんたちも悪かったとは思うが暴言は……」




「俺たちにも喋らせてくれよな」




「……………ん?」




「私だって喋りたいことがたっっっくさんあるんだよ」




「えっ………と?ふ、二人は?」




このクソジジイは冷や汗かきながら二人が俺とどういう関係にあるのか聞いてきた。




「「親友ですけど?」」




「あ、ああ、なるほど……いつも修斗と仲良くしてくれてありg」




「俺はあんたに言いたいことがある」




そう奏汰が切り出した。




いきなり初対面の子供にあんた呼びされて目を丸くした。




これほどこの慣用句が当てはまる顔はないだろうというくらい呆けている。




「あんたはあの報道があって修斗に何をしてあげた?」


「そりゃ愛情を与えt」


「あんたはあの報道があってなんて声をかけた?」


「き、君はちゃんと人の話を」


「あんたはあの報道があって一度でも信じた?」


「……………」




「やば、ちょっと堪えられないから声出しても良い?」




「ああ、むしろありがたいくらいだ」




そう俺が答えると、覚悟を決めたような、スッキリしたような表情で奏汰は叫んだ。




「なんの!ために!あんたたちは修斗と一緒に過ごしてきたんだよ!!!」




こう言って、奏汰は少し涙をこぼした。




「ずっと一緒にいて、信頼してきたはずなのに何で……なんでここまで修斗を追い詰めたんだよ……!ふざけんなよ!」




それはきっと俺が初めて聞いた奏汰の大声で、怒りだった。


きっとこういう言葉を魂の叫びと言うのだろう。




父さんは俯き、母さんは涙を流しながら俺と奏汰と志桜里の三人を見ていた。




志桜里は奏汰の言葉を聞きながら俺の受けてきた仕打ちを想像して、感情移入したのか瞳を潤ませていた。




そんなことを考えていた俺も自然と泣いた。




今までの境遇を思い出したからではなく、俺の大切な友人二人がこんなにも俺のことを考え、想っていてくれたことが何よりも嬉しかった。




(あぁ、幸せだなぁ……)




俺はきっとこの二人に対して一生をかけて恩返しをしていくべきだろう。いや、しなければならない。




「私からも1つだけ言わせてください」




横で志桜里がスッと立ち上がった。




「私が言いたいことはほとんど奏汰から言ってくれたので、すぐに終わります。いいですか?」




「…………」




「無言の肯定と捉えますね」




あ、これものすごいキレてるやつだと俺は直感した。




「どこまでも迷惑をかける親は親じゃありません!ただの足枷です!!だから素直に受け入れてください!!!!!」 




さっき奏汰でも同じことを感じだが、こいつも怒るとこ見たこと無いし、なんなら志桜里の方が普段おっとりしているので怖かった。




しかもこいつが一番言ってること怖いな。




なるほど、確かに普段怒らないやつが怒ると怖いな。




「「……………」」




二人は何も言えないままただ座っているだけだった。




奏汰も志桜里もここまで言ってくれているんだからな、俺だってこいつらに復讐をしなければ頭が上がらない。




「俺が言うだけならほとんどの人が信じてくれないだろう。でもこの二人もこう言っているんだ。これでも認めないとか流石に恥ずかしいぞ」




「……………ぃでしょ…、」




「あ?何だって?聞こえねーよ」




そう俺が煽ると、母さんことヒステリックばあさんがその名前を付けたのが正解だと言わせんばかりの金切り声で叫んだ。




「受け入れられるわけ無いでしょ!?!?」




「…………」




「何であんたたちの言ってることを素直に受け入れないといけないの!?そんな事言ってるそこのお友達二人はこの子の言ってることが嘘だとは疑わなかったの!?」




「やっぱりそう言い返すよな」




俺は持ってきたカバンの中に手を伸ばし、1つの黒のボイスレコーダーを取り出した。




どうやら親は何を取り出したのかもわかっていない模様。




だから俺は躊躇うことなく再生ボタンを押した。




『何てことしたの!?どうしてそこまで私達に苦労をかけさせるの!?』




そこにはヒステリックばあさんの声がしっかりと残っていた。








『だから俺はやってないんだよ!』




『そう言ってあんたは嘘をつく!あの場にいた大勢が言ってるんだから正しいに決まってるでしょ!?』




そして何を言っても否定した母親、




『まったく、仕事に影響が出なかったからいいものの、もし出ていたらどうしようかと……』




自分のことしか考えていない父親の言葉が入っていた。




「どうする?まだ聞くか?」




二人はどうしようもできずにガックリと項垂れた。




「二人は大丈夫か?多分この音声は聞かせたことがなかったと思うけど……」




そう、俺はこの音声を聞かせたことがあるのは学校にだけだった。だからもしこの誰が聞いても得しない音声で不快にならなければいいが……




「う、うん……少しもやもやするけど大丈夫だよ」




そう言った志桜里と同様だという意志を示すように奏汰は頷いた。




「どう?これでも信じないって言える?言えないよね、ここまで揃ってたら」




俺はただただ淡々と告げる。




「そうだな……俺から最後に1つだけいい?」




俺は返事を聞かずに、




「やっぱり悪いことは返ってくるらしいな!どんまいだな!どん!まい!」




と、言って口角が上がってしまうのを自分でも自覚しながら言い渡した。

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