第7話 襲撃

深夜、午前2時。俺は今、寝れない状況にある。テティス様が自分のベッドで寝ずに俺に抱き着いて寝ているのだ。今のところ俺よりもテティス様の方が胸が大きい。

それが背中に押し付けられているのだ。しかも、無意識かどうかは分からないがテティス様は時々俺のまだ少々小さな胸を揉んでくるのだ。

ま、まあ、流石に無意識だろうけど…。こんな調子で寝れないと明日の授業で居眠りしないかが心配だ。

それにしても、今夜は月が綺麗だ。こんな夜にはモンスターでも湧かないか心配だ。いや、ここも一応住宅街の近くだからそんな強い魔物は発生しない。

俺はうまいこと体を回してテティス様と向き合った。その顔は窓から差し込む月光に照らされて、いつものように可愛くも美しかった。

俺はそっとその頬に触れた。ほんのりと温かく、柔らかかった。俺は勢いに任せてその唇にキスをしようとしたが…。

その途端、寮内放送のスピーカーのような魔道具からけたたましい音が聞こえた。


「緊急事態!緊急事態!校内敷地にモンスターが発生。至急、中等部1年生は体育館に避難してください!その他生徒は、モンスターの討伐や中等部1年生の避難誘導を手伝ってください!繰り返します…」


こんな時にか…。せっかくテティス様とキスするチャンスだったのに。

その時、テティス様が眠そうにしながら起きた。


「おはよう…。こんな朝からどうしたの…?」

「まだ朝じゃないです。それより、校内の敷地にモンスターが侵入してきたらしいから避難しましょう、急いで!」

「モンスター?なら、私たちも戦わなきゃだね」

「寝ぼけてないで避難しますよ」

「ひどいなぁ。寝ぼけてなんかないよ。私はアテルナ様を助けに行きたい。絶対あの人ってこういう時に無茶して怪我したりするから」

「そうかもですが、中等部1年生には避難指示が…」

「きっとルナーン様なら私と同じ境遇なら戦うって言うと思うな」

「…分かりました。そこまで言うなら我も行きます」

「ありがとう、パルちゃん」


そう言って、テティス様は俺の頬にキスをした。


「あ、ゴメン。驚かせちゃったね」

「い、いえ…。別に驚いたりは…」

「パルちゃん、お顔真っ赤だよ」

「我だって…」

「どうかした?」

「いえ、何でも。それより、早く行きましょう」



見た感じだと、発生しているモンスターはスパイデルタ。機械のような謎の

物質で体を構成されたA級モンスター。現役の剣士でも苦戦する人は多いと聞くし、これを倒すにはAランクのトーナメントで何度も優勝したような実力者じゃないと無理そうだ。


「コイツらが相手でも行くんですか!?」

「当たり前だよ。ここまで来たんだから引き下がるなんて選択肢選んだらカッコ悪いじゃん」

「それじゃあ、2人1匹くらいでいいですか?」

「うん」


俺とテティス様は道で拾った誰かの剣を使ってスパイデルタを攻撃した。一部が凹んだり傷ついたりはするが、致命傷には至らない。


「どうしよう…。このままだと返り討ちにされちゃうよ!?」

「こうなったらもう神頼みだ。<ああ、親愛なる我が主神ルナーン様よ。今窮地に直面する我らに力を与え、導きたまえ>」


こんなことしても無駄かもしれない。それえでも、賭けてみるしかなかった。

すると、俺の左手の甲の星型の痣が目と同じ色に光り出した。いや、これは覚悟が足りなかった俺への天罰か?体が焼けるように痛い。

ただの感覚ではなかったようで、実際に足が青い炎に燃えていた。

その痛みに悶えていると、目の前に同じような炎の髪の虚ろな目をした女神様のような誰かが立っていた。


「私が生前果たせなかったことを君には果たしてもらいたい。すまない、その痣が体表に出た剣士志望は私以来君が初めてだったからね。心の中で炎が燃えていると感じさえすればその力は君を助けてくれる。一回その力で悪を討てばそれ以後は体を焼かれる感覚に襲われることもない」

「あなたの…、生前、果たせなかった、ことって、何ですか?」

「大切な人を、守り抜くことだ。今の君には、守るべき大切な人がいるだろう?」

「…分かりました。果たしてみせます」


そして、気が付くと俺の視界はさっきまでの現世に戻った。


「パルちゃん、ぼーっとしてたけど大丈夫?それと体燃えてるよ!?」

「テティス様、頬から血出てますよ」

「しょ、しょうがないじゃん、パルちゃんが戦えなかった間に1匹増えたんだから」

「まあ、任せてください。今の俺だったら、テティス様を何があっても守るって約束できますよ」

「もう、一人称を俺にしてまでカッコつけようとして…。分かった、じゃあ任せるよ」


俺は心の中に燃える蒼い炎を感じた。両足が炎に包まれ、頭上に謎のマークが現れた。俺が剣の鞘を両手で強く握ると、刃が蒼い炎を纏った。

俺はその場の勢いでスパイデルタに襲い掛かり、さっきまでと違ってすぐに一刀両断にできてしまった。


「す、すごいよ、パルちゃん!さすがは私の彼氏」

「そ、それほどでも…」



わたくしはずっとそれを見ていた。まさか、私でない者にあの痣が発生するという事態がるとは…。いや、お姉さまたちに発生する可能性もあったにはあったとはいえ、繍眼ぬいめ家以外の者が持った以上私たちは全力でその者を潰す必要がありそうです。

繍眼家の末っ子、繍眼ヒメノとして。


続く


続きが欲しけりゃ懇願してください。飽きたので僕は新連載に逃げます。

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