第5話 増える仲間

「じゃあ、まず2人にはちょっとした拉致をやってもらう」

「…は?」


拉致で仲間を増やす方法を提案したのは金城エリスが考えたものだと思っていたが、どうやら見当違いだったようだ。そもそも、まだこのチームにアイツはいない。まさかこの時系列よりも後だったとは。


「拉致っていっても、そこら辺にいる路頭に迷ってそうな生徒をこの事件現場で遺体を入れるのに使う袋に入れて運んでくるだけだ。まあ、4人とも紙袋を被ってバレないようにしないとな。ただ、実質俺は生徒よりも弱い。だから、他の生徒が手伝ってくれると有難いんだがな…。ただ、そこからこんなことしてたのが理事長にバレたら解雇は免れないだろうし…」

「その話、聞かせてもらった!!」

「その声、エリスか?お前さあ、よく<アテネ>所属で練習抜けて来れるな」

「いやぁ~、それが有能な部員を出迎えるに当たって無能な部員は排除するとか何とか、って追い出されちゃったワケでさ。な、協力するから<コルネフォロス>に入れてくれね?」

「…分かった。だが、うちはいずれ校内2番目になるのを目指して活動しているからそんなにサボらせるのは無理だぞ」

「アタシに対するイメージひどいな。そんなにサボってないから心配しなくても大丈夫だ。練習には基本的参加する。ランクの高いトーナメントの景品には金銀財宝が出るケースも無くないらしいからな」

「あんまり期待しない方がいいぞ」


急に現れたが、やっぱこのキャラはちょっと異常だ。まさか追い出されたなんて経緯でこのチームにいるとは思わなかった。


「それじゃあ、詳しく作戦を説明していく」



早速路頭に迷ってそうな生徒を発見。まあ、焦らず少し様子見してみるか。


「クッソー!何でなかなかどのチームにも入れねぇんだよ!」

「それはアンタが強そうに見えないからじゃないの?」

「んだと?じゃあ、俺と同じ境遇なんだからオマエも強そうに見えないってことじゃないのか?」

「ぐっ…!?じゃあ、他に理由があるんじゃないの?」

「俺じゃなくて、お前がチームに入れない理由なら明確だろ」

「何よ。言ってごらん」

「俺を追ってくるから入れねぇんだ。俺が断られるんじゃオマエは到底無理なんだよ」

「アタシが行く先々をアンタが先回りしてるだけよ!人を差別するようなチームだと思われたくないからアンタを断った後に来たアタシも断らなきゃいけないのよ!アタシがチームに入れないのはアンタの所為よ」

「おいおい、そりゃねぇだろ。ま、どうせそのうちスカウトでも来るだろ」

「自惚れないでくれる?アンタにはスカウトされるような才能はないわ」

「んだと~?」


そろそろ良さげだろう。体を縛る用のロープを手にして4人でその2人の前に立った。


「お?思ったより早くスカウトが来たみたいだな」

「待ちなさい。スカウトにしては様子が変よ」

「確かに、紙袋被った生徒がスカウトに来るなんてことない…うぐっ!?」


俺はすぐさま2人をロープでぐるぐる巻きにして、4人で手際よく2人をそれぞれ袋に押し込めた。

1人につき2人で運んで帰ることはそう苦ではなかった。



部室に戻り、部室のベッドに乗せて2人を顔だけ出させた。交渉役になった以上、しくじるわけにはいかない。


「何すんだお前ら!」

「そうよ!早く解放しなさい!」

「いえ、そう不安がらなくて大丈夫ですよ。我々はあなたたちをスカウトする為にここに連れてきたんですから」

「おお、やっぱりスカウトだったか」

「じゃあ、何であんな強引な方法を使ったの?」

「実はこのチーム、まだ結成して2年と少しでそう有名でなかった故に正面からスカウトすると断られる前提でしたので」

「そういうことだったのか。まあ、どこのチーム行っても門前払い喰らってたからな。俺はここにするか。お前はどうする?」

「じゃ、じゃあもうアタシもここでいいわ」

「そうですか。じゃあ、自己紹介を始めましょうか。我は星川パルスです」

「私はあずまテティス。よろしくね」

「私はしずかアルル。よろしくお願いします」

「俺はこの<チームコルネフォロス>の指導者、沖野だ。よろしく」

「あ、2人とも自己紹介する前にロープ解くか」


俺が気遣いで4人でロープを解いてやったが、瞬間、2人とも走って逃げだしてしまった。


「あんな人を拉致るようなチーム入ったらいずれ犯罪に巻き込まれるぞ!!」

「アタシもそれはゴメンよ!」


しかし、2人は回り込まれてしまった!!(しまったというが、それでよかった。)

さっきから姿が見当たらないと思ったらエリスは外で待ち構えていたらしい。


「よお。逃げようってのか?それなら、このエリスを倒してから行きな!」

「あ、えっと…。何でもない。戻るか」

「ア、アタシも戻るわ」


急に2人は怖気づいたように大人しく戻ってきた。エリスが何をやらかしたことを知っているのだろうか。


「しゃーねぇな。俺は酒井アルク。よろしくな」

「アタシは赤羽シュリー。よろしく」


こうして、1日で<チームコルネフォロス>は1人から6人になった。


続く

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