これが家族?!

そして、X’masが迫った。

---聖美、クリスマスイブ家においでよ!冬休みだし、家でパーティするから


私の家に何度か来た事あったが、杏の家は初めてだった。杏のおもいつきだったが、すぐにOKと言った。

そして当日、赤いポンチョを羽織って一応サンタ風の格好をして訪れた。鼓動が鳴るのを感じながらマンションのインターフォンを押した。出てきたのは杏じゃなかった。驚きを隠せなかった。


---いらっしゃい!


顏の所にあるドアノブを押して出てきた。金髪のミディアムヘアで大きな青い瞳を輝かせて言った。ずっと家に居た為か、長袖の白のワンピース1枚だった。肌も白くほんとに天使のようだった。思わずかわいいと感じた。


---コラぁ!ちょっと待って~


奥から杏の声がした。


---ごめんなさい。妹が出てしまって


妹がいるのは知っていたが、こんなに年齢が離れているとは思わず驚いた。

杏は4人家族らしかった。杏にクリスマスプレゼントを渡し、ダイニングテーブルを見た。テーブルが埋まるほど並べられた料理に感動した。チキンにサラダに宅配ピザやパスタまで。どの料理も輝いて見えて美味しそうに見えた。


---聖美ちゃん好きなところ座ってね。


杏のお母さんが言った。声が暖かかった。目が切れ長で笑っていて、黒髪で純和風といった感じだ。今も細くてきれいで若い時から美しかったに違いないと思った。


---杏がお友達連れてくるなんて嬉しいわ。お友達なんて連れてきたことなんてなかったから。学校に楽しく行けてるみたいで、安心したわ。聖美ちゃんにも、会えたしね。


お母さんは私を下の名前で自然に呼んだ。杏は家では下の名前で話してるのだろうと感じた。

今はお父さんも仕事でいなかったが、4人集まると仲良く団らんしているのが目に浮かんだ。少し羨ましかった。きっと、笑顔の絶えない家なんだろうなと思った。


---ピザゲ~ット!


みんなでいただきますと挨拶をした後、すかさず宅配ピザに手を伸ばした。


---コラぁ!有紗!!お行儀悪いでしょ!


隣から大声がした。


---ごめんね。有紗、宅配ピザが大好物なの。


注意を受けた有紗は、明らかに落ち込んだ様子で行儀よく食事した。何も言わないお母さんの代わりに私が注意してあげてるのと、得意気に杏は言った。聞けば有紗ちゃんは小学2年生で10個も年下だった。

料理は全部美味しかった。レストラン以外で家族以外の人が作った料理を食べたのは久しぶりだった。お腹いっぱいになったが、最後にケーキが出てきた。1ピースのケーキを沢山時間をかけて何とか食べきった。食べ過ぎて、少し気持ち悪かった。食べ過ぎるなんてはじめてのことだった。食べ終えてから自分の使った食器を持っていこうとしたら、杏のお母さんに止められた。食器を洗わないのも久しぶりだった。お母さんが傍にいるってこういうこともあるんだと思った。

それから、杏の部屋に入った。友達の部屋は初めてだった。私生活を覗くようで、胸がどきどきなるのを感じて緊張しながら入った。杏の部屋は想像とは違っていた。想像では無機質な部屋だったが、ピンク色のカーテンやピンク色のじゅうたんと、乙女な部屋だった。壁伝いにあった木のベッドの掛け布団もピンクだった。中央にあったローテーブルに紅茶を並べて話をした。


---プレゼントありがとう!最初有紗が出てきて、驚いたでしょ?

---こちらこそご馳走様。アリサちゃん想像してたより、ず~っとかわいい!それにお母さんも美人だね!

---そうかな~。普段から一緒だから、全然わかんない。


少しチクッとなった。普段から一緒のことなんてなかった。自分でも言ってみたかった。軽々と言ってしまう杏が少し羨ましかった。

その後、他愛のない話をしてお互い笑いあった。学校のこと恋愛の話はお互い避けるように話した。でも、お互いに話は尽きなかった。

あっという間に時間が過ぎ、辺りはすっかり暗くなっていた。聖美は杏の母と妹に挨拶を済ませ、冷たい指をこすりながら家路へと向かった。こんなに楽しい日はなかった。帰る足並みがいつもより軽く跳ねてるようだった。途中まで送ると杏に言われたが、生徒会の時のほうが遅いと断った。夜の街を余韻を味わいながら、足早に帰った。

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