追跡者//八岐大蛇

……………………


 ──追跡者//八岐大蛇



「六道は終わりだ」


 オールド・ワグナーの武装構成員がローガンにそう語る。


「みんな幹部は死んだ。皆殺しにしてやった。後はボスだけだ。八岐大蛇って名前の野郎。そいつを殺せば仕事ビズは全て達成だぜ」


 オールド・ワグナーの旧ロシア空挺軍の兵士たちが賑やかに騒ぐのにローガンは静かに移動するロシア製の軍用四輪駆動車の座席に座っていた。


『ローガン。六道は潰せそうか……』


「ロシア人はそう思っている。だが、六道の背後にいるのは大井だろう」


 ジョン・ドウからの連絡にローガンがそう返す。


『その大井が六道の解体に同意しているとすれば……』


「ふん。また陰謀か」


『そんなところだ。六道は大井にとってもデカくなりすぎた。小さく刻んでバラバラにして、それぞれを競わせつつ、統一させない。それを大井は求めている』


「奴らが欲しいのは名もない端役のごろつきであってヴィト―・コルレオーネではないということか」


『随分クラシックな例だがその通りだ。だから大井の横槍はないが、そろそろ事態の収拾に動き出すはずだ。こちらもオールド・ワグナーとバクティ・サークルを生贄にすることで同意している。始末しておけ』


「分かった」


 ローガンはロシア製軍用四輪駆動車が停止するのを待った。


「ここだ。ここに八岐大蛇がいる。仕留めて──」


 そこでオールド・ワグナーの武装構成員の首が飛んだ。


「残念だがお前たちの戦争はここで終わりだ」


 首を刎ね飛ばしたローガンがそう告げ、車にいたオールド・ワグナーの武装構成員たちを皆殺しとした。


 そのままローガンは血を滴らせつつTMCセクター9/1にある高層マンションのペントハウスの向かった。エレベーターが屋上まで駆け上り、ローガンをペントハウスに送り届ける。六道の最高幹部である八岐大蛇がいる場所へと。


「お前が八岐大蛇か……」


 ローガンの前に初老の小柄なアジア系の男性がいた。ソファーに座り、その瞳が見つめるテレビにはTMCで放送されている十数年間新作が作られていない公共放送の日曜ドラマが流されていた。


「だとしたら?」


 男性がそう尋ねる。


「アーサー・キサラギについて教えろ。そうすれば亡命させてやる」


 嘘だ。アーサーについて喋れば八岐大蛇は何の価値もなくなる。


「断る。犬に与えるものは何もない。失せろ」


 男性は振り返ると44口径のリボルバーでローガンを銃撃。


「愚かな」


 銃弾を躱し、ローガンは八岐大蛇と目される男性の首を刎ね飛ばした。鮮血が軌跡を描き、首が放物線を描いて床に転がる。


『終わったか?』


「ああ。終わった。だが、奴についての情報はない」


『ふむ。我々にももう奴が何をするのか分からなくなってしまった。だが、もはや大井は奴を見捨てたし、六道はいなくなった。奴が野垂れ死ぬのは時間の問題だ』


「そうだろうか……。俺は奴の人物像プロファイルを見て思うことがひとつあった。奴の人物像プロファイルに記された、これまでの履歴ヒストリーから思いつくものがあった」


『それは何だ……』


 ジョン・ドウがローガンに尋ねる。


「鬼子母神」


……………………

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る