花と影

崩れた家屋の一角に人影の残る壁がある。


男が一人掌をあてて佇む。


数十年前の徴兵で戦場に赴いた。


家族を守るために戦い帰ると故郷は消し飛んでいた。


今年も影の周りに花の絵を描く。


家族が寂しくないように。


描き終えると彼らの隣に腰を下ろす。


蝉の声がうるさい。


男は遂に眠るように息を引き取った。

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