3 壊れた子ども(義肢職人スカラベ・オス視点)

 どもをヴィーニュ王国おうこくうばわれ、少年兵しょうねんへいにされ、元敵国もとてきこくのクレメン統領とうりょう国へ兵された。

 あれから、いっげつとうとしている。


 空襲くうしゅうこわれたいえ修復しゅうふく魔術まじゅつ完璧かんぺきなおしたが。

 修復魔術が苦手にがて家庭かていけに、修復住宅じゅうたくがいをウロウロしている。


 そのほかに。

「カフェ・エスカルゴ」では、復員ふくいん兵が年寄としよりを邪険じゃけんあつかっているし。

 学校がっこうをサボっている子もいる。


 むすめも、たようなものだ。

 学校へかず、自分じぶん部屋へやきこもっている。

 娘は魔術があまり得意とくいではいから。

 これ以上いじょう欠席けっせきつづくようなら。学校の授業じゅぎょうおくれないよう、家庭教師きょうしやとわなくてはならなくなる。


「おかえりなさい」

嗚呼ああ

 パメラは相変あいかわらずか?

 そと出歩であるくのがこわいなら、こころ病院びょういん受診じゅしんさせなくちゃならないぞ」

 つま出迎でむかえてくれるが。

 覇気はきが無い。

 パメラの対応たいおうで、外出がいしゅつもままならないのだろう。

 夕食ゆうしょく支度したくわたし今日きょうもやらなくてはならない。


「ねえ。

 そんなことより。ミエルと同級生どうきゅうせいだったおとこの子、どうしちゃったの?

 ねえ、こっちにすわって、説明せつめいしてよ。

 昨日きのうよるからきゅうに出かけたでしょ?」

 妻は終戦しゅうせんまでむのをひかえていた高級こうきゅう茶葉ちゃばをたっぷりティーポットにれて、優雅ゆうがにティータイムをたのしみはじめた。

守秘しゅひ義務ぎむがある……そんなるな。

 わかったよ。

 まあ、新聞しんぶんるのは間違まちがいない」

 ジャガイモとにくきざんで、なべ投入とうにゅう

 今夜こんやもジャガイモのシチューにしておこう。


「学校のやす時間じかんちゅうだったかな。

 それとも、ひる休み時間だったかな。

 まあ、とにかく、子ども同士どうしで戦争ごっこでがっていたらしい。

 一か月まえまであい国・ぐん教育きょういくけていた子どもたちだ。ならったら、使つかってみたいさ。

 また、戦争がえりのおや親戚しんせき面白おもしろがって、戦争魔術をおしえたんだろう。

 身体からだがパズルのように、ポロポロくずれただけでんだよ」


「ミエルがいれば、義肢ぎしはいらなかった」とはくちけても、えない。

 あの子はもう、いない。


「義肢がいるの?」

「嗚呼。

 バラけるさいに、わざとわないパズルをつくり出している。やっかいな魔術遺産さ。

 仕方しかた無いから、義肢職人しょくにん出番でばんだったよ」

被害ひがいにあった子はどうなるの?」

「リハビリをしてくれる寄宿きしゅく学校にてん校させるしか無い。

 もちろん、しゃは軍刑務所けいむしょれて行かれるだろう。

 現行犯げんこうはんだったからな」

「かわいそうに……」

「いいや、かわいそうじゃ無い。

 二人ふたりは、決闘けっとう以上いじょうの戦争ごっこをのぞんでいたんだ。

 どうしようもない馬鹿ばかだ」


 ガチャリ。

 キーッ。

 子ども部屋のドアがひらいたおと

 ドアのちょうつがいあぶらをさそう、さそうとおもうのだが。結局けっきょく後回あとまわしにしてしまっていた。

 パメラはギロリと私をにらんでから、トイレへけこんだ。


 こういうのを目にすると。

 やはり、パメラを元敵国におくらなくてかった。本当ほんとうにそう思う。

 自分の親を睨む子だ。

 魔術遺産で身体が壊れる子もいれば。

 心を壊す子もいる。

 仕方が無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る