第11話

翌日、見事に二日連続で寝坊した私は、慌ただしく朝食を作っていた。

「エリア、今知らせが来たよ。5日後に王城に献上だ。それから、お客様が見えるまで王城に保管される。それから1月後にお越しになったお客様に、お披露目だそうだよ。その時は、エリアも一緒にとのことだ。お披露目の時の身だしなみは、君に任せてもいいかい?」

「まぁ、私もですか?わかりました、お任せください。まずは、外箱を依頼しなくてはいけませんね。どちらにご依頼されます?」

「どうしようかな…いっそ、持ち帰ってすぐに飾ってもらえるようにガルガンにガラスの箱を頼んで、大きな布で隠すのはどうだい?それなら、出し入れするときに壊れずに済む」

「では、詰め物がそのまま敷物の役目をしてくれるようなものがいいですね。3つ隣の宝飾店さんにいいものがないか相談してみましょう。それを持って、ガルガンさんの所に行って大きさを合わせてもらうほうがいいでしょう?」

「それで決定だね。食べたら用意しようか」

「はい」


朝食後、宝飾店さんから紹介された服飾工房で大きさや生地を打ち合わせて、明後日の再来店となった。

私たちはその足で、ガルガンさんの工房にお邪魔して、ガラスの箱を依頼して打ち合わせ。

ちゃっかり、朝依頼を出したシュバット君の型の話までして、帰ってきた。

そして銀細工工房の店舗前にうずくまっている、シュバット君の開発者である、イアン少年を発見した。

「イアン様?」

「エリアーデ様!」

「どうしたのですか?」

「作ってきました!見てください!シュバット君2号機です!」

店の外でそのまま説明を始めそうな勢いのイアン少年をなんとか店に連れて行き、お茶を出した。

「イアン殿、初めましてですね。クレメンテです。お見知り置きを」

「クレメンテ様、今回も素敵な絵でした。原寸大で描いてくださるから、本当にありがたく思っています。今回も、お眼鏡に叶うと自負しております。見てください」

何をしてもどうしても早く説明したい彼を、微笑ましく思いながら二人で顔を見合わせて頷き合った。

イアン少年は頬を朱に染めながら、シュバット君2号機が、くる抜かれる板を置く位置が変えられる事、厚みが今の2倍までくる抜けるようになったこと、型の大きさが三段階に固定されたこと、くり抜く位置が新たに設置した光魔法のおかげでわかるようになったこと、動力を都度魔力を使うのではなく魔力を溜め込む性質の魔石に変えたことで誰でも使えるようになったことを、早口で教えてくれた。

「どうです?流石に一回で内も外もくり抜くのは汎用性がなくなってしまうので無理ですが、一度に今までの倍の枚数を繰り抜けますし、厚みのある板でもくり抜けるようになりました。手紙に書かれていた、項目は網羅できたと思いますが、お眼鏡に叶いましたか?」

「イアン様、すごいです!手紙を受け取ってから作り上げたのですよね?早すぎです」

「実は、ずっと仕事の片手間に改良を重ねていたんです。だから、ある程度はできていたんですよ」

「なるほど。だから、こんなに早く持ってきていただけたんですね。エリア、彼は本当にすごいね。話に聞いた通りだ」

「はい。イアン様は、すごいです」

「えへへ…嬉しいです…ありがとうございます」

「王城への納品を済ませたら、早速新たな試みが進みそうですよ」

「あ、そう、それ。ちらりとでも見せてもらうことはできますか?シュバット君初号機の仕事ぶりが気になってしまって…」

「いいですよ。今はまだ入れ物を作ってもらっているところですから、そのものの色や形を見てもらえますしね」

「イアン様、シュバット君は、すごく素敵なお仕事ぶりでしたよ。クレメンテ様のお墨付きです」

「あぁ…これが…素晴らしく輝いていますね…美しさに命が吸い取られていきそうだ…」

「やだ、怖いこと言わないでください…そんな恐ろしいものじゃありませんからね」

「いや、失礼しました。でも、美しくて、つい魅入ってしまいますね」

「気に入ってもらえて良かった。さ、上に行ってお茶を。エリア、軽くつまめるものとかできるかい?イアン様、夕食を食べてないんじゃないですか?」

「あはは。聞こえていましたか?すいません、出来上がってすぐに出てきてしまったから…」

「まぁ、気づかずにごめんなさい。お待たせしてしまいましたね…すぐに何か作りますから、少しだけお待ちくださいね」

あるものでチャチャっと作ったスープと夕飯用に買ってきていた加工肉を挟んだパンに、家にあったもので作った簡単な野菜と果物の盛り合わせを、3人でペロリと平らげて楽しい食卓になった。

腹ごなしのお茶を飲むと、遅くなりすぎないうちにと言ってイアン少年は帰っていった。



「エリア、少しバタバタしたけど、今日も楽しい1日になったね。明日は2号機を二人で試してみようか?」

「はい。毎日楽しいのは、嬉しいですね。明日も楽しみです。おやすみなさい」

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