第7話2人の出会い
俺は昨日と同じように家の近くの銭湯に向かった。
「いつも少し待たせちゃって悪いな」
「気にするなよこのぐらい」
男湯のロッカーの前で服を脱ぐのを手伝ってもらう。
「そういえば昨日の話し合いはどうだったんだ俺は行けなかったけど」
ボディタオルで俺の体を洗いながら訪ねてくる。
「ああ何と言うか…変わったやつだったよ」
「見た目も変わってたんだけど雰囲気がなんか独特だった」
「宗教にどっぷりはまってるみたいな感じか?」
「あれははまってるというより依存してるって感じの方が近いな?」
「白い修道服みたいなのを着てたし」
「修道服って聞くとなんとなくイギリス方面の宗教を思い浮かべるんだがそんなことはないのか?」
「俺もなんとなくそんなイメージだが実際にイギリス系の宗教と関係があるかはまだわからない」
「それで宗教の名前ってわかったのか結局?」
「天玄天応」
「天玄天応?」
特に意味もなく俺の言葉を繰り返す。
「男の人から話を聞き終わった後でその名前について少し調べてみたんだがどうやら中国の感じが使われているらしい」
「と言っても中国で多く使われている感じというだけで中国が絡んでるって断定するのは危険かもしれないけどな」
「まあネットに書かれてる文字の羅列を見ればそれは誰だって予想がつくかもしれないが何でわざわざ中国の漢字を?」
「さあ俺には皆目検討がつかない」
「単純にただの偶然かそれとも意図的な何かが絡んだ上でこの名前にしてるのかまだ証拠も何もないから何も断定することはできないけどな」
「こういう漢字の使い方だったらファンタジーゲームとかでいくらでもありそうだしな」
「そのゲームからインスピレーションを受けて名前にしたっていう可能性もあるかもしれないし」
「今まで聞いたことないけどなゲームで使われてる名前を宗教の名前にするなんて」
「まあ俺たちはこの事件と言うか俺が勝手にやってることなんだが宗教のことについてあまり知らなかったからな」
「可能性についてはいくらでも考えられる」
「確かにそうだ」
「ところで真神、 これはただ単純に事件とか関係なく俺個人が気になってることなんだが宗教の勧誘とかされたか?」
「個人的に気になってることってそれか」
「別にこれといった理由があって聞いてるわけじゃないんだが実際に対面であった上での勧誘ってどんな感じなんだろうと思ってな」
「そもそも勧誘はされたのか?」
口調自体はいつもと変わらないのだが特にこれと言った理由はないと言っている割にずいぶんと食い気味だ。
そんなに気になるものなのか?
と思いながらも答える。
「ああ、勧誘されたよ」
「よく家とかに来る勧誘と違って対面だとさらにグイグイ来たりするのか?」
「なんで宗教の勧誘についてそんなに聞きたがってんだよ」
ていうか場所が違っただけで家の中に入ってくる勧誘も対面の勧誘だとは思うが。
「いやなんとなく」
「宗教の勧誘の仕方みたいなのは特に普通のやつと変わんなかったと思う」
「ただ予想通りというか足のことについて言われたよ」
「その宗教で祈りを捧げればその足が治るかもしれませんってな」
「ただその人俺が障害を持って生まれてきたことに対して絶望はしてないって仏のような優しい口調で冷静に行ったらすぐに引いてくれたよ」
「多分あの人口調はすごく冷静だったし勧誘にはなれてるんだと思う」
最後に俺が言った言葉に面食らっているようではあったが。
体と頭を洗い終え風呂の中に入る。
「そういえばまた調べていくうちに宗教の幹部のことについて1つ分かったことがある」
「この間見せた3人のトップの写真があっただろう?」
「その3人の他に後幹部が1人いるらしいんだ」
「てことは合計で幹部の人数は4人ってことか?」
「ああ、俺の情報が正しければそういうことになるろか」
「ただその幹部の1人が突然その宗教をやめて今は何をしてるのかわからないらしい」
「ただもしかしたら俺そいつが今どこにいるのか特定できたかもしれないんだ」
「どういうことだ?」
特定できたかもしれないという少し曖昧な言い方に疑問を抱きつつ尋ねる。
「後で本当に少しではあるけどそいつに関する情報を書いた紙を持ってきたから今日家に帰って読んでみてくれ」
「分かった」
「それでトップのもう1人はどんな感じなんだ?」
「それがその宗教からいきなり姿を消したらしくてまだ何の情報も手に入らないんだ」
「姿を消したそれはどういうことだ?」
驚きと疑問が混じった口調で尋ねる。
「そいつの宗教に所属してた時の痕跡が途中からパタリと消えてるんだよ」
「痕跡が消えてるからそれ以降の情報が一切たどれないんだ」
「いきなり行方不明になったってことか?」
「だとしたら何でいきなりその宗教から姿を消したんだ?」
俺は今まで手に入れた情報を踏まえいろんな可能性を考えてみるが特にこれと言った結論が出せない。
そもそもの持っている情報が少ないので当たり前か。
「悪いなこんなに頑張って調べてもらってるのにお金が払えなくて」
正確に言うとお金自体はおそらく払えるのだがあとどれだけの期間この調査が続くのかわからないからそれが終わらないと払えない。
「別に気にしなくていいさこの調査が終わり次第いつもみたいにドカンって払ってくれれば」
「今の俺にはそれしか選択肢がないことわ分かってるんだがそれをやるとドカンとお金が減るから怖いんだよな」
「うちの店は分割払いにも対応しておりますのでお好きな支払い方法をお選びください」
なぜかスーパーの店員のような丁寧な口調で言ってくる。
「分割払いにした方が利子がついて膨れ上がるような気がするけど」
「うちのお店は分割払いで利子がつかないのでそこら辺はご安心を」
「随分と優しい店なんだなそこは」
「お客様に対しては愛のある対応を心がけていますので」
「じゃあこの依頼が終わったらいつもみたいに一気にドカンと払うようにするよ」
「ああ、分かったって言っても真神だったら余裕で払えるんだろう」
「まあ今回のお金を払ってすぐ貧乏に転落するぐらいのギリギリの生活はしてないからおそらく大丈夫だと思うが」
「…はぁそれにしても俺たちがこんな関係になるなんてあの時は全く想像つかなかったのに不思議なもんだなぁ」
しみじみとした口調で勇輝が言葉を漏らす。
「俺たちが出会ったのって確か1年前ぐらいだったっけ?」
「確かそのぐらいだったはず」
「あの時ちょうど俺が会社の中でうまくやっていけるかどうかって悩んでた時だったんだよな」
「それで偶然俺が交差点で勇輝とぶつかって俺が必死に謝ってたのだけ覚えてるは」
「それからなんやかんやあって俺の仕事の愚痴を聞いてもらうことになって」
「そうそうこんな道端で話すわけにもいかないから近くの公園のベンチに座ってもらって話を聞いてたのよく覚えてる」
「そしたら高校まで警察官を目指してたとかいろんなことを自分から話してくれて」
「そしたら真神がもしよかったら自分の解除をしてくれる代わりに生活に困らないぐらいのお金を月々あげますよって言って」
「当時仕事が全くなかった俺はそれを2つ返事でOKしたんだよな」
「俺もダメもとで行ってみたことをまさか2つ返事でOKするとは思わなかったよ」
「今思い出すと恥ずかしいな」
あの時のことを思い出しているのか言いながら苦笑する。
「まさかたった1年でここまでになるとは思わなかったよ」
「まだ真神と1年しか一緒にいないはずなのにもう5年ぐらい一緒にいる感覚だ」
「奇遇だな俺もだ」
「ははは!」
「ははは!」
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